メーカーで働くマーケティング担当者自身で、Webマーケティング実務をされている方は、どの位いるでしょうか?IT技術の進歩と普及により、企業のビジネス戦略や新規事業(用途)を検討する際、オンラインを活用したWebマーケティングが一般的になってきました。

たしかにWebマーケティング会社にお金を出して、力を入れている企業は多く存在しますが、メーカーのマーケ担当者が、実際に手を動かして実施されている所は少ないように思えます。

本記事で解決すること

  • 自ら新規事業(用途)を見つけたい。
  • 無料で利用できるWebマーケ手法を知りたい。
  • Webを使ってマーケットインの需要を把握したい。

聞き込み型マーケティングの限界 

1. 聞き込み型マーケティングの限界 

まずメーカーにおける一般的なマーケティング活動について考えていきたいと思います。

主にメーカーで実施されているマーケティング活動は、「聞き込み型」であると言えます。聞き込み型とは、新規製品を開発する為に、主に既存の顧客や代理店から課題や悩みを聞き出す方法です。

聞き込み型探索の種類

では「聞き込み型探索」にはどんな種類があるのでしょうか?

既存顧客への聞き込み以外にも、考え得る聞き出す方法も挙げてみました。

  • 既存顧客や代理店への情報収集
  • 新規顧客への聞き込み
  • 特許マーケティング

具体的に一つずつご紹介してまいります。

既存顧客や代理店への情報収集

既存顧客や代理店に訪問し、課題や悩みを聞き出す方法です。既存の用途ありきでの議論になるので、斬新なアイデアが生まれる事は多くありません。

新規顧客への聞き込み

新規顧客への電話営業や直接訪問して、聞き込み調査を実施します。具体的な提案がないまま聞き込みをお願いしても、なかなか打合せを承諾してもらえない、もしくは具体的な情報が聞き出せないまま時間を浪費する可能性があります。

特許マーケティング

自社製品に類似する製品の特許事項を調査して、新規用途として開発できるか模索する方法です。これまでにない用途を見つけることができるかもしれませんが、既に他社によって特許が出されていたり、二番煎じの用途になる可能性があります。

聞き込み型が成功しない理由

では、何故これらの聞き込み型マーケティングでは限界があるのか?考えられる理由は、二つあります。

収集できる情報量に限界がある

一つ目は、聞き込み型の情報収集では、どんなに頑張っても限られた情報しか収集することができないからです。営業担当者が一日一顧客を訪問したとしても、年間365件の意見しか収集することが出来ません。

仮に新しい用途を見いだせたとしても、N数の少ない情報から考えられた用途ですから成功する可能性も低いと言えます。新たな用途を模索するとしたら、少なくともN数は1,000件以上欲しい所です。

新規用途を検討するのに、1,000件以上訪問して情報を収集するまで、忍耐強く待てる企業は少ないと思います。

斬新なアイデアが生まれない

二つ目は、シンプルに聞き込み型マーケティングの主対象である既存の用途からは、斬新なアイデアは生まれないからです。たしかに既存用途から派生した準新規用途は見つかるかもしれません。しかし、これまで考えもつかなかった新しいアイデアを見つけることは難しいでしょう。

例えば、自動車や車両関係のラジエタータンクやスピードメーターギア、クーリングファンなどにも使われているナイロン樹脂を販売していたとします。経営陣から、新たにナイロン樹脂を販売できる新規用途を探せと言われたとします。もちろん皆さんが課された新規用途とは、これまでの枠組みにとらわれない新しい取り組みのはずです。

しかし、既存の自動車業界の顧客や代理店に聞き込みをしていても、自動車用という枠組みから抜け出すことはできず、新規用途探索に行き詰まるわけです。

これらのことから、聞き込み型のマーケティングには限界があるのです。

限界を打破するWebマーケティング

2. 限界を打破するWebマーケティング

昨今インターネットの普及が加速し、多くの人がGoogleといった検索エンジンを使って、自分で気になることを気軽に調べられるようになりました。つまり、インターネット内の情報を調査できるWebマーケティングを使えば、膨大な情報を取得できるだけでなく、顧客の潜在需要を確認できるようになりました。

膨大な情報量がある

参照先:Google検索回数、年「2兆回」に、年間推移データ

SEO対策サービスを提供する株式会社ディーボによれば、2016年時点で、Google年間検索数は2兆回を超えました。分りやすくたとえると、1秒間に63,000回検索されているということになります。つまり、それだけユーザーのニーズ(興味・関心の声)が存在するということです。

ですから、これらの情報を使って新規用途を探索すれば、いとも簡単に1日365件(直接訪問した場合の年間件数)以上のニーズを収集することが出来るのです。

斬新なアイデアが眠っている

検索エンジンで検索されるキーワードというのは、ユーザーのニーズ(興味・関心)に沿って生成されるわけですから、質の高い意見だと言えます。加えてGoogle検索では、2兆件以上の検索キーワードが眠っているので、会社のマーケティング担当者だけでは思いつかないアイデアがゴロゴロと眠っているわけです。

仮に自分の足を使って情報収集する場合、一日1件顧客訪問しても、365件にしかなりません。一方Google検索キーワードは膨大な情報が眠っているわけですから、新しい用途を模索する上でどちらが効率的で、有益な情報を得れるかは言わずもがなです。

無料で利用できるWebマーケ手法

3. 無料で利用できるWebマーケ手法

Webマーケティングを使った新規用途探索が、効果的であることが分かりました。ここからは、実際にどのツールを使って、どうやって新規用途を調べていくのかを3ステップに分けてご紹介していきます。

  1. ラッコキーワード検索|新規用途の発掘
  2. キーワードプランナー検索|新規用途の需要確認
  3. Googleトレンド検索|新規用途のトレンド

ケーススタディ(事例研究)

先述したナイロン樹脂を例に新規用途を探索してみます。

自社製品:ナイロン樹脂
既存市場:自動車業界
ミッション:新規用途の発見

ラッコキーワード検索|新規用途の発掘

初めに使用したいのが、ラッコ(サジェスト)キーワード(無料)です。

ラッコキーワードは無料でも利用できるキーワードリサーチツールです。一瞬でキーワードリサーチに必要な情報を収集してくれる、コンテンツ制作者のためのツールです。

読者や視聴者が求めているコンテンツは何か?ニーズを把握して、より高品質なコンテンツ制作にお役立ていただけます。

引用元:ラッコキーワードとは

つまり、ユーザーの検索キーワードから、求められている潜在ニーズを見つけ出すことができます。例えば、Googleで「スイーツ」と検索すると、下図のように「スイーツ」に関連したサジェストキーワードが出てきますよね。

ここでいえば、「スイーツ食べ放題」というワードがあり、おなか一杯にフルーツを食べたいというニーズが見えてきます。このように、ワード「スイーツ」で検索するユーザーのニーズが見えてくるわけです。

取得している情報元

  • Google(Yahoo)サジェスト
  • Bingサジェスト
  • Youtubeサジェスト
  • Google動画サジェスト
  • Google画像サジェスト
  • Googleショッピングサジェスト
  • 楽天サジェスト
  • Amazonサジェスト

サジェスト(提案)されるキーワードは、上記のデータベースを基に算出されています。言い換えれば、十分なデータベースを基に算出された、精度の高い情報を提供してくれるということです。

新規用途の発掘

早速、ラッコキーワードを使って「ナイロン 樹脂」と検索してみます。今回はグローバルに調査したいので、英語で「nylon resin」と検索してみたいと思います。

沢山の関連キーワードが出てきました。この中から、新規用途につながりそうなサジェストキーワードを探していきます。今回、私は「3d resin nylon」というサジェストキーワードに目をつけました。

Googleで調べてみると、ナイロン樹脂が3Dプリンターの樹脂材として使用されていることが判明しました。このようにして、自動車業界という枠組みを超えて、ポテンシャルの高い新規用途を探すことに成功しました。

キーワードプランナー検索|新規用途の需要確認

新規用途の需要確認

次に、先ほど発見したサジェストキーワード「3d resin nylon」は、どのくらいの検索ボリュームがあるのかを調べ、需要を確認しなければなりません。新規用途を発見できても、需要が少なければ意味がありませんから、需要の大きさを確認しておくことが重要です。

そこで便利なのが、Googleが提供する無料サービスキーワードプランナー」です。これは全世界各国どこにでも設定可能で、設定した国で対象キーワードが、何件/月検索されているかが分かります。

実際に見ていきましょう。Googleで調べてみると、3Dプリンターの先進国はアメリカということがわかったので、調査市場をアメリカにして見ていきたいと思います。上図にある「新しいキーワードを見つける」をクリックします。

すると、上図のような画面に移行するので、「キーワード(3d nylon)」「対象国」を選択して検索します。その結果、月間100-1000件検索されていることが分かりました。基本的に100件以上あるキーワードであれば、需要のあるキーワードだと言えます。

これで3Dプリンター市場に、ナイロン樹脂の需要がありそうだということが分かりました。

Google トレンド検索|新規用途のトレンド

最後に確認したいのが、対象キーワードのトレンドです。過去から現在にかけて、対象のキーワード検索ボリュームがどのように推移しているかを見ることによって、今後さらに伸長していく新規用途になり得るのかを判断することができます。

ここで使用するのが、もちろん無料で利用できるGoogleトレンドです。これを使って調べていきます。

新規用途のトレンド確認

キーワードプランナーの時と同じく「キーワード(3d nylon)」「対象国」を設定していきます。

検索結果後、調べたい期間を設定してください。今回は、最長期間で設定しました。すると、「3d nylon」というキーワードは、2015年以降に伸び始めてきています。この傾向からすれば、おそらく今後においても成長していくポテンシャルの高い市場だと仮説を立てることができました。

まとめ

以上が、無料Webマーケティング手法を使った新規用途探索方法でした。改めてご紹介してきたステップを、以下にまとめます。

  1. ラッコキーワード検索|新規用途の発掘
    ⇒自社製品のワードに関連するサジェストキーワードから新規用途を模索する。
     
  2. キーワードプランナー検索|新規用途の需要確認
    ⇒新規用途に関連するキーワードの検索ボリュームを確認し、需要があるのかないのかをチェックする。
     
  3. Googleトレンド検索|新規用途のトレンド
    ⇒新規用途に関連するキーワードのトレンドを確認して、成長見込みのある市場なのかをチェックする。

メーカーのマーケターで、このようなWebマーケティングをしている方は多くありません。今のうちからWebマーケティングスキルを磨き、これからも重宝される人材になっておいても損はしないでしょう。一方、火急で新規用途模索を迫られている人も、このやり方は凄く簡単&短時間でできますので、ぜひ試してみてください。