ペットフードを開発する人にとって、これはよくある疑問です。どちらが最適かは、犬や猫の好みや健康状態などによって異なってきます。本記事では、ウェットフードとドライフードの違いや、それぞれのメリットとデメリットを比較し、開発する商品を検討する際に役立つポイントを解説していきます。
ウェットフードとは?
1950年代にエクストルーダーを使ったキブル(ドライドッグフード)が登場する前は、缶詰のウェットフードが市場を席巻していました。一番初めの缶詰ドッグフードは馬肉で作られ、1922年にケン・L・レーションというブランド名で市場に登場しました。一方、缶詰キャットフードが市場に出たのはその8年後の1930年のことです。
ウェットフードとは、缶詰やパウチに入っている水分量を多く含むペットフードのことを指します。通常、含まれる水分が70~85%(キブル:約10%)と高く、食感は柔らかく、キブルよりも香りや味が強いのが特徴です。
ウェットフードは、まずタンパク質源(肉の成分)を挽くことから始まります。その後、ビタミン、ミネラル、穀物を含むグレービーソースが追加されます。それらが混ぜ合わされた後、食べ物が調理され、滅菌されて完成します。
ウェットフードの長所5選
食欲をそそる
人間と同じで犬や猫も匂いや味が良く、口の中でさまざまな食感が楽しめる食べ物を好みます。実際、ウェットフードはドライフードよりも犬や猫の嗜好を引きつけやすいです。特に、猫は犬以上に選り好みする為、ドライフードよりもウェットフードを好む傾向にあります。
食べやすい
ウェットフードは、硬いキブルよりも噛みやすいため、敏感な歯や小さな歯を持つ犬や猫にとってウェットフードは良い選択肢となります。
また、歯の病気を持つペットにも適しています。もちろん治療することが最優先ですが、ペットが歯周病や虫歯といった病気を抱えてる場合、歯への負担が少なくて済み、カロリーや栄養を摂れるウェットフードが適しています。
満腹感が持続する
ウェットフードには70~85%の水分が含まれており、この水分が食事全体のボリュームを増やし、犬や猫に「お腹がいっぱいだ」と感じさせやすくなります。
水分を多く摂ることで胃が膨張し、満腹感が早く得られやすいため、ウェットフードを食べたペットは、少量の食事でも食後に満足することができます。
水分補給に役立つ
ウェットフードは、水分摂取が少ないペットにとって重要な水分補給源として役立ちます。犬や猫が自発的に水をあまり飲まない場合、ウェットフードから水分を得ることで、体に必要な水分を自然に補給できます。
また、ウェットフードは腎臓や泌尿器系の健康サポートにもつながります。十分な水分を摂取することで、腎臓の機能を維持し、尿路結石などの泌尿器系の問題を予防する効果があります。
特に猫は水を飲む習慣が少ないため、ウェットフードが非常に有効です。
敏感な胃腸に優しい
胃腸が敏感、また便秘になりやすい犬や猫は、一般的にナチュラルフードで作られるウェットフードが適しています。さらに、敏感な胃腸用に特別に配合されたウェットフードや、プレバイオティクスやプロバイオティクスが含まれたウェットフードが良いとされています。
ウェットフードの短所4選
汚れやすく、匂いが強い
ペットにとってはあまり問題ではないかもしれませんが、飼い主である人間にとっては問題です。ウェットフードは口周りの毛にくっつきやすく、フードが床に散らばり、洗う際にもボウルにこびりつきます。さらに、その強い匂いは飼い主にとってあまり快適でないかもしれません。
保存期間が短い
開封後は、ウェットフードをすぐに食べる必要があります。数日以内に食べないと、ペットにとっても美味しくなくなってしまいます。
分量調節が難しい
ウェットフードは通常、小さなパウチや缶に入っているため、分量がほぼ決まってしまいます。犬や猫に与える量を具体的に調整したい場合、これを計算するのに手間がかかることがあります。
コストが高い
ウェットフードは、ほとんどの場合、ドライフードよりもコスト高になります。
ドライフードとは?
世に初めて出たドライドッグフードは、1860年に米国人ジェームズ・スプラット氏によって発明されたと言われています。スプラット氏の「ドッグビスケット」は、現在でいうところの「ミルクボーン」などの犬用おやつに似ていました。スプラット氏は、初の商業的なドライキャットフードも開発したと考えられています。
しかし、エクストルーダーによるキブル(ドライペットフード)が発明されたのは1950年代のことです。最初にこの技術を使用して犬用と猫用のキブルを製造したのはピュリナで、1957年に「Purina Puppy Chow」、1962年に「Purina Friskies」を発売しました。
キブルには水分が約10%しか含まれていません。ドライフードは、イギリスではビスケット、アメリカではキブルと呼ばれ、通常は小さな茶色の粒状の形で、大きな袋や容器に入っています。一般的に、ドライフードはウェットフードよりも長持ちし、あまり汚れません。(開封後)
ドライフードも非常に似た成分を含んでいますが、グレービーを加えてウェットフードにする代わりに、肉などの原材料が粉砕機で粉砕されてから混合されます。
その後、粉砕された原材料の混合物は特定の形状の穴を通して押し出され、キブル(小粒状)を形成します。その後、キブルは乾燥処理され、脂肪、パラタントがスプレーされて包装されます。これらの脂肪やパラタントが酸化する前にパッケージングが行われます。
ドライフードの長所5選
保存期間が長い
ドライフードはウェットフードに比べて開封後の保存期間が長く、適切に保管すれば数週間から数ヶ月にわたって新鮮さを保つことができます。
これは、ドライフードに含まれる水分量が非常に少ないため、腐敗やカビの発生を抑えられるからです。そのため、ペットの食事として長期間保存でき、経済的にもメリットがあります。
コストを抑えられる
ドライフードは保存期間が長いため、大容量で購入できることです。これにより、頻繁に買い足す手間を省くだけでなく、コストを抑えることができます。
特に多頭飼いの家庭や大型犬を飼っている場合、大量のフードが必要になるため、ドライフードの経済性がさらに顕著になります。
体重管理に良い
ドライフードはその計量のしやすさや分量管理の容易さから、ペットの体重管理において非常に効果的です。正確なカロリーコントロールを実現することで、健康的に体重を管理し、過剰な摂取を防ぐことができます。
したがって、体重管理や減量を目指す犬や猫にとって、ドライフードは、ウェットフードよりも適している選択肢となります。
歯を清潔に保つ
一般的にドライフードには噛み応えがあり、犬や猫の歯の健康に良く、歯を清潔に保つのに役立ちます。キブルはウェットフードのように歯にこびりつかないため、歯石の蓄積が少なく、歯肉炎のリスクも低くなります。
これは特に、グレイハウンド、プードル、チワワのような歯の病気にかかりやすい犬種にとって重要です。
口周りを清潔に保つ
毛が長い種や口ひげやあごひげを持つペットにとって、ドライフードは毛を清潔に保ち、口周りの皮膚病を防ぐのに役立ちます。
ドライフードの短所4選
嗜好性には劣る
ドライフードは栄養が豊富で、味に関して言えば、犬や猫にとっては満足できるものです。しかし、ペットの総合的な食事体験において、ドライフードは少し退屈になるかもしれません。
保存料が含まれることが多い
一般的にドライフードは、ウェットフードよりも保存料が含まれていることが多いです。しかし、一部のドライフードにはすべて天然成分が含まれており、完全無添加フードも存在します。
水分補給に適さない
水を飲みたがらないペット、体調が悪いペット、または高齢ペットには、ウェットフードの方が水分補給に優れているかもしれません。
歯に負担がかかる
ドライフードは犬や猫の歯の健康に良いですが、敏感な歯を持つペットには噛むのが困難な場合があります。
どちらが最適なペットフード開発?
解説してきたようにウェットフードかドライフードのどちらを選ぶかは、主に便利さやライフスタイルに基づく飼い主の選択に加えて、ペットの食習慣や健康状態にも関係してきます。
もし犬や猫が食にうるさく、味に欠ける食事には興味を示さない場合は、風味が強いウェットフードを食べさせる方が良いかもしれません。また、犬や猫の歯が敏感であったり、水分を摂らなかったりする場合は、ウェットフードが向いているかもしれません。
一方、ドライフードは体重管理が必要なペットに非常に適した選択肢です。正確な分量を計ることができるため、カロリーコントロールが容易で、過剰な給餌を防ぐのに役立ちます。
ウェットとドライの両方を開発する
「結局、ウェットフードとドライフードのどちらかが良いのか?」という声があるかもしれませんが、その気持ちはよくわかります。その場合は、両方を開発するのも選択肢の一つです。
最近ではドライフードとウェットフードの両方をペットに与える飼い主も増えてきており、、多くのペットがこの混合食にうまく適応しているようです。また、犬や猫が成長するにつれて嗜好性が変わることもあるので、両方の商品ラインナップを持っておくことも最善の策かもしれません。
結論として、どちらかのフードがペットにとってより健康的だとか、より優れていると心配する必要はありません。適切なペットフードを開発すれば、犬や猫は必要な栄養素をすべて摂取できます。
しかし、上記のポイントを考慮することで、犬や猫がしっかりとした食事の習慣を持ち、食事を快適かつスムーズに消化できる優れた商品を開発することができるでしょう。