犬や猫の体は、エネルギーを作り出す過程で「フリーラジカル」という酸化の副産物を生み出します。フリーラジカルが過剰になると、細胞を傷つけ、老化や病気を引き起こす可能性があります。
これを防ぐ役割を担うのが「抗酸化成分」です。ビタミンやオメガ3脂肪酸などがその代表で、免疫力の向上や心臓、目、関節の健康を守る働きをします。本記事では、ペットにとって重要な抗酸化成分の種類やその効果について詳しく解説します。
抗酸化成分とフリーラジカル
「抗酸化成分」は特定の栄養素を指すものとよく誤解されますが、実際は酸化を抑制する成分全般を指します。では、酸化とは何か?そして、なぜそれが過剰になると有害なのでしょうか?それを理解するには、フリーラジカル(活性酸素)を知る必要があります。
フリーラジカルとは、細胞がエネルギーを作る過程でできる「副産物」や、汚染やストレスなど外部の影響で生じるものです。これらのフリーラジカルは、細胞膜や細胞内の重要な成分である酵素やDNAを傷つけ、その機能を妨げます。
特に、神経系や免疫系の細胞に対してフリーラジカルは非常に有害です。これが原因で、様々な病気が進行したり、老化が早まったりすることがあると考えられています。簡単に言えば、フリーラジカルは体の中で発生する「サビ(酸化)」のようなもので、体の機能を徐々に悪くしてしまうものです。
酸素が含まれているものが有害になり得ると聞くと奇妙に思えるかもしれませんが、身近なケースを考えてみるとこれは自然なことです。例えば、リンゴやバナナを切って数分後に茶色に変わることや、古い写真が色あせること、道路標識が錆び始めることなど、これらはすべて日常生活の中での酸化の例です。
抗酸化成分が不足すると
先述したように、抗酸化成分はフリーラジカル(酸化)を防ぐ効果がります。しかし、犬や猫が十分に抗酸化物質を摂取できていない場合、フリーラジカルによって、以下のような健康問題を引き起こす可能性があります。
- 呼吸器疾患
- 皮膚アレルギー
- 白内障や失明などの目の問題
- 免疫不全や自己免疫疾患
- 癌
- 関節炎や関節の問題
- 心臓病
と言っても極端に心配する必要はなく、フリーラジカルとは、もともと体の中で生成されるものです。実際、適切なレベルであれば、フリーラジカルは役立つこともあります。しかし、体内で過剰にフリーラジカルが発生すると細胞に大きなダメージを与える可能性があります。
フリーラジカルが制御されずに増殖し続けると、酸化ストレスと呼ばれる状態を引き起こします。酸化ストレスは、ペットのDNAに損傷を与え、病気を引き起こします。この現象は「体のサビ」と表現され、体内組織に酸素が過剰にあることが原因です。
酸化ストレスは、がん、自己免疫疾患、老化、白内障、リウマチ性関節炎、心筋梗塞、神経変性疾患などの慢性的および変性的疾患に関係しています。
一定のフリーラジカルは問題ありませんが、過剰になると問題になります。そして、以下のような要因により体内でのフリーラジカルの生成を増加させます。
- 大気汚染
- ストレス
- すべての薬(ノミやダニの薬を含む)
- 工業用化学物質
- 化学ベースの農薬
- タバコの煙
- 炎症
- 放射線(例:X線)
- 加工食品
しかしながら、犬や猫の体は抗酸化物質を自然に生成したり、高い抗酸化値を持つ食材やサプリメントを通じて酸化ストレスを軽減することができます。
抗酸化成分の種類と効果
種類 | 期待できる効果 |
---|---|
ビタミンC | 関節の痛み、傷の治癒、エネルギー、歯茎の炎症に役立ちます。 |
ビタミンE | 免疫システムを強化し、血管の健康をサポートします。 |
セレン | 癌リスクの低減、心臓病の予防、認知機能のサポートなど。 |
ベータカロチン (ビタミンA) | 抗体レベルを維持し、免疫システムを強化します。 |
ポリフェノール | がんや心血管疾患、骨粗しょう症、糖尿病などの病気の予防に役立ちます。 |
ルテイン、 ゼアキサンチン | 目へのダメージを防ぎ、健康な視力をサポートします。 |
オメガ3脂肪酸 | 血管の酸化ストレスを軽減し、適切な循環を促進します。 |
亜鉛 | ビタミンAの抗酸化作用の活性化を促し、過酸化脂質の害を防ぐことで、 アンチエイジング・生活習慣病予防にも効果が期待できます。 |
リコピン | 老化や免疫機能の低下、がん、動脈硬化などを防ぐ効果が期待できます。 |
上記したビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、セレンなどの抗酸化成分は、フリーラジカルの有害な影響を打ち消す効果があります。以下で、抗酸化成分の利点についてもう少し具体的に解説していきます。
目の健康の改善
抗酸化効果を持つルテインとゼアキサンチン(カロテノイド)は、フリーラジカルによる目へのダメージを防ぎ、健康な視力をサポートします。これにより、緑内障や白内障を予防する可能性があります。
心臓の健康促進
抗酸化成分は心臓と循環器系を酸化ストレスから守り、心血管の健康を促進します。ビタミンCとオメガ3脂肪酸は血管の酸化ストレスを軽減し、適切な循環を促進し、セレンは心筋を健康に保ちます。
関節の健康改善
関節の問題、特に関節炎は高齢の犬や猫に一般的です。ビタミンCとEなどの抗酸化成分は、関節の炎症や酸化ストレスを軽減します。ビタミンCはまた、軟骨やその他の結合組織の基礎となるコラーゲンの形成にも不可欠です。
免疫システムのサポート
抗酸化成分は、免疫細胞を酸化ダメージから守り、リンパ球(白血球の一種)の生成を促進することで、免疫システムを強化します。強力な免疫システムは、犬が感染症や病気を防ぐのに役立ちます。
老化防止
高齢の犬や猫は、以前ほど効率的にフリーラジカルを処理できなくなることがあります。抗酸化成分のサポートにより、健康な細胞が維持され、慢性疾患のリスクが軽減される可能性があります。
各抗酸化成分を含む原材料
種類 | 各抗酸化成分が含まれる食材 |
---|---|
ビタミンA | ニンジン、パプリカ、インゲン、卵、魚 |
ビタミンC | パプリカ、ブロッコリー、クランベリー、ラズベリー、インゲン、ジャガイモ |
ビタミンE | ほうれん草、カボチャ、植物油 |
セレン | 玄米、バナナ、レンズ豆、肉類、海産物 |
ベータカロチン (ビタミンA) | ニンジン、サツマイモ、マンゴー、カボチャ |
ポリフェノール | ブルーベリー、ターメリック、ほうれん草、リンゴ、ザクロ |
ルテイン、 ゼアキサンチン | ほうれん草、ケール、卵黄 |
オメガ3脂肪酸 | フラックスシード(亜麻仁)、サーモン |
亜鉛 | ブロッコリー、ハーブ、肉類、海産物、卵 |
リコピン | トマト、スイカ、赤キャベツ |
犬や猫に最適な抗酸化成分は、特に果物や野菜に豊富に含まれています。果物や野菜の鮮やかな色は抗酸化成分が含まれていることを示すため、色が鮮やかであればあるほど、抗酸化成分が豊富に含まれている可能性が高いです。以下では、特に抗酸化成分としてオススメしたい5つの原材料をご紹介します。
フラックスシード(亜麻仁)
フラックスシードは、食物繊維や健康的な脂肪の豊富な供給源としても知られています。フラックスシードに含まれる栄養素は、心臓病、癌、糖尿病のリスクを軽減するのに役立ちます。
ケルプ(海藻)
ケルプは、カロテノイド、フラボノイド、アルカロイドを含み、これらはすべてフリーラジカルと戦うのに役立ちます。また、ケルプは免疫システムをサポートするヨウ素、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンA、B複合体、C、D、Eなどが豊富です。
ベリー類
甘酸っぱいブルーベリーやクランベリーは、非常に高いレベルの抗酸化物質を含んでいます。これらのベリーは、細胞を損傷から保護し、抗炎症作用もあります。さらに、フィトニュートリエントが豊富で、癌などの病気からペットを守るのに役立ちます。
ほうれん草
ほうれん草は、ビタミンA、C、K1、カルシウム、鉄、葉酸などの栄養素が豊富に含まれています。ほうれん草は、ペットの目や心臓の健康に貢献し、癌の予防にも役立つ可能性があります。
サーモン
サーモンはオメガ3脂肪酸とアスタキサンチンが豊富です。サーモンベースの食事は、脳、神経系、心臓、皮膚、被毛の健康に貢献します。