一般的に私たちは、テクスチャとは食べ物を噛んだときの感触や、咀嚼や飲み込む際の感覚のことを指します。例えば、コーヒーにクリームを入れる理由や、ポテトチップスに欠かせないカリカリの食感などがそれに該当します。テクスチャは、人間だけでなく動物が食べ物をどのように感じるかにも大きく影響を与えます。
テクスチャに影響を与える要素
- 製造の加工条件
- フードの形状
- 脂肪の量と種類
- 栄養成分
- パラタントの種類
1. 製造の加工条件
缶詰(ウェット)、キブル(ドライ)、焼き、セミモイストのいずれのペットフードを製造する際にも、水分、温度、時間、原材料の配合などの様々な加工条件が存在します。というのも、脂肪や食物繊維の割合といった原材料の特性によって製造加工条件が変わるからです。
例えば、原材料の種類によっては、ドライフードを製造するエクストルーダープロセス時の水分吸収や凝集化に影響を与える可能性があります。また、これらはキブルの密度(硬さ)や脂肪の吸収率にも影響を与えます。さらに、時間と温度といった条件も影響を与え、それらが組み合わさることで独自のテクスチャを持つ製品が完成します。
特にドライフードの密度は猫の嗜好性において、とても重要な要素です。理由は明確に判明していませんが、一般的に言われている理論としては、猫は密度が低いキブル(ドライフード)をより小さく割りやすいため好むとされています。
2. フードの形状
ペットフードのドライフードには無数の形状があります。丸いものから、ハート、星、骨、魚の形など、さまざまな形状があります。形状は通常、犬の嗜好性には影響しないと考えられていますが、猫は特定の形状を好むことが以下の研究で示唆されています。
AFBによる研究データ
米国のペットフード用パラタント製造メーカーであるAFBの研究者たちによって、キブルの形状がドライキャットフードの嗜好性に影響を与えるかどうかの調査が実施されました。調査対象は、上の異なる5つのキブルの形状です。
条件
- 全タイプのキブルの直径と厚みを合わせ、水分含有率6.5-9.5%、密度(0.30-0.38g/cm3)内に調整。
- 全形状のキブルは、同じロットから挽いた穀物ベースのミールを使用。
- 全形状のキブルには、5.0%の鶏脂と1.5%の粉末パラタントを使用。
方法
嗜好性を測定するために、AFB社の実験センターで25匹の猫を対象にして、一日一回の嗜好性テストを二日間に分けて実施されました。フードボウルの配置は、それぞれの日で別の場所に配置されました。
結果
結果は、丸形と星形のキブルが最も高い嗜好性を示しました。キブル形状によって嗜好性結果が異なったことから、フードを噛んだり噛み砕いたりしたときの食感が、テクスチャ(嗜好性)に影響を与えるということが分かりました。
そして丸形と星形の比較では、丸形に軍配が上がりました。おそらく丸形キブルは表面積が大きいため、パラタントの塗布率が上がり嗜好性UPに繋がったと考えられました。
他にも、丸形のキブルはエクストルーダーによる成型が簡単で、鋳型への詰まりも少ないだけでなく、摩擦も少なく生産効率にも優れています。
フードの形状とテクスチャは別々のものとして見られがちですが、形状は食べ物を噛んだり噛み砕いたりしたときの食感に関わる為、テクスチャにも影響を与えるのです。
3. 脂肪の量と種類
脂肪の量と種類は、ペットフードのテクスチャに大きく影響します。ペットフード業界では、鶏脂が最も一般的に使用されますが、牛脂、キャノーラ油、ひまわり油、ココナッツ油、魚油も配合成分やコーティングとして使用されます。
高品質の脂肪は、パラタントと併用するだけでも嗜好性を向上させます。犬にとっては、キャノーラ油などの植物油よりも動物性脂肪が一般的に好まれます。(上図)
一方、猫は完全肉食動物であるにもかかわらず、キャノーラ油と動物性脂肪に対する嗜好性の差は見られません。香りや味など他の要因もあるため、この嗜好性の差がテクスチャに起因するのかは明確には分かっていません。
4. 栄養成分
脂肪やパラタントの添加に加え、水分(モイスチャー)やタンパク質などの栄養成分もテクスチャに寄与します。特に、水分は犬の嗜好性にポジティブな影響を与えると考えられています。それを物語るかのように、最近では嗜好性を高めるフードとしてセミモイストフードが話題になっています。
一方、猫は乾燥したキブルを好むと考えられており、ドライキャットフードには液体ではなく粉末パラタントが多く使用される傾向にあります。
5. パラタントの種類
パラタントはテクスチャ(嗜好性)を決定づける最も重要な要素の一つです。ですから、パラタントの種類は、ペットフードのテクスチャに大きな影響を与えます。
液体パラタントはペットフードに独自のウェット感をもたらすことで嗜好性を向上させます。一方、粉末パラタントは、トリーツや缶詰製品にもよく使用され、加工前に添加するとそこまでテクスチャに影響を与えませんが、加熱や調理中に添加すると風味や香りの化合物を生成するとされています。
このように、「味」「香り」「テクスチャ」全ての点において、パラタントの種類が大きく関係してくると言えるのです。