どんな事業をしようかもイメージがついている。だけど、その事業が本当に上手くいくのか分からない。ここで立ち止まってしまう人は、多いのではないでしょうか?

本記事で解決すること

  • 新事業の成功率を見定めたい。
  • 新事業のマーケティングを深堀りしたい。
  • 新事業の売り上げ予測を算出したい。

現在、私もタイで新たな事業を立ち上げようとしております。当初は不安でしたが、今は全力投球で事業を推し進めています。しかし、なぜそう思えるようになったのか?それは、推し進めようとしている「市場規模」が見え「売上予測」がたったからです。

そこで今回は事業をスタートする前に、必ずやっておきたい「市場規模から選定する事業の決め方」「売上予測の立て方」についてご紹介します。

やりたいことを事業にするべからず

やりたいことを事業にするべからず

「やりたいことを事業にする」のは響きは良いですが、実は二つの危険性をはらんでいます。では、ペット産業での事業を例に挙げながら、一つずつお伝えしていきます。

市場規模が小さいリスク

仮に皆さんが、ペット産業における販売事業をしたいと考えていたとします。皆さんだったら、どちらの商品を扱いたいですか?

① ペット用品
② ペット食品

明確な根拠なく「自分がやりたいから」といって、①ペット用品を選択してしまうと、危険ゾーンに突入です。大切なのは、ペット用品とペット食品の「市場規模」から選定することなのです。

現在では、Googleなどの検索エンジンで「ペット用品 市場規模」と検索するだけで、市場規模がわかる便利な時代になりました。ぜひ調べてみてください。

参照先:ペット動物流通販売実態調査報告書

少しデータが古いのですが、ペット動物流通販売実態調査報告書によると、2000年ペット関連総市場規模推移(小売ベース)は、9,100億円となっています。

参照先:ペット動物流通販売実態調査報告書



そして、ペット関連総市場の構成比(小売ベース、2000 年度)を見ると、「ペットフード」が「ペット用品」より大きな市場になっているのが分かります。

ペットフード:約5,041億円
ペット用品: 約2,339億円

こう見てみると、約2倍以上の違いがあることが分かります。

販売価格 x 頻度が低いリスク

次に、「販売価格」と「購入頻度」を予測していきます。まず、ペットフードとペット用品(噛むおもちゃ)の販売価格を考えていきます。

販売価格の比較

ペットフード(ドッグフード12kg):約12,000円
ペット用品(噛むおもちゃ):約2,000円

犬種やドッグフードやおもちゃの種類によって、価格は変わってくるかと思いますが、だいたいこんなものだと思います。

販売頻度の比較

ペットフード(ドッグフード12kg):約12,000円 X 6回/年 = 約72,000円
ペット用品(噛むおもちゃ):約2,000円 X 3回/年 = 約6,000円

次に販売頻度の仮説を立てていきます。私の飼っている中型犬で考えると、12kgはだいたい2ヵ月弱でなくなります。一方で、噛むおもちゃは、少なくとも4か月は持ちます。

一人当たりのお客様で考えると、年間で約66,000円もの差が出てくることが分かります。年間100名のお客様がいれば、660万円もの差が生じてきます。

市場規模から事業を選定するが成功法

市場規模から事業を選定するが成功法

先述したように、自分の興味や関心でやりたいことを決定してしまうと、自分が想定していた販売規模と違っていたと落胆する原因になりかねません。そうならない為にも、「市場規模から事業を選定」していくことが一つの成功法です。

では、誰でも簡単にできる市場規模の調査方法をご紹介します。

Googleで検索する

今やほとんどの市場において、Google検索すれば調べることができます。ですから、「市場規模 〇〇〇」といった感じで調べてみてください。

例えば、「ペット用品 市場規模」と検索すると、以下のように出てきます。

犬の首輪の市場規模

今回はペット用品「犬の首輪」の市場規模について、調べていきたいと思います。犬の首輪は、少なくとも犬の飼育数はあると仮定します。したがって、「犬 飼育数」と検索してみます。

一般社団法人ペットフード協会によりますと、2021年における犬の飼育数は710万6千頭だということが分かりました。

次に、首輪の購入単価です。この場合は、自分が販売しようとしている販売価格で考えます。今回は2,000円に設定するとします。※販売価格の設定は、後述する「貿易(通関)統計を検索する」が便利です。

そして、首輪の購入頻度を考えていきます。犬を飼っている人であればわかるかと思いますが、だいたい3年に一度くらいかと思います。

7,106,000頭 X 2,000円 ÷ 3年 = 約47億4千万円/年

販売エリアを絞る

首輪の市場規模が、約47億4千万円/年であると仮説を立てることが出来ました。次にその市場規模のどれだけを獲得できるかを、ざっくりと概算していきます。

例えば、ECサイトであれば、日本全国が対象になるので、約47億の市場があると言えます。一方で、店舗で販売する場合は、ショップに訪れなければいけないという物理的な制限がでてきます。

例えば、茨城県に店舗があると仮定します。調べてみると、茨城県民が飼育する犬の数は、164,760頭です。したがって、茨城県にある店舗の市場規模は、以下になります。

164,760頭 X 2,000円 ÷ 3年 = 約1億1千万円/年

このようにして、自分が参入しようと考えている市場規模を明確にしていきます。

ここまでのまとめ

まとめると、オンラインストアによるEC販売であれば、市場規模は約47億円。一方、茨城県で店舗型販売にすれば、約1億円だということが判明しました。

もちろん市場があれば、儲かるわけではなく、市場が大きければ、その分競合も増えます。大切なのは、自分が考える販売規模と市場規模を照らし合わせて、事業内容を決定していかなければなりません。

補足:貿易統計を検索する

自社の販売価格を決定する上で、市場価格をベンチマークすることは大切です。そんな時に便利なのが、貿易統計情報です。貿易統計では、日本に輸入されてくる製品の輸入額を調べることができます。

よって、競合が中国製品や欧米製品である場合、彼らがどのくらいの価格で輸入しているのかが分かる為、自社の販売価格を決める上で、とても参考になります。

貿易統計を使った市場分析については、別記事をご覧ください。

選定した事業の売上予測を立てる方法

選定した事業の売上予測を立てる方法

ここまでで、ざっくりとした市場規模が見えてきました。ここでは、競合分析をしながら、さらに細かく自社の売上予測を立てていきます。今回は、全国の市場を対象にしたEC販売を行うドッグフード専門店として考えていきたいと思います。

というのも、これまでの中で、「ペット用品」よりも「ペットフード」の市場規模が大きく、ドッグフードであれば、わざわざ現物を見る必要もないので、EC事業が適していると考えたためです。

4P分析

市場規模から事業を選定した後に、必ずやりたいのが4P競合分析です。製品の品質(訴求点)、価格、販売場所、拡販方法の観点から、競合製品と比較していきます。

比較分析することで、自社製品の良い・悪い点が分かり、改善できるだけでなく、どれくらい売れるのかが見えてきます。ではまず、扱う製品を決めてみたいと思います。

ケーススタディ:扱う製品の決定

私だったら、国内の製品を扱っても既に扱う販売業者がいるはずなので、ペット市場の大きい欧州市場で規模を拡大し始めているブランドに目を付けます。豪州でインターネット検索してみました。

すると「Pet Food Australia」というサイトを見つけました。調べてみると、以下の問題に効果があるドッグフードを見つけました。

商品企画の仕方については、別記事でもご紹介しています。

慢性皮膚炎
不安やストレス
消化器官や胃の問題
関節痛
肥満
耳の中のべた付き
耳内の感染
など

とくに興味深かったのが、不安やストレス」の軽減です。Google検索してみると、まだ日本には類似したドッグフードは無いようでした。

4P自社競合A競合B
PRODUCT(製品)豪州産製品
健康志向◎
ブランド力△
国産ドッグフード
健康志向〇
ブランド力◎
中国産ドッグフード
健康志向△
ブランド力△
PRICE(価格)1,600円/kg1,200円/kg500円/kg
PLACE(場所)ECサイト楽天アマゾン
PROMOTION(プロモーション)ブログ集客
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ネットモール
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ネットモール
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「Pet Food Australia」を自社製品として、上の表のように競合製品と比較していきます。

販売価格を設定する

扱いたい製品の訴求点「不安やストレス軽減」が他社にはないPRポイントということで、価格は国産競合品よりも約30%高い価格で設定しました。

価格の設定は、他社にはない訴求点があれば、高く設定することができます。一方で、他社と似たような製品であれば、競合と同等、もしくは低い値段設定にしないと、顧客を獲得できません。

ですから、他社にはない訴求点を持った製品を扱えるのがベストです。

販売数量を算出する

次に販売数量を予測していきます。不安やストレスを抱えた犬というのは、運動不足の傾向にあるワンちゃんだと考え、都内や大きな都市に住んでいるワンちゃんではないかと仮説を立てました。

そこで厚生労働省の記事によると、東京または大阪で飼育されている犬の数は、

東京都:510,511頭
大阪府:383,030頭
合計:893,541頭

先述したように中型犬の場合、12㎏で2ヵ月ですから、

1,600円/kg X 12kg X 6回/年 X 893,541頭 = 約1,010億円/年

全部の犬が購入するわけではないので、対象の5%と考えると、約51億円/年の可能性があることがわかりました。結構大きな市場ですね!

経費を計算する

最後に手元に入ってくる利益を考えていきます。年商が大きくても、利益が少なければ意味がありませんので。ざっくりとでいいので計算してみましょう。

製品原価:約25億(50%)
広告宣伝:約5億(10%)
EC維持費:約20万円
倉庫費用:約500万円
輸入費用:約5億(10%)
雑費:約100万円
合計:約30.1億円

上記の経費はざっくりとした計算になっていますが、重要なのは自分がやろうとしている事業をしっかりと調べ、必要になるであろう経費を見える化することです。

年商約51億円 - 経費約30.1億円 = 利益約20億円

このように、市場規模から競合分析、経費算出をすることで、自分がやろうとしている事業の売上規模利益までもイメージすることができます。

最後に

いかがでしたでしょうか?事業の選定は、やりたいことを基準にするのではなく、市場規模から選定するが、成功する一つのポイントです。今回の手順を踏めば、ほとんどの市場において誰でも実施することができます。ぜひ実践してみてください。