ペットフードの試作品が完成し、品質や食いつきにも問題がない。いよいよ量産を始めたい。

しかし、ここで一つ注意したいことがあります。

試作品をうまく作れることと、同じ品質の製品を大量に作り続けられることは、別の話です。

例えば、100kgの試作では問題がなかったドライフードでも、3トンの量産に切り替えると、粒の大きさや硬さ、水分量にばらつきが出る可能性があります。

さらに、製造そのものは成功しても、袋の密封不良や賞味期限の問題によって販売できない製品が発生することも考えられます。

そのため、ペットフードOEMでは、試作品が完成した後に「量産しても同じ製品を安定して供給できるか」を確認することが重要です。

この記事では、試作から量産への移行で何が変わるのか、どのような準備が必要なのかを、具体例を交えて解説します。

この記事で分かること

  • 試作と量産で、何が変わるのか。
  • 量産を始める前に確認したい5つのポイント。
  • 工場や製造ラインが変わるときに、確認し直す範囲。
  • 年間の製造計画の立て方と、実績に合わせた更新の仕方。
  • 工場へ確認したい10の質問と、量産開始の判断の分け方。

試作と量産は何が違うのか?

まず理解しておきたいのは、試作と量産では製造の目的が異なることです。

試作の主な目的は、目指している製品を作れるか確認することです。

一方、量産では、決められた品質の製品を、必要な数量だけ、継続して製造できることが求められます。

例えば、試作で100kgのドライフードを製造し、良好な結果が得られたとします。

次に3トンを製造する場合、単純に原材料を30倍にすればよいというわけではありません。

製造量が増えることで、主に次の3つが変わる可能性があります。

① 使用する設備が変わる

試作では、小型の混合機や開発用の設備を使うことがあります。

しかし量産では、より大きな設備を使用するため、原材料の混ざり方や加熱・乾燥の条件が変わる場合があります。

例えば、小型の混合機では均一に混ざっていた原材料が、大型の混合機では同じ時間で均一に混ざるとは限りません。

そのため、試作時の設定をそのまま量産設備に当てはめるのではなく、実際の設備に合った製造条件を確認する必要があります。

② 一度に製造する量が変わる

製造量が増えると、製造時間や設備の運転条件も変わります。

ドライフードでは、混合、押出加工、乾燥、油脂の添加などが主な確認対象になります。

例えば、乾燥工程の条件が適切でなければ、製品の水分量や硬さに違いが生じる可能性があります。

また、製造開始直後と終了間際で品質が異なることも考えられるため、完成品の一部だけでなく、製造全体を通して品質が安定しているか確認します。

③ 包装方法が変わる

試作では、少量の製品を手作業で袋詰めすることがあります。

一方、量産では自動包装機を使う場合が多く、袋の密封状態、内容量、賞味期限の印字なども確認しなければなりません。

中身の品質が良くても、包装に問題があれば、保管中や輸送中に製品の品質が損なわれる可能性があります。

つまり、量産では中身だけでなく、包装を終えた販売可能な製品として品質を確認することが大切です。

比較項目試作で確認すること量産で追加確認すること
製造設備目指す製品を作れるか実際の設備でも同じ品質を実現できるか
製造数量少量で問題なく製造できるか大量・連続製造でも品質が安定するか
包装希望する袋に製品を入れられるか実際の包装ラインで密封・印字・内容量を管理できるか

なお、すべての試作が小型設備で行われるわけではありません。最初から量産設備を使って試作する工場もあります。

重要なのは、試作品と量産品が、どの設備・製造条件・包装方法で作られるのかを比較することです。

量産を始める前に確認したい5つのポイント

それでは、実際に量産へ進むかどうかは、何を基準に判断すればよいのでしょうか。

ここでは、OEMの量産移行で確認しておきたい項目を5つに整理します。

ポイント① どのくらい売れる見込みがあるか

最初に確認したいのは、販売予定数量です。

例えば、200g入りのペットフードを毎月10,000袋販売する計画であれば、製品重量に換算すると毎月2トン、年間24トンが必要になります。

ただし、年間24トンの販売を目標にしているからといって、最初から24トンを製造する必要があるわけではありません。

OEM工場には、最低製造数量(MOQ)が設定されている場合があります。

仮に1回の最低製造数量が4トンであれば、毎月2トンずつ発注することは難しいかもしれません。

この場合、2か月分をまとめて製造する方法も考えられます。

しかし、販売が計画どおりに進まなければ、在庫を抱えることになります。製造量を増やすほど、在庫金額や保管費用、賞味期限の管理も重要になります。

そのため、販売予測を立てる際には、確定注文、過去の販売実績、今後の販売見込みを分けて考える必要があります。

確認したい資料:
製品ごとの販売数量予測、確定注文、現在の在庫、工場のMOQ・納期条件。

ポイント② 試作品と同じ品質を作れるか

試作品が完成したら、次は「何をもって同じ製品と判断するのか」を明確にします。

例えば、ドライフードであれば、原材料や栄養成分だけでなく、粒の大きさ、形、色、水分量、硬さなども製品の品質に関係します。

ここで重要なのは、「試作品と同じようにしてください」という依頼だけで済ませないことです。

粒の大きさにはどの程度の差まで認めるのか。水分量はどの範囲で管理するのか。成分はどの方法で測定するのか。

こうした条件を工場と共有し、合格・不合格を判断できる製品仕様書にまとめます。

また、総合栄養食として販売する場合には、栄養面の確認も欠かせません。

日本では、ペットフードの表示に関する公正競争規約で、総合栄養食の表示に関して、対象となる犬・猫の成長段階や、分析試験または給与試験による栄養の裏付けなどが定められています。

試作から量産に移る際に、配合や加工方法が大きく変わるのであれば、従来の分析結果をそのまま使わず、改めて分析し直します。給与試験を根拠に総合栄養食と表示している場合や、配合を変える場合は、同規約の施行規則が定める処方変更の条件と、ペットフード公正取引協議会へ報告している試験の内容も確認します。

確認したい資料:
最終製品仕様書、原材料・配合情報、栄養分析結果、表示内容とその根拠。

ポイント③ 量産設備でも品質が安定するか

製品仕様が決まったら、次に確認するのは製造工程です。

例えば、ドライフードの場合、原材料を混ぜる時間、押出加工の温度や圧力、乾燥条件などによって仕上がりが変わる可能性があります。

ウェットフードでは加熱・密封工程、フリーズドライでは凍結・乾燥工程など、製品の種類によって確認すべきポイントは異なります。

ここで大切なのは、完成した製品だけで判断しないことです。

仮に量産テストで品質の良いサンプルが得られても、それが製造したすべての製品を代表しているとは限りません。

例えば、製造の前半・中盤・後半から製品を採取し、品質に違いがないか調べる方法があります。

また、混合時間や加熱温度などの製造記録も確認することで、製品の品質と製造条件を結び付けられます。

実際に何回テスト製造するか、どの場所からサンプルを採取するかは、製品や工程のリスクに応じて工場と決めます。

確認したい資料:
使用設備の情報、量産時の製造条件、工程記録、製造テストの検査結果。

ポイント④ 包装と賞味期限に問題がないか

量産移行では、製品の中身だけでなく、包装も重要な確認対象です。

例えば、試作段階では問題のなかった製品でも、量産用の包材に変更したことで保存状態が変わる可能性があります。

包材の材質や厚み、密封方法は、酸素や湿気などから製品を保護する性能に関係します。

そのため、量産で使用する袋と包装設備を使い、密封状態や印字などを確認します。

さらに、賞味期限についても根拠が必要です。

日本のペットフード安全法に関する農林水産省の説明では、賞味期限は科学的・合理的根拠に基づいて設定する必要があるとされています。

保存試験や、原材料・製法が同様の製品との、規格(加工工程を含む)の比較などが、その判断材料になります。

また、海外OEMの場合には、製造から日本への輸送、通関、国内倉庫での保管、販売先への納品まで時間がかかります。

仮に製造時点で十分な賞味期間があっても、輸送や在庫保管に時間を要すれば、販売先が求める残存賞味期間を満たせない可能性があります。

確認したい資料:
包材仕様書、密封試験などの包装確認結果、賞味期限の設定根拠、輸送・保管条件。

ポイント⑤ 品質に問題があったときに対応できるか

最後に確認したいのが、製造後の品質管理と記録です。

ペットフードは、製造して終わりではありません。

製造された製品が基準を満たしているか、誰が確認し、どのような条件で出荷を認めるのかを明確にする必要があります。

例えば、日本で販売した製品に異物混入の疑いが見つかった場合を考えてみましょう。

どの工場で、いつ製造した製品なのか。その製品はどの出荷に含まれていたのか。同じ製造ロットの製品がほかの販売先にも納品されているのか。

こうした情報を追跡できなければ、問題が発生した際の調査や対応が難しくなります。

日本では、ペットフードの製造・輸入・事業者への販売(消費者への小売を除く)に関して、法令で定められた記録を2年間保存する必要があります。

海外OEMでは、工場側の製造ロット情報と、自社の輸入・在庫・納品記録をつなげて管理することが重要です。

確認したい資料:
ロット別検査結果、出荷判定記録、製造ロット情報、輸入・納品記録、異常時の対応手順。

工場や製造ラインが変わる場合はどうする?

量産へ移行する際、同じ工場で製造量を増やす場合もあれば、別のラインや別工場へ移す場合もあります。

ここで注意したいのは、配合が同じでも、製造する設備や条件が変われば、仕上がりも変わる可能性があるということです。

では、どこまで確認し直せばよいのでしょうか。

同じ工場・同じラインで製造量を増やす場合

まずは、製造量を増やすことで工程条件に変化があるか確認します。

例えば、製造時間が長くなる場合、設備の運転状態や品質のばらつきに問題がないか確認します。

既存の設備や工程の評価を活用できる場合もありますが、その評価が今回の製造条件をカバーしているかが判断のポイントです。

同じ工場で別のラインに切り替える場合

別の製造ラインでは、設備の能力や加工条件が異なる可能性があります。

そのため、これまでの試験結果をそのまま利用できる部分と、追加確認が必要な部分を分けて考えます。

例えば、配合は同じでも乾燥機が変わる場合には、水分量や乾燥状態などを重点的に確認することが考えられます。

別の工場で製造する場合

別工場への移行では、設備だけでなく、原材料の調達先、作業方法、品質管理体制なども変わる可能性があります。

そのため、製品仕様を共有するだけでは十分とはいえません。

使用する原材料、製造工程、検査方法、包装、出荷判定まで、新しい工場でどのように管理されるか確認します。

ただし、工場を変えるたびに、すべての試験を一律にやり直す必要があるとは限りません。

何が変わるのかを整理し、その変更が品質や安全性に与える影響に応じて、必要な確認・試験を決めることが合理的です。

製造国まで変わる場合には、日本への輸入条件や製品表示についても改めて確認します。

なお、工場選定そのものについては、以下の「海外OEM工場の選定で失敗する会社に共通する3つの視点の欠如」でも解説しています。

年間の製造計画はどう立てればよい?

量産体制が整ったら、次に考えるのが年間の製造計画です。

ここで重要なのは、年間販売予測と、実際に工場へ発注する数量を分けることです。

例えば、200g入りのペットフードを年間120,000袋販売する計画があるとします。

製品重量に換算すると年間24トンです。

しかし、この24トンはあくまで販売予測です。実際に24トンの注文が確定しているわけではありません。

仮に工場の最低製造数量が4トンであれば、まず4トンを製造し、販売状況を確認しながら追加発注する方法も考えられます。

もちろん、実際には製造リードタイム、包材の発注数量、輸送期間なども踏まえる必要があります。

年間計画は、販売実績に合わせて更新する

量産開始後は、当初の販売予測と実績を定期的に比較します。

例えば、毎月10,000袋売れると予想していた製品が、実際には6,000袋しか売れていなかったとします。

この状態で当初の予定どおりに追加製造すれば、在庫が増え続ける可能性があります。

反対に、予想以上に売れている場合は、工場の製造枠や原材料・包材の調達が間に合わず、欠品する可能性があります。

そのため、月次などで販売実績、在庫、今後の販売見込みを確認し、次回の発注数量や時期を見直します。

特に、次の3つを区別すると管理しやすくなります。

年間予測を工場へ共有することは、生産能力や製造枠の相談に役立ちます。

ただし、予測を伝えるだけで製造枠や原材料が確保されるとは限りません。

工場がいつまでに発注数量の確定を求めるのか、製造枠の予約や原材料の確保にどのような条件があるのかも、事前に確認しておくことが重要です。

また、在庫数量だけでなく、残りの賞味期間も確認します。

製品が十分に残っていても、販売先の求める残存賞味期間を満たさなければ、その在庫を予定どおり販売できない可能性があります。

年間計画は一度決めて終わりではなく、販売実績と在庫の状態に合わせて、継続的に更新していくものと考えましょう。

量産を始める前に工場へ確認したい10の質問

ここまでの内容を踏まえ、量産前に工場と確認しておきたい項目をチェックリストにまとめました。

単に「量産できますか」と質問するのではなく、具体的な製造条件や確認資料を提示してもらうことがポイントです。

No.工場・社内に確認する質問確認したい資料
1試作と量産では使用設備が変わりますか?設備情報・製造ラインの概要
21回あたりの最低・最大製造数量はどのくらいですか?MOQ・生産能力・納期条件
3量産時の混合、加熱、乾燥などの条件は決まっていますか?工程条件・製造記録
4実際の量産設備で製造テストを行いますか?テスト計画・検査結果
5最終製品の品質基準と許容範囲は決まっていますか?承認済み製品仕様書
6栄養成分と販売表示を裏付ける資料はありますか?栄養分析・表示の根拠資料
7量産用の袋で密封状態と賞味期限を確認していますか?包材仕様・包装試験・保存試験等
8製造後の検査と出荷判定は誰が行いますか?検査項目・出荷判定基準
9品質問題が発生した場合、製造ロットを追跡できますか?ロット記録・追跡手順
10原材料、設備、包材などを変更する場合、事前に連絡を受けられますか?変更管理・通知・承認手順

このチェックリストは、すべてのペットフードに同じ試験を求めるものではありません。

ドライ、ウェット、フリーズドライなど、製品の種類によって重要な工程は異なります。

また、工場から回答を受け取っただけで確認を終わらせないことも大切です。

例えば「賞味期限は18か月です」という回答であれば、その期限をどのような根拠で設定したのかを確認します。

「量産実績があります」という回答であれば、同じ製品・設備・製造条件での実績なのかを確認します。

回答の内容だけでなく、その回答を裏付ける資料があるかどうかが、量産移行を判断するうえで重要になります。

どの状態になれば量産を開始できるのか?

最後に、量産開始の判断について整理します。

量産前の確認で、すべての項目が一度に解決するとは限りません。

そこで、確認結果を次の3つに分けると判断しやすくなります。

① 量産開始へ進める

製品仕様、栄養、製造工程、包装、品質管理などについて、必要な確認が完了し、工場とブランド側の双方が条件を理解している状態です。

② 追加確認を行ってから判断する

大部分の条件は確認できているものの、一部の検査結果や資料が不足している状態です。

不足項目ごとに担当者と期限を決め、必要な確認が完了してから量産開始を判断します。

③ 量産開始を見送る

製品仕様を満たせない、必要な安全性の根拠が不足している、重大な品質問題が解決されていないなど、量産開始に必要な条件を満たしていない状態です。

この場合は、製造条件や工場選定を見直す必要があります。

重要なのは、試作を何回行ったか、何トン製造できたかという数字だけで判断しないことです。

その製品に必要な品質と安全性を確保し、同じ条件で継続して製造できるかを確認します。

量産で大切なのは「沢山作ること」ではない

ペットフードOEMにおけるスケールアップは、単純に製造数量を増やすことではありません。

試作で完成した製品を、同じ品質で、必要な数量だけ、継続して市場へ供給できる体制を整えることです。

そのためには、販売見込み、製品仕様、製造工程、包装と賞味期限、製造後の品質管理という5つの視点で準備を進める必要があります。

特に海外OEMでは、工場とブランド側の間で製品仕様や製造条件の認識が一致していないと、量産開始後に問題が表面化する場合があります。

試作品が完成した段階で工場と確認事項を整理し、必要な資料をそろえておくことで、量産移行時の不確実性を減らせます。

製品開発から量産、輸入、販売までの全体の流れについては、以下の「海外OEMでペットフードブランドを立ち上げるロードマップ」も参考にしてください。

参考文献・出典一覧

  1. FEDIAF|Guide to Good Practice for the Manufacture of Safe Pet Foods — 混合・製造工程・品質管理に関する指針
  2. FEDIAF|Nutritional Guidelines for Cats and Dogs — 栄養評価や分析に関するガイドライン
  3. ペットフード公正取引協議会|ペットフードの目的について — 総合栄養食の表示と試験による証明
  4. 農林水産省|ペットフード安全法・事業者向け資料 — 賞味期限、表示、届出、記録管理など

※本記事の5つの確認ポイントとチェックリストは、OEMの量産移行を検討するための実務上の整理です。法令上の統一基準ではなく、必要な試験や確認範囲は製品、製造条件、販売国によって異なります。