新しく事業展開する際、必ずやらなければいけないのが市場分析です。しかしながら、初めから参入しようとしている市場に関する知識を持ち合わせている事ってないですから、まるで雲を掴むような難しいタスクのように思えます。

今回は、そんな状況を打破する方法の一つ「貿易・通関統計(以降、貿易統計と呼ぶ)分析」をご紹介したいと思います。この記事を読むことで、貿易統計のこと、貿易統計でできることが明確になります。

貿易統計とは

貿易統計とは

貿易統計とは、関税法の規定に基づき、日本から外国への輸出及び外国から日本への輸入について、税関に提出された輸出入の申告を集計し、定期的に公表しているものです。

財務省貿易統計

つまり、日本から出ていくモノ、日本に入ってくるモノが何かを管理し、それらの数量や金額を集計しているということです。では何故、貿易統計を行っているのでしょうか?

貿易統計の目的

外国貿易等に関する統計基本通達第1章総則の「2 外国貿易等に関する統計の目的」では、

「外国貿易等に関する統計は、条約及び関税法第102条((証明書類の交付及び統計の閲覧等))に基づき作成及び公表し、並びに閲覧に供するものであり、

貿易の実態を正確に把握し各国の外国貿易との比較を容易にすることにより、

国及び公共機関の経済政策並びに私企業の経済活動の資料に資することを目的とする。」とされています。

財務省貿易統計

実際に行われている貿易状況を正確に把握することで、国、公共機関の経済政策だけでなく、私企業の経済活動の資料に活用する為とあります。(他国においても同じことが言えます。)

つまり、市場調査・マーケティングに活用する為です。では、 なぜ外国から輸出入されてくる情報を掴むことで、市場調査に活用できるのか?それは、グローバル化が急速に進む現代において、一つの国で完結するビジネスはなくなってきているからです。

あなたの競合はその国の企業だけでしょうか?おそらく他国の企業も含まれているのではないでしょうか?それに加え、その国の企業であっても他国で生産し、逆輸入する例も増えてきています。

したがって、外国から輸入されてくる情報を掴むことは、その市場を理解することに等しいと言えるのです。では早速、具体例を紹介しながら、貿易統計でできることをご説明していきます。

貿易統計でできること

貿易統計でできること

実際に当社で製品Aを調査したデータがあるので、それを使って貿易統計で出来ることを詳しく説明していこうと思います。

市場規模を把握できる

現代ビジネスにおいて、国内で完結するビジネスはなくなってきているので、輸出入の規模を把握することは市場調査をする上で非常に役に立ちます。

貿易統計では輸出・輸入の数量を確認することが出来る為、該当する製品の既存市場がどれくらいのサイズなのかが分かります。 その結果、戦略決定に必要なファクターが浮かび上がってくることになります。

例えば、市場規模大きければ、事業の拡大も望めるでしょうし、小さければ一番乗りして優位性を保つことが出来るかもしれないといった戦略決定を実現します。 では実例をみていきましょう。

製品Aの (日本への)上位輸出国 数量別
製品Aの (日本への)上位輸出国 数量別

上記グラフは、2020年度日本に輸入された製品Aの主要輸出9か国の年間数量を表しています。

1位 中華人民共和国:年間1,114トン
2位 ベトナム   :年間323トン
3位 イタリア   :年間318トン
4位 インド    :年間123トン
5位 バングラデシュ:年間106トン
6位 カンボジア  :年間79トン
7位 タイ     :年間76トン
8位 フランス   :年間57トン
9位 スペイン   :年間54トン

数字を見ると、製品Aは中国から一番輸入されています。中国の年間輸出量が、1,114トンと圧倒的に多いのが特徴です。次いで、ベトナムからの輸入量323トンが多いことがわかります。まとめると、上位9か国で年間計2,250トンの数量であることが分かりました。

新規市場を探索する際、既存のボリュームがどのくらいあるのかを把握することで、魅力的な市場なのか判断する重要な要素になります。

自社製品の価格競争力を確認できる

貿易統計では、輸出・輸入の金額を確認することが出来る為、 販売しようとしている自社製品が既存市場の中で、価格競争力があるのかないのかが明確になります。 その結果、同様に戦略決定の重要なファクターになります。

例えば、自社製品の価格が市場のそれより高ければ、既存市場で競争するためには、自社製品の訴求点(品質面)を明確にしなければならないでしょう。

一方で、自社製品の価格が市場のそれより低ければ、置き換え活動や販売価格の見直しなどが検討できるでしょう。では実例をみていきましょう。

製品Aの (日本への)上位輸出国 金額別
製品Aの (日本への)上位輸出国 金額別

上記グラフは、2020年度日本に輸入された製品Aの主要輸出9か国の輸入単価(円/KG)を表しています。

1位 フランス   :173,971円/KG
2位 スペイン   :99,108円/KG
3位 イタリア   :68,122円/KG
4位 タイ     :18,870円/KG
5位 カンボジア  :18,550円/KG
6位 ベトナム   :18,499円/KG
7位 インド    :11,979円/KG
8位 中華人民共和国:9,892円/KG
9位 バングラデシュ:7,104円/KG

数字を見ると、製品Aはフランス、スペイン、イタリアが非常に高い輸入額になっていることが分かります。おそらく欧州からの製品Aは、製品価格だけでなく、ブランド価値が付与されている為、非常に高い輸入額になっていることが推測できます。

一方で、アジア諸国からの価格は、キロ当たり20,000円以内になっています。これらはノーブランド品が多いのではないでしょうか。言い換えると、ブランディングすることで、欧州諸国から販売されているような価格での販売が可能となる市場であるということです。

これらのデータを取得することで、どの国から輸入されている製品Aが競合なのか明確化され、そしてあなたが販売しようとしている製品Aに価格競争力があるのか見えてきます。

その結果、事業推進の決断を容易にしたり戦略の方向性を明確にできたりします。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか?
貿易統計データを分析することによって把握することが出来る項目を、以下にまとめました。

・対象国の輸出入されている数量
→市場規模を把握できる。その結果、攻めるべき市場なのか重要な決定を可能にする。

・対象国の輸出入されている金額
→自社製品の価格競争力を確認できる。その結果、販売戦略をより明確にできる。

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