成犬の約20%が犬の変形性関節症を罹患しているのはご存じでしょうか?これは犬種や年齢に関わらず発生する可能性があります。また、年齢を重ねていくうちに関節の病気にかかりやすくなります。
そんな関節の健康維持に効果が期待されるグルコサミンとコンドロイチン。これらの成分は、犬にとって関節の柔軟性や痛み軽減に役立つ一方で、副作用の可能性もあります。本記事では、犬に与える際の利点や副作用について詳しく解説していきます。
グルコサミンとは?
グルコサミンは、アミノ基と糖(グルコース)が結合した化合物で、体内では軟骨の形成や修復に重要な役割を果たしています。
関節部分で緩衝材の役割を持つ軟骨は、日常の動作や加齢によりすり減ることがあり、グルコサミンはその軟骨の形成や修復を助ける成分です。
グルコサミンは加齢とともに減少するため、サプリメントとしての摂取が関節の保護や炎症の軽減に役立つと考えられています。
グルコサミンの利点
グルコサミンは、軟骨を形成するプロテオグリカン(タンパク質)、コラーゲン、ヒアルロン酸の合成を促し、関節の滑らかな動きをサポートします。
また、関節の摩耗を防ぎ、痛みや腫れを軽減するため、特に変形性関節症などの関節疾患の改善の為に利用されています。その他にも、以下のような目的でグルコサミンが使用されることがあります。
- 関節の潤滑を助け、痛みを軽減する。
- 一般的な関節の健康を改善する。
- 犬のパフォーマンスを最高の状態に保つ。
- 脊髄関節症の治療を助ける。
- 関節手術の回復をより早くする。
- 関節の炎症を軽減する。
このようにグルコサミンの用途や利点は多くありますが、犬がグルコサミンによる軽微な副作用を発症させることもあるので注意が必要です。以下にグルコサミンの副作用の一部を紹介します。
可能性のある副作用
- アレルギーのような敏感症
- 不眠
- 疲労
- 過度な喉の渇きや排尿
副作用は怖いと感じるかもしれませんが、すべての犬がこれらを発症するわけではありません。もし副作用について心配がある場合は、信頼できる獣医に相談してみて下さい。
コンドロイチンとは?
グルコサミンが犬の関節に良いことは間違いありませんが、関節に良いとされているのはグルコサミンだけではなく、コンドロイチン(硫酸)も欠かせません。
コンドロイチンは、ムコ多糖(糖とタンパク質が結合した粘性物質)の一種で、主に軟骨に含まれています。
コンドロイチンは水分を保持することで関節を柔らかく保ち、クッションの役割を果たすことで関節にかかる衝撃を吸収します。これにより、関節の摩耗を減らし、痛みを軽減する働きがあります。
犬は魚や鳥の軟骨、豚の気管などの食材から十分な量のコンドロイチンを摂取することができます。さらに、イカの軟骨もコンドロイチン硫酸の優れた供給源です。
コンドロイチンの利点
グルコサミンと同様に、犬の関節に多くの利点をもたらします。グルコサミンが痛みの軽減効果があるのに対し、コンドロイチンは抗炎症作用効果があります。
また、タンパク質分解酵素を抑制するのにも役立ちます。この酵素は関節に常に存在しており、軟骨の変性消失を加速させます。この酵素は、犬が負傷したり軟骨がすり減ったりすると増加します。その結果、犬の関節に痛みが生じるという仕組みです。
グルコサミンとコンドロイチンの違い
グルコサミンとコンドロイチンは、関節の健康において補完的な役割を持つ成分ですが、それぞれの役割、分子構造、効果には異なる特徴があります。以下にもう少し詳しく説明します。
役割の違い
グルコサミン
グルコサミンは、軟骨の生成や修復に欠かせない成分です。軟骨は、関節におけるクッションの役割を果たしており、日常の動きや加齢によってすり減ることがあります。
グルコサミンは軟骨細胞に働きかけ、プロテオグリカンやコラーゲンの生成を促すため、軟骨の再生や修復がスムーズに進むようサポートします。
このように、関節の土台である軟骨の構造そのものを強化し、関節の柔軟性とスムーズな動きを保つ役割を持ちます。
コンドロイチン
コンドロイチンは、関節において水分を保持する働きが強く、軟骨のクッション性を維持します。軟骨の約70%は水分でできており、関節に加わる衝撃を和らげるためには、水分保持が重要です。
コンドロイチンは、軟骨内部に水分を引き寄せる力があるため、関節の柔らかさや弾力を維持します。また、コンドロイチンには炎症を抑える働きもあり、痛みや腫れの軽減にも寄与します。
分子構造の違い
グルコサミン
グルコサミンは「アミノ糖」というタイプの化合物で、アミノ基と糖(グルコース)が結合した構造を持ちます。これは、関節内で新しい軟骨を生成する材料として使われ、軟骨の主要な成分であるプロテオグリカンを形成します。
アミノ糖としての特性により、軟骨の形成において他の糖分子と連携しやすく、効率的に軟骨生成を促進します。
コンドロイチン
コンドロイチンは「ムコ多糖(粘性物質)」という分類に属し、複数の糖分子(多糖)とタンパク質が結合した構造です。
ムコ多糖としての性質により、軟骨内で水分を保持し、吸水性が高く、衝撃吸収に適した構造になっています。この吸水性によって、軟骨に弾力を持たせ、関節の動きを滑らかに保ちます。
効果の違い
グルコサミン
グルコサミンは、関節の摩耗によって損傷した軟骨の修復を助け、軟骨の減少を防ぐ役割に特化しています。特に関節の修復と再生をサポートすることで、関節痛や動きの制限を軽減します。
グルコサミンは、変形性関節症(OA)のように軟骨が劣化する疾患に対して、軟骨組織を補強し関節の機能を改善するためのサポートを行います。
コンドロイチン
コンドロイチンは、水分保持による関節の弾力性の維持に特化しており、特に関節にかかる圧力や衝撃を緩和する効果があります。
これにより、軟骨の摩耗を防ぎ、関節の動きをよりスムーズにし、痛みを緩和する作用が期待されます。コンドロイチンはまた、抗炎症作用があるため、炎症による腫れや痛みを軽減する働きもあり、慢性関節痛の軽減にも役立ちます。
併用により相乗効果を生む
両方を組み合わせて摂取することにより、グルコサミンが軟骨の修復と生成を促進し、コンドロイチンがその軟骨を保護して弾力性を維持することで、より効果的に関節の健康をサポートすることが可能です。
犬の変形性関節症や関節炎を改善できるか?
変形性関節症と関節炎は、犬に見られる一般的な関節疾患です。多くの犬がこれらの病気にかかる可能性がありますが、特に高齢犬で発症率が高くなります。
多くの場合、犬の関節炎は犬の股関節に影響を与え、しばしば不快感や痛みを引き起こします。そのため、多くの飼い主がコンドロイチンやグルコサミンを含むドッグフードやサプリメントを使用しています。
これらの関節疾患を早期に予防し、適切な食事やサプリメントを与えることで、犬の関節疾患の進行を遅らせたり、軽度の関節炎を治療することができます。
グルコサミンとコンドロイチンが必要な犬
グルコサミンとコンドロイチンは痛みの緩和に迅速に作用しますが、病気を早期段階で治療することほど効果的に病気を止めるものはありません。
人間の関節炎と同様に、犬の関節炎は変性関節疾患がほとんどです。年をとった犬は加齢によって変形性関節症を発症することがありますが、時には若年でも関節炎を発症することがあります。
若い犬の関節炎は、感染や怪我などの急性の出来事によって引き起こされることが多く、関節の変形や肥満による過度な関節ストレスが原因となることもあります。
以下は犬の関節炎の兆候です。これらの症状を目にした場合、犬がより多くのグルコサミンとコンドロイチンを必要としているサインでもあります。
- こわばりや跛行。(朝や寒い天気の時に増えることがあります)
- 立ち上がったり、降りたりするのが難しい。
- 立ち上がることを嫌がる。
- 階段を登るのが困難。
- 車の乗り降りが難しい。
- 散歩や運動、遊びへの興味を失う。
- 跳んだり歩いたりする時の痛み。
これらの2つの化合物は関節炎の犬にとって必要不可欠ですが、予防措置としても効果的であることを覚えておいてください。
犬に与える上での注意点
先述してきたように、グルコサミンとコンドロイチンは軟骨の重要な構成要素です。これらの化合物は共に使用することで相乗効果が生まれます。
しかし、ある一定の犬には適さない場合があるので注意が必要です。以下に注意すべき状況を以下に示します。
糖尿病の犬
まず、グルコサミンがアミノ糖であることを思い出してください。特に犬が糖尿病の場合は、使用前に獣医に確認することが重要です。
抗凝固薬との併用
また、犬が血液を薄める薬を服用している場合、コンドロイチン硫酸は摂取できません。この化合物は血液を固まりにくくするヘパリン(抗凝固薬)と同じ作用がある為、併用すると出血のリスクがあります。
甲殻類アレルギーを持つ犬
また、犬が甲殻類に対するアレルギーを持っている場合も、グルコサミンやコンドロイチンを摂取できません。犬が甲殻類にアレルギーを持つことは稀ですが、ゼロではありません。
これらの化合物は多くの場合、甲殻類の殻から作られており、アレルギーのある犬にとっては有害となる可能性があります。