大型犬はその体格を支えるためにしっかりとした筋肉の維持が必要です。また、シニア犬になると筋肉量が減少しやすく、放っておくと運動能力の低下や関節の負担増加につながることもあります。こうした犬たちの健康を守るためには、適切な栄養バランスを考えたドッグフード選びが欠かせません。
特に、筋肉をつけるためには「高品質なタンパク質」だけでなく、「脂肪や炭水化物のバランス」も重要です。では、大型犬やシニア犬のためにどのようなドッグフードを選び、作ればよいのでしょうか?本記事では、筋肉を維持・強化するための栄養素や食材の選び方について詳しく解説していきます。
筋肉の健康にはバランスが大切
犬の筋肉を強く健康に保つためには、タンパク質だけに注目するのではなく、栄養全体のバランスを意識することが重要です。タンパク質は筋肉を作る主要な栄養素ですが、それだけでは筋肉は十分に機能しません。他の栄養素と組み合わせることで、筋肉の成長やエネルギー供給がスムーズに行われるのです。
犬の筋肉維持に必要な栄養素
筋肉を維持・強化するために、以下のような栄養素が重要な役割を果たします。
- タンパク質
筋肉の材料となり、成長や修復を助けます。
- 脂肪
長時間の運動や持久力の維持に必要なエネルギー源となります。
- 炭水化物
短時間の運動時にすぐに使えるエネルギーを供給します。
- ビタミン・ミネラル
筋肉の回復をサポートし、代謝を促進します。
犬によって異なる栄養のバランス
また、犬のサイズや年齢によって、必要な栄養素のバランスは異なります。
- 大型犬
体が大きく筋肉量も多いため、より多くのタンパク質と脂肪が必要となります。
特に関節をサポートするために、コラーゲンやグルコサミンを含む原材料を加えると良いです。
- 小型犬
小型犬は体重が軽いため、運動時に消費するエネルギー量も少ないですが、代謝が速いのが特徴です。
すぐにエネルギーを消費するため、炭水化物を適度に含む食事がエネルギー補給に役立ちます。
ただし、脂肪が多すぎると肥満になりやすいので、バランスを考えることが大切です。
- 成長期の子犬
筋肉の発達が活発な時期で、タンパク質をしっかり摂取する必要があります。
ただし、エネルギーも大量に必要なため、炭水化物と脂肪をバランスよく含む食事が理想的です。
- シニア犬
筋肉量が減少しやすいため、良質なタンパク質を確保しつつ、脂肪の摂りすぎには注意が必要です。
関節を守るための栄養(オメガ3脂肪酸、グルコサミンなど)も必要となります。
このように、犬の筋肉を健康に保つには、特定の栄養素に偏るのではなく、犬の年齢・サイズ・運動量に応じたバランスの良い食事を選ぶことが大切です。タンパク質だけでなく、脂肪・炭水化物・ビタミン・ミネラルもしっかり摂ることで、筋肉の成長やエネルギー供給がスムーズに行われます。
高品質で消化しやすいタンパク質
とは言っても、タンパク質は筋肉の成長に欠かせない最も重要な栄養素の一つです。特に、大型犬は体を支えるために小型犬よりも多くのタンパク質を必要とします。また、シニア期に入ると筋肉量が減少しやすくなるため、健康を維持するためにも適切なタンパク質の摂取が重要となります。
食事に含まれるタンパク質は筋肉量を維持し、成長を促進します。しかし、筋肉の健康を考えるうえで重要なのは、タンパク質そのものだけではなく、その構成要素であるアミノ酸のバランスです。
アミノ酸はタンパク質を構成する基本要素であり、犬の体内で筋肉を形成するうえで不可欠です。特に、消化器官の粘膜修復にも関与しており、高品質なタンパク質を摂取することで、腸内環境のサポートや回復力の向上にもつながります。
タンパク質に含まれるアミノ酸は20種類ありますが、そのうち犬の体内で合成できるのは半分のみです。残りの10種類の必須アミノ酸は、食事から摂取する必要があります。犬にとって必要な10種類の必須アミノ酸は以下の通りです。
- アルギニン:疲労の原因物質になるアンモニアを除去、免疫力の向上。
- ヒスチジン:免疫&消化機能向上の為にヒスタミンを生成。
- イソロイシン:エネルギー源または筋肉の修復を補助。
- ロイシン:筋肉の増加や損傷抑制、肝機能のサポート。
- リシン:カルシウムの吸収とコラーゲンの形成をサポート。
- メチオニン:肝機能やエネルギー代謝を促進。
- フェニルアラニン:精神安定、食欲抑制、鎮痛効果。
- スレオニン:タンパク質のバランスと健康な皮膚や被毛を維持。
- トリプトファン:精神安定と睡眠の質を上げるセロトニンを生成。
- バリン:筋肉の代謝と修復をサポート。
これらのアミノ酸は、肉、魚、卵、豆類などの食品に含まれており、すべての必須アミノ酸をバランスよく含む食品は「完全タンパク質」と呼ばれます。
また、タンパク質以外にも筋肉の健康をサポートする栄養素があります。その一つがL-カルニチンです。L-カルニチンは筋細胞が脂肪をエネルギーとして利用するのを助け、筋肉の成長と維持に貢献します。
犬の健康を維持し、筋肉をしっかりと支えるためには、高品質なタンパク質によって必須アミノ酸をバランスよく摂取することが不可欠です。特に、大型犬やシニア犬には、より消化吸収の良いタンパク質を意識的に与えることが重要です。
筋肉をつける為の原材料とは
犬の筋肉を強くし、健康を維持するためには、まずタンパク質を見直すことが重要なポイントとなります。その際に意識すべきキーワードは「生肉の使用」です。
生肉は肉粉末製造で必要な高温調理を必要としません。生肉は最小限の加工で、一度だけ調理されるため、栄養素が保持され、犬に最適な栄養価が提供されます。加えて、加工が少ないため、消化が容易で筋肉への変換が最適化されます。
また、2022年に発表されたAnimalsというジャーナルの研究によると、生肉だけを使用したキブル(粒)は、肉粉末だけ、または両方の組合せを使用したものと比較して、必須アミノ酸、分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)、タウリンの含有量が高いという結果が出ました。
また、多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸)も多く含まれているだけでなく、消化性においても一番優れていることが分かりました。これらの結果により、生肉を使用したドッグフードが好ましいとされています。
動物性タンパク質の種類と特徴
以下に、代表的な肉の種類と、それぞれに多く含まれるアミノ酸を紹介します。
- 鶏肉:ほぼすべてのアミノ酸をバランスよく含み、特にリシン(Lysine)が豊富。
- ラム肉:バリン(Valine)とイソロイシン(Isoleucine)を多く含む。
- 豚肉:ヒスチジン(Histidine)が最も豊富。
- 七面鳥:メチオニン(Methionine)が多く含まれる。
- 牛肉:アルギニン(Arginine)を多く含み、鶏肉に次いでアミノ酸が豊富。
特に鶏肉は、皮や骨、軟骨を含めることでアミノ酸の含有量がさらに高まります。人間がよく食べる「鶏の胸肉」は意外にもアミノ酸含有量が少なく、むしろ筋肉、腱、スジ、軟骨などの部位に多くの高品質なタンパク質が含まれています。