新規顧客獲得の為に必要な活動の一つが、競合製品を使う顧客の獲得です。つまり置き換え活動です。あなたは、どのようにして置き換え活動のサクセスストーリーを描きますか?
今回はマーケティング手法の「ポジショニング」「4P分析」を使いながら、実際に経験した事例を使ってケーススタディを行いたいと思います。
ケーススタディ
営業鈴木さんは、あるメーカーの販売会社として製品Xを販売しています。そして、インドネシアにイチゴジャムを製造するお客様がいます。 そのジャムの製造過程において、イチゴを煮たてることでジャムにしますが、そこに製品Xを添加剤として混ぜることで、程よいジェル状のいちごジャムを作っています。 この添加剤が、営業鈴木さんが販売している製品X(添加剤)です。 【基本情報】 最終製品:イチゴジャム 主材料:イチゴ 添加材:製品X 添加材の目的:ジャムをジェル状にする為 しかし、既にこのお客様は、競合会社から製品Xを購入しており、さらに鈴木さんが販売しようとしている価格より20%安い価格です。 【価格情報】 競合会社:$13/kg 鈴木さんの販売会社:$16.25/kg 中国にある競合会社の製品品質は特に問題ないのですが、鈴木さんが販売する製品Xはメイドインジャパンということもあり、品質が良いと一般的に言われています。 【品質】 競合会社:普通 鈴木さんの販売会社:高品質 インドネシアにあるお客様は、直接中国のサプライヤーから製品Xを購入しています。 物流コストに関しては、中国と日本からの出荷でほとんど違いはないことが分かりました。 【出荷拠点】 競合会社:中国 鈴木さんの販売会社:日本
ここで問題です。鈴木さんは、競合製品Xではなく、自社製品Xを使用してもらうために、この問題をどう解決したでしょうか?ぜひ解決策を出してから、次項へお進みください。
解決策
結論から申し上げると、鈴木さんは、自社製品が競合製品と差別化できそうな「品質」面に注目し、訴求点を見出しました。その為に実施したのが、以下のマーケティング手法です。
ポジショニング
ポジショニングとは、自社の製品がどれほどユニークで魅力的なのか他社との差別化を図りながらターゲットである顧客に示す行為です。
ポジショニングとは|ポジショニング戦略の進め方と成功事例 | 成果を自動的に最大化するSFA「Senses」 (mazrica.com)
上図をみて分かるように、自社製品の差別化ポイントである「品質」を生かして何かできないかと模索することとしました。具体的に、競合製品Xを使ったジャムのサンプルを回収し、自社製品Xとの比較分析を実施。
その結果、より少ない添加量で同じレベルのジェル化を実現できるという訴求点を見つけたのです。通常、競合製品Xはキロ当たりのジャムに10%使用されますが、鈴木さんの製品Xでは7%の使用量で同レベルの物性を達成する事を見出しました。
ジャム1キロあたりに必要な添加量 競合製品X:0.1kg ($1.3/kg) 自社製品X:0.07kg ($1.1375/kg) 価格差:$0.1625/kg
4P分析
4P分析とは、企業が販売活動を行ううえで、コントロール可能な要素をもとに、どのように売っていくか?という販売戦略を立てるための分析手法です。
早速4P分析を使って、以下のように情報をまとめました。
4P | 競合製品X | 自社製品X |
製品 | 添加量0.1kg (△) | 添加量0.07kg (〇) |
価格 | $13/kg (〇) | $16.25/kg (△) |
流通 | 中国サプライヤー (物流面〇) | 日本サプライヤー (物流面〇) |
販売促進 | 製品単価の安さで勝負 | ジャムの生産コストで勝負 |
自社製品Xの単価では、競合製品Xに太刀打ちすることができません。一方で、添加量を0.07kgに減らすことができると判明しました。
したがって、お客様への販売促進方法として、製品単価ではなく、ジャムを生産した時にでるコストメリット面を主張し、営業することにしたのです。
具体的に述べると、ジャム1キロあたりに必要な添加量を0.03kg少なくできる、つまり$0.1625減らす事ができるので、ジャムを作れば作るほど生産コストを削減できます。
お客様が、月間100mtのジャムを作っていれば、月$16,250のコストダウンができるので、製品Xの単価が高くても、お客様は鈴木さんが販売する製品Xを喜んで購入することに決めたのです。
まとめ
今回紹介したマーケティング手法では製品単価という一つの視点だけでなく、自社製品の差別化できる部分を見出し、違ったアプローチをすることの大切さをお伝えしました。 マーケティング手法である「ポジショニング」「4P分析」を活かしながら、新規ビジネスに取り組んでみてください。