タイのペットフード市場は成長とサステナビリティのトレンドに向かって急速に発展しています。アジアが世界のペットフード市場で存在感を増す中、タイのペットフード市場も着実に拡大しています。この成長には、タイが世界で第3位の犬と猫向けペットフードの生産国であることが大きく寄与しています。

そして当国ではペットフード業界への関心が高まっており、タイの企業もその中に含まれます。例えば、Lion Corporation Thailandは、日本のペットケア製品ブランドを展開する中で、タイのペットフード市場への参入を決定しました。また、タイのペットフード産業では、BCG経済モデルの概念が取り入れられ、ツナの全ての部位を最大限に活用することが重視されています。

成長するタイのペットフード産業

成長するタイのペットフード産業

タイのペットフード市場の成長とサステナビリティのトレンドは、この東南アジアの国にとって追い風となっています。同時に、アジア地域が世界のペットフード市場で存在感を強める中で、タイのペットフード市場も着実に拡大しています。

タイは生産国および輸出国として、犬と猫向けのペットフードの世界第3位に位置しています。2022年には、タイ産ツナ缶、および犬と猫向けのペットフードの世界への輸出額はそれぞれ794.1億バーツ(約19.2億USDドル)と852.1億バーツ(約20.7億USDドル)に達しました。これはそれぞれ514,071トンと818,281トンに相当します。

これらの数字から、タイはアジア地域でペットフード市場に参入しようとする企業からの関心を集めていることは言うまでもありません。

日系企業ライオンの挑戦

日系企業ライオンの挑戦

Bangkok Postによると、創業56年の歴史を持つ製造会社Lion Corporation Thailandも、タイの巨大なペットフード産業に参入しようとする1社です。

現在、同社は日本のブランドであるLion Pet Care事業にて、多くのペットケア製品を製造・販売している為、日本で製造したペットフードの輸入も計画しています。しかし、タイのペットフード産業での成功の鍵は、地元タイのペットフードブランドメーカーとパートナーシップを結ぶか、タイ市場に合わせた犬と猫のオリジナルペットフードをゼロから生産することが必要であるとも考えています。

同社の社長であるBoonyarit Mahamontri氏は、「ライオンは数十年にわたる日本のペットフード事業での経験を活かせる為、タイのペット市場に参入するのは適切な時期だと考えています。そして、タイでも日本と同様に比較的高価なペットフード購入する人々が増えてきました。」と言います。

2022年のPetfood Industryのペットフード企業データベースにおいて、アジア太平洋地域に拠点を置く企業を見てみると、多くの日本企業が存在しますが、上位3社のうち2社はタイの企業が占めているのも事実です。

ライオンは、新たな市場開拓に向けて最近爆発的な成長を遂げているペット産業への参入を本格的に進めています。

大手ツナ缶製造メーカーの参入

大手ツナ缶製造メーカーの参入

2022年後半には、タイに拠点を置くツナ缶製造メーカーもペットフード製造に着手することを発表しました。商務省の事業開発局は、2026年までにタイのペット市場が平均年率8.4%で成長し、667.48億バーツ(約20億USDドル)に達すると推定しています。

タイのツナ産業協会(TTIA)とタイのペットフード貿易協会(TPFA)は、より多くのペットフードをツナから生産するために、バイオ経済(海洋、陸域で生産される再生可能なバイオマスを資源としたエネルギー、素材、食品に依存する経済)、循環経済、グリーン経済モデルを取り入れていくことを発表しました。

両協会のメンバーは、BCG経済モデル(「バイオ経済」、「循環経済」、「グリーン経済」の考えを統合したもの)に関連するトレーニングおよび教育プログラムを取り入れており、BCG経済モデルが今後、両協会の方針の一部になる予定です。

政府の広報担当者であるAnucha Burapachaisri氏は、BCG経済モデルが、利用可能なツナの部位の損失と廃棄を防ぎ、これらを輸出用のプレミアムグレードのペットフード製品の生産に取り入れることで、役立つであろうと述べています。

「可能な限りBCG経済モデルをツナ産業とペットフード産業で促進させていきます。」と、TTIAおよびTPFAの会長であるDr. Chanintr Chalisarapongは述べています。そして「現在、世界は気候変動問題の解決と温室効果ガス排出の削減に重きを置いています。」と付け加えます。

この環境問題はタイの経済にとっても重要であり、タイとEUの自由貿易協定(タイEU FTA)の内容に組み込まれており、タイのペットフード産業自身が変革し、国際規制に適応していかなければならないことを意味しています

BCG経済モデルは、気候行動、水中および陸上に生存するすべての生き物に関連する国連のサステナブルな開発目標に準拠したタイの国家政策とみなされています。そして、BCG経済モデルでは以下のような方法で、両産業(ツナ産業とペットフード産業)がツナ資源を最大限に活用することができると考えられています。

バイオ経済

廃棄物を利用して他の製品として付加価値を創造すること。例えばツナの切れ端から濃縮エキスを抽出し、ペットフード製品のタンパク質含有量と嗜好性を高めるための添加剤として使用すること。

循環経済

ペットフードをツナ肉から生産すること、または魚の骨や内臓などをペットフードの混合原料として利用すること。(ツナ魚油の抽出を含む。)

グリーン経済

クリーンで再生可能なエネルギーを活用し、モノマテリアル製品やバイオプラスチックに基づく環境にやさしい包装材を開発・製造するために投資すること。

ツナ缶でサステナブルな社会を

ツナ缶でサステナブルな社会を

タイのペットフード産業では、余すことなく全てのツナを活用していく試みがなされています。つまり、これまで捨てられていた廃棄物をペットフードの価値を高めるために使用することで、これまでの損失を利益に変換することを意味ます。

ペットフードの味わいを増すための材料として使用されるツナの濃縮エキスや、ツナの赤身などの副産物、鶏の内臓、鶏の枝肉、牛の内臓などの家畜製品の副産物をペットフードに混ぜた原料として使用するだけでなく、ツナの枝肉や骨を動物飼料の製造に利用していくことで、サステナブル社会に貢献しようとタイでは様々な取り組みがなされています。