犬や猫が幸せで健康でいるためには、タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルからなるバランスの取れた食事を摂取することが大切です。
これらの栄養素はすべて必要不可欠ですが、特にタンパク質は犬や猫の健康において重要な役割を果たします。このタンパク質は体内で消化されると、アミノ酸に分解されます。このアミノ酸こそが犬や猫の発達や健康に大きな役割を果たします。
アミノ酸とは?
犬や猫の毛、皮膚、目、筋肉、臓器はすべてタンパク質でできています。犬や猫がどれほど完璧であっても、タンパク質を作り出すことはできません。
具体的に説明すると、タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されていますが、犬や猫はこれら全てのアミノ酸を必要とします。
そのうち10種類は非必須アミノ酸と呼ばれ、体内で他の栄養素から合成できます。一方、残りの10種類は必須アミノ酸と呼ばれ、犬や猫は食事からこれらを摂取する必要があります。
必須アミノ酸の役割
- アルギニン:疲労の原因物質になるアンモニアを除去、免疫力の向上。
- ヒスチジン:免疫&消化機能向上の為にヒスタミンを生成。
- イソロイシン:エネルギー源または筋肉の修復を補助。
- ロイシン:筋肉の増加や損傷抑制、肝機能のサポート。
- リシン:カルシウムの吸収とコラーゲンの形成をサポート。
- メチオニン:肝機能やエネルギー代謝を促進。
- フェニルアラニン:精神安定、食欲抑制、鎮痛効果。
- スレオニン:タンパク質のバランスと健康な皮膚や被毛を維持。
- トリプトファン:精神安定と睡眠の質を上げるセロトニンを生成。
- バリン:筋肉の代謝と修復をサポート。
炭水化物や脂肪とは異なり、犬や猫の体は上記した10種類のアミノ酸を後で消費するためにと体に貯めておくことはできません。
さらに、たった一つのアミノ酸が欠けているだけで、体全体の機能に影響を与えてしまう為、すべての必須アミノ酸を毎日の食事に取り入れることが重要なのです。
アミノ酸が持つ効果
犬や猫の種類、サイズ、年齢を問わず、必須アミノ酸は、彼らの食事における重要な役割を果たします。犬や猫が摂取したフードのタンパク質は体内でアミノ酸に分解され、これらのアミノ酸がさまざまな重要な機能をサポートします。
組織の構築と修復
アミノ酸は筋肉、皮膚、靭帯や骨、血管、その他の組織の構築と修復に役立ちます。
例えば、犬が怪我をしたり、激しい運動をした後、筋繊維が損傷を受けることがあります。アミノ酸は新しい細胞の生成を促進し、損傷した筋肉組織を修復することで、体力の回復、そして筋肉増強を促進します。
このように、犬や猫は日常の生活や運動後に迅速に回復し、健康な状態を維持することができます。
栄養素の運搬
アミノ酸は、体内の栄養素をカラダ全体に運搬するための重要な役割を果たします。
例えば、アミノ酸からなる血液中のたんぱく質アルブミンは、カルシウム、亜鉛、銅といった微量元素や脂肪酸、酵素などと結合し、これらを体の必要な部位へ運搬する役割を果たします。
この運搬機能がうまく働くことで、犬や猫の体全体に必要な栄養素が適切に分配され、健康を維持することができます。
健康な皮膚と被毛
アミノ酸は、犬や猫の皮膚と被毛の健康を維持する効果があります。アミノ酸で構成されるコラーゲン(タンパク質)は、皮膚のハリ・ツヤを整え、さらに18種類のアミノ酸で構成されるたんぱく質ケラチンは、被毛の主成分となります。
これらのたんぱく質を構成するアミノ酸が不足すると、皮膚が乾燥しやすくなったり、被毛が薄くなったりすることがあります。
アミノ酸が豊富な食事は、犬や猫の皮膚を健康に保ち、被毛を光沢のある美しい状態に保ちます。
酸素の運搬
アミノ酸は、ヘモグロビンの生成に必要です。ヘモグロビンは赤血球に含まれるたんぱく質で、酸素を肺から体の各細胞に運ぶ役割を果たします。
これにより、体の各部分が十分な酸素を受け取り、正常に機能を果たすことができます。
免疫系の強化
アミノ酸は、免疫機能の強化に不可欠です。たとえば、グルタミンというアミノ酸は免疫細胞のエネルギー源となり、免疫機能が正常に働くようサポートしています。
また、アミノ酸であるグルタミン酸、システイン、グリシンから生成されるグルタチオンは、体内の抗酸化物質として機能し、肝機能低下の抑制や認知機能改善など免疫系を強化してくれます。
アミノ酸摂取に適したタンパク質
タンパク質の評価は、生物価(Biological Value)という数値で測定します。生物価とは、食事を通じて、どれだけ必須アミノ酸が体内に取り込まれるかを表した数値で、たんぱく質の品質や消化性を示す指標として用いられます。
1位:全卵(鶏卵)
全卵は完全栄養食とも言われ、生物価100%の完璧なタンパク質とされています。卵白はアミノ酸が豊富で消化しやすく、卵黄はビタミンBが豊富です。全卵を与えることができますが、必要に応じてカルシウムのために殻も含めることもできます。
ただし、卵だけでは犬の食事の要求を満たすことはできません。さらに、1日に1つ以上の卵を与えることは推奨されていません。
2位:ラム、鶏、牛
ラム肉、鶏肉、牛肉は次に続き、生物価は92%です。肝臓や腎臓などの内臓部分は90%です。さまざまな種類の動物タンパク質源の中でも、ラム肉と鶏肉は犬にとって特に消化しやすいとされ、次に牛肉が続きます。
多くのプレミアムドッグフードにこれらのタンパク質源が使用されている大きな理由は、他のタンパク質源と比較して消化性が良いからなのです。
療法食に使いたい牛肉と豚肉
牛肉と豚肉はナトリウム含有量が最も低いです。豚肉はカリウム含有量が最も高く、鶏肉は最も低いです。
これらの情報は、心臓や腎臓の病気を持つペットに向けたペットフードを開発する際に重要です。特定の心疾患を持つ犬には低ナトリウムの肉が適しており、特定の腎臓病の犬には低カリウムの肉が好まれます。
他にも、ラム肉、鶏肉、牛肉、豚肉は、膀胱結石の傾向がある犬に適しています。これらの肉はいずれもカルシウムが低く、マグネシウムも中程度に低いです。
3位:魚(フィッシュ)
魚は優れたタンパク質源であり、オメガ脂肪酸も含んでいますが、その消化性は75%です。
魚は牛肉と比べても見劣りしない、犬にとって優れたタンパク質源です。魚は牛肉に対するタンパク質比率がわずかに高く(約3%)、しかし牛肉の方が魚に比べて消化しやすいです。
魚は牛肉よりも脂肪が少なく、オメガ3と6脂肪酸が含まれているため、体重を減らそうとしている犬にとっては、魚が理想的なタンパク質の一つとなります。
4位:植物性タンパク質
トウモロコシ、大豆といった豆類の穀物ミールも比較的消化しやすいタンパク質源ですが、摂取できるアミノ酸の種類が多くありません。しかし、犬は雑食性であるため、炭水化物を含む穀物を添加したほうが犬の健康に良いという研究結果もあるようです。
動物性タンパク質と比較すると、植物性タンパク質は消化しにくく、その消化性は54%から75%です。
ただし、アメリカ獣医医学会(JAVMA)の記事によると、適切に処理された大豆ベースのタンパク質は、動物性タンパク質源と同等の消化性を持つことが研究結果で分かっています。