HSコードは貿易業務を行う人にとって、とても大切な知識の一つです。そして、HSコードを理解することは市場分析を可能にするだけでなく、関税率低減の恩恵を受けれるかどうかの判断が出来るようになります。このようにHSコードは貿易ビジネスに大きな役目を果たしてくれます。
HSコードとは
「HSコード」は、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号です。
2016年7月現在、世界税関機構(WCO)が管理している同条約には、日本をはじめ153の国及びEUが加盟しています。
独立行政法人日本貿易振興機構
また、非加盟国であってもHSコードを使用している国と地域があり、それらを含めると200以上の国と地域がHSコードを使用しています。
端的に言い換えると、モノの輸出入の際、その対象物を管理しやすくするコードです。例えば、コンビニエンスストアなどで商品にバーコードが付与されることで、在庫管理、発注管理を容易にするといったイメージと同じです。
では具体的にどのような使われ方をするのか、以下で説明したいと思います。
HSコードの使われ方
1. 関税率の決定 2. 貿易統計における品目分類 3. 他法令の適用対象になるかどうかの重要な要素
関税率の決定
国同士でのモノの輸出入が行われる際、対象物の定められた関税率を決めるため、 HSコードは使用されます。何故、対象物の定められた関税率を決める必要があるかというと、自国産業の保護や市場経済の混乱を防止するためです。
例えば、モノの輸出入で関税率がないとします。すると外国から安価なお米が輸入されてくるので、日本でお米を生産している農産業の縮小を招きかねません。
農産業が縮小されれば、自国でのお米生産自給率が下がり、輸入に依存せざる終えない状況となり、食料確保リスクが高まってしまいます。
したがって、HSコードによって、定められた関税率を明確にすることは、自国の産業や経済を守るためにも、とても重要なのです。
貿易統計における品目分類
輸出入されるモノを明確に分類するため、 HSコードが使用されます。明確に分類されることによって、国からの輸出、及び輸入される国での輸入通関の際、税関職員がそのコードをもとにして該当する品目の関税等の税率を容易に調べることを可能にします。
その結果、通関手続きがよりスムーズになり、届け先に早く届けることが出来ます。
他法令の適用対象の確認
モノの輸出入時、対象物が法で規制されていないか確認するために、HSコードが使用されます。 例えば、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護目的の為、ワシントン条約が規定されています。それを確認する担当者は、HSコードを使って、条約に触れていないか確認することができるのです。
さらに、対象物のHSコードを確認することで、輸出入者は違法取引にならないか確認できるので、未然にトラブルを防ぐことができます。
HSコードの見方
このHSコードで、あらゆる貿易対象品目は21「部」(Chapter)に分類され、それから更に、「項」「号」と細分化されます。つまり、貿易で扱われている全てのモノは、このHSコードが付与されています。
それに加えて、6桁に続く残りの3桁によって、さらに細分化されます。この3桁まで把握するメリットは、貿易・通関統計を使って、より細かい「市場分析」を可能とします。
この最後に続く3桁は国によって異なっているので、確認する際は注意が必要です。
HSコードの調べ方
構成部材のHSコードを調べるには、以下の方法があります。オススメ順に並べました。
【オススメ順】 1. 最寄りの日本税関へ確認(関税鑑査官) 2. 日本関税協会WEBタリフ 3. 財務省輸出統計品目表 4. 取引している通関業者へ確認
1. 最寄りの日本税関へ確認(関税鑑査官)
私のオススメは、「最寄りの日本税関へ確認(関税鑑査官)」です。というのも、言うなれば彼らはぞの道のプロなので、認識間違いを防げるためです。
万が一、HSコードを誤ってしまうと、 貿易・通関統計で分析する際、対象物の情報を正しく調べることができません。さらに、HSコードは、「関税率の決定」にも使用されるので、間違ってしまうと大変なことになります。
例えば、関税特恵を受けられると思って輸入したモノが、関税特恵を受けられずに関税対象になってしまえば、その分余計なコストが掛かってしまい、販売額にも影響してきてしまいます。これらのように、HSコードを間違ってしまうと、大きなトラブルを招きかねないのです。
したがって私は、「最寄りの日本税関へ確認(関税鑑査官)」することをオススメします。
➤ 輸出入通関手続や税番・税率等に関するお問い合わせ : 税関 Japan Customs
2. 本関税協会WEBタリフで検索
次にオススメなのが、日本関税協会から公開されている「WEBタリフ」です。
➤ webタリフ (kanzei.or.jp)
理由は二つ。使用しやすいのと、同時に関税率もわかる為です。今回は、対象物を「たまねぎ」とします。では、画面をみながら探していきましょう。
「一覧から参照」ボタンをクリック。すると、全貿易対象品目が大分類された項目が出てきます。
簡単な説明文が書かれているので、対象物がどこにあてはまるか照らし合わせていきます。たまねぎは、食用野菜なので「第07類」ですね。
説明文に「たまねぎ」と記載がありましたので、「07.03」をクリックします。
すると、「号」である「10」までがわかり、たまねぎのHSコードは「07.03.10」だということがわかりました。さらに右側を見ると、関税率が国毎に記載されているので、関税特恵を受けられるかもわかって便利です。
3. 財務省輸出統計品目表で検索
3番目に推奨するのが、「財務省輸出統計品目表」で検索です。
➤ 輸出統計品目表 : 税関 Japan Customs
こちらもタリフ表のように検索し易いのですが、関税率が分からない為、3番目にしました。早速、先ほどと同じく対象物を「たまねぎ」とします。では、画面をみながら探していきましょう。
一番上にある「輸出統計品目表」をクリック。すると、全貿易対象品目が大分類された項目が出てきます。
簡単な説明文が書かれているので、対象物がどこにあてはまるか照らし合わせていきます。たまねぎは、食用の野菜なので「第7類」ですね。
説明文に「たまねぎ」と記載がありましたので、「07.03」をクリックします。 HSコード番号を見ると、「号」である「10」までがわかり、たまねぎのHSコードは「07.03.10」だということがわかりました。
しかし先ほどにも述べたように、関税率は記載されていないので少し不便です。
4. 取引している通関業者へ確認
最後に、取引している通関業者へ確認です。もし通関業者との取引がある場合は、この確認方法が一番手っ取り早いかもしれません。というのも、通関業者にとってあなたはお客様ですから、全部確認して丁寧に教えてくれるでしょう。
しかし今回は、通関業者とコネクションが無い場合を想定したので、オススメは最後の順にしました。
最後に
対象物のHSコードを間違ってしまうと、間違った市場分析や関税率の計算をしてしまい、後で取り返しがつかなくなることがあります。ぜひ、この記事を読んで理解を深めて頂けたらと思います。