みなさんは日本での廃業率ってご存じでしょうか?
・1年で37.7%が廃業
廃業率はどのくらい? | 東京の起業家向けバーチャルオフィス
・3年で62.4%が廃業
・10年では88.4%が廃業
まだ信じれない方もいるかもしれませんので、経済産業省に属する中小企業庁から発行されている「中小企業白書」をご覧ください。
開廃業率の状況
毎年約4%の開業率がある一方で、個人事業主を含む中小企業の約3%が廃業しています。つまり、最終的に中小企業の約75%は廃業に追い込まれているということが言えます。
では新規ビジネスに参入したとしても、新規参入者は勝てないのでしょうか?
答えは「ノー」です。
新規参入者は既存企業にはないフットワークの軽さで、D2CモデルのEC販売サイトを構築・強化していくことが勝ち残る方法と言えます。
D2Cってナニ?
D2Cとは、「Direct-to-consumer」の略です。このD2Cは、中間にいる卸・小売事業者、販売代理店、直接販売を取り除き、顧客と直接取引する販売モデルです。
従来の販売モデル(BtoB/BtoC)
BtoBの場合で考えてみます。例えば、メーカー⇒商社⇒大型家電販売店が当てはまります。BtoCの場合だと、例えば、メーカー⇒ショッピングモール(Amazon、楽天、メルカリ)といった商流が該当します。
詰まるところ、メーカーと顧客の間に仲介業者がいる販売プロセスです。
D2C販売モデル
D2C販売は、これまで仲介業者が実施していた中間プロセス(ECサイト運営、サイト制作、受注管理、出荷作業、顧客管理)を、メーカーが一貫して取り組むモデルです。
D2Cといっても、実店舗で販売するD2Cとオンライン上で販売するデジタルD2Cとあります。今後は、後者のデジタルD2Cが、どんどん加速していく時代になってきています。(当記事もデジタルD2Cに特化して説明しています。)
ではD2Cは新規参入者にとって完璧な販売モデルなのでしょうか?実は、完璧ではなく一長一短なのが事実です。
D2Cのメリット
D2Cは他のモデルと比べて、より消費者にフォーカスしたビジネスモデルです。その結果、いくつかのメリットを享受することができます。
収益性が高い
D2Cは、商品開発から顧客への販売まで一貫して自社で行います。つまり、他のBtoBやBtoCのように、中間業者にマージンを支払う必要がなくなります。
例えば、オンラインショッピングモールのAmazonや楽天市場で出店すると、Amazonなどに販売手数料10-15%の支払いが必要です。さらに楽天で出店するとなると、月額費用50,000円もかかります。
このような高いマージンを支払わずに済むので、収益性の高い、またはその分商品単価を抑えることで顧客満足度の高いビジネスモデルを構築することができます。
顧客と直接やりとり可能
顧客情報は、事業を円滑に進めていくためにとても大切な情報です。というのも、マーケティング、商品開発、広告の方向性を決める重要なファクターになるからです。
従来モデルでは消費者の本音が見えない
しかし従来の販売モデルでは、中間業者が顧客情報を保持している為、フィルターなしのお客様の声が届きにくいのが課題です。
さらに中間業者によっては、自社利益の為に情報操作をすることだって考えられます。例えば、実際にはそうでないのに、中間業者がメーカーに「競合製品が値下げをしているから、我々も値下げが必要だ」と言ったとします。
そして、それをメーカーが鵜呑みにして値下げをしてしまえば、中間業者の懐に値下げ分が入り、消費者には還元されないといったことになりかねません。
D2Cは顧客に合わせたサービスが可能
一方で、D2Cは顧客と直接のコミュニケーションを可能とします。ですから、お客様がどのようなことに困っていて、どのようなことに満足感を得ているのかといった顧客情報をクリティカルかつタイムリーに把握することができます。
その結果、迅速にお客様、つまりマーケットの需要を理解し、適切なサービスの改善へと繋げることができるというわけです。
顧客データの蓄積・活用
さらに、Googleアナリティクスなどを利用したECサイト販売によるデジタルD2Cでは、顧客が購買決定に至るまでの行動プロセスを可視化することができます。
例えば、自社ECサイトにアクセスした人のランディングページ、滞在時間、離脱ページなどがわかるようになります。そしてそれらのデータを蓄積していくことができるので、正確な統計データを得ることができます。
その結果、商品をお客様に購入してもらいやすくするECサイト構築が可能となるのです。
D2Cのデメリット
弊社もECサイトを運営していますが、良い事だけというわけではありません。
集客を自分で行う必要がある
Amazonや楽天といったオンラインショッピングモールには、集客せずともお客様がやってきます。言うなれば、イオンモールや高島屋でお店を開店させるイメージです。たとえ、自社ブランドのことを知ってもらえてなくても、一定のお客様は訪問してくれる仕組みです。
砂漠にお店を開店させるイメージ
一方でデジタルD2Cは、自らECサイトを立ち上げなければなりません。砂漠のど真ん中にお店を構えるようなイメージです。つまり、何もしなければ、誰もお店にやってきてくれません。
したがって、デジタルD2Cモデルでは自ら集客活動をして、顧客に認知してもらい、サイトを訪問してもらう必要があります。その為には、作業工数&広告費用もかかってきます。
オウンドメディアの育成必須
オウンドメディアとは、個人事業主や企業自身が所有するメディアのことを言います。例えば、自社サイト、SNS、パンフレット、ビジネスブログなどを指します。
オウンドメディアは、広告費用のムダな流出を防いだり、自動集客できるツールになったり、専門ストアとして信頼されたり、といったメリットがたくさんある一方で、苦労することもあります。
長い期間を要する
オウンドメディアの中でもビジネスブログは、集客するためにとても重要です。このビジネスブログで考えてみるとします。
例えば、ブログ記事をサイトに更新したとします。一般的にGoogleが新しい記事を認識し、評価するのに3~6ヶ月かかると言われています。したがって、コンテンツを更新し始めて半年経ったくらいから集客の効果が表れてきます。
実際に弊社のサイトも半年過ぎたあたりから集客数が増えてきています。
コンテンツ運営の知識が最低限必要
記事が評価されるのに3~6ヶ月かかると先述しましたが、これはあくまで記事が評価される期間です。記事が検索結果に上位表示されるかは、別問題です。
上位表示させ、お客様に記事を読んでもらうには、有益なコンテンツであることが条件です。ですから、ある程度のコンテンツ運営の知識が必要になってきます。
売上安定までに時間がかかる
売上を安定させるまでに一定期間必要です。というのも、お客様に購入してもらう為には、先述したように、砂漠のど真ん中にあるストアに上手く集客し、質の高いオウンドメディア(ECサイト)を制作しなければならないからです。
Amazonショップであれば、ある程度自動で集客され、ECサイト設計も既に決まっているので苦労しませんが、デジタルD2CによるECサイトは自分で構築しなければならず、どうしても時間を要します。
Shopifyでは、より簡単にD2CモデルのECサイトを制作することができるのでオススメです。別記事で詳しく紹介しています。
D2Cに向いているジャンル
D2Cに関する消費者アンケート調査
2020年1月28日~3月10日、SBペイメントサービス株式会社が調査したD2Cに関するアンケート結果(20~80代の男女1,924人)を見ていきます。
下図は、消費者がオンラインショッピングにおいて、「どのサイトから購入しているか」という質問に対する回答結果です。
1. サプリメント・健康食品 2. 化粧品 3. PC・カメラ・オーディオ 4. 洋服 5. インナー・下着 6. 鞄・靴・小物
上記結果は、商品ブランドの公式サイトやアプリ、つまりECサイトから購入されている用途のランキングです。例えば、「サプリメント・健康食品」では、「商品の詳細がわかりやすい」「公式サイトだと安心感がある」「お得に買える特典がある」為、ECサイトから購入される比率が高いです。
こうして見ると、上位にランキングされている用途は、D2C販売モデルが適していると言えるでしょう。自分が販売したいと考えている商品がありましたら、一度D2Cモデルが適しているか、上記結果と照らし合わせてみてはいかがでしょうか。
D2Cの実装に必要なこと
デジタルD2C販売モデルは、ECサイトの運営が必要になってきます。先述したように、これは砂漠のど真ん中にお店を構えるようなイメージです。つまり、何もしなければ誰もお店にやってきません。
Webマーケティングに力を入れること
したがって、お客様にサイトを訪問してもらうために自ら集客しなければなりません。そして集客するには、Webマーケティングに力を入れる必要があります。
顧客データを資産化すること
ECサイト販売によるデジタルD2Cでは、顧客が購買決定に至るまでの行動プロセスを可視化することができます。例えば、自社ECサイトにアクセスした人のランディングページ、滞在時間、離脱ページなどがわかるようになります。
これらのデータを蓄積していくことで、精度の高い統計データを得ることができます。その結果、以下のようなことが見えてきます。
・自社サイトを好む顧客の基準。 ・アプローチをかけていきたいターゲット。 ・ユーザーがページを離脱した原因&対策案。 ・経験や感覚ではなくデータに基づく経営基準。
より詳細な情報を得る為には、ECサイトにGoogleアナリティクス分析ツールの導入をオススメします。
ターゲティングする顧客を把握する
顧客データを蓄積・活用して、自社ブランドを欲する顧客を明確にする必要があります。何故なら、万人受けするブランドを作っても、既存企業には太刀打ちできないからです。
一方で、ターゲットを絞り、そのニッチなマーケットに評価される特徴的なブランド作りをすることで、新規参入者が生き残る確率を高めてくれます。何故なら、大企業は大きな市場を取りに行く傾向にあるので、小さな市場には手つかずのことが多いからです。
まず新規参入者が勝つためには小さな市場で実績を出し、徐々に市場を広げていくのが鉄則です。その為には、顧客データを分析しどんなお客様から求められているのかを把握しましょう。
カスタマージャーニーに注視する
カスタマージャーニーとは「顧客が購入に至るプロセス」です。言い換えると、態度変容プロセスAISASと考えても良いかと思います。インターネットが普及し、この購買プロセスが一般的になっています。
① Attention:注意 ② Interest:興味 ③ Search:検索 ④ Action:行動 ⑤ Share:共有
初めに潜在顧客と繋がる「注意」から、商品購入の「行動」に至るまでのカスタマージャーニーの中で、顧客が持つ「期待」「不安」「疑問」を確認・可視化することが大切です。
PDCAサイクル率を高める
カスタマージャーニーに注視し、顧客の期待、不安、疑問を可視化することで、顧客が抱く思いに対し、解決策を講じることができるようになります。
カスタマージャーニーの確認で一番大切なのは、お客様の気持ちを可視化し、それに対し対策を講じること。そして、このPDCAサイクルをいかに速く回していくかが大切です。
新規参入者の成功の鍵はサイクル率
企業ではPDCA一つ一つの進行に多くの時間がかかります。何故なら、こと細かに社内決定が必要だからです。企業が時間を費やしている間に、時間をかけずにガンガンPDCAサイクルを回すことが大切です。
新規参入者が勝つにはD2C一択
当社もECサイトを運営してデジタルD2C販売モデルを実施しています。前述したように、苦労する点はたくさんあります。ただ考えても見て下さい。新規参入者が大企業に勝つためには、それ相応の苦労が要求されるのは、当たり前だと思いませんか?さもなければ、誰も苦労はしないはずです。
しかし一方で、新規参入者が生き残る方法があるのも事実です。それは大企業にできないことを実践することです。
新規参入者が生き残る方法
・収益性の高い販売プロセスを構築すること。 ・顧客との直接のやりとりで、迅速かつ的確に市場の需要を掴むこと。 ・蓄積した顧客情報を活用し、PDCAサイクル率を高めること。
これらを実現することで企業にはできないビジネスを構築することができると考えています。その為には、デジタルD2Cが必要不可欠であるのは間違いないでしょう。