「オメガ3配合」を訴求するペットフードは近年増加していますが、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)をひとくくりに扱う設計は、もはや競合差別化の壁にぶつかりつつあります。両者は同じ長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)ですが、炭素鎖長・代謝経路・主に作用する組織・酸化安定性のすべてで挙動が異なります。

さらに、魚油・藻類油・クリルオイル・亜麻仁油といった原材料ごとに、配合上限・吸収率・サプライチェーンリスクが大きく変わるため、レシピ設計の判断軸を持っているかどうかが、最終製品の機能訴求と原価構造を左右します。

本記事は、ペットフードメーカー・開発責任者を対象に、EPAとDHAの機能特性の違い、原材料別の特性、規制基準の現在地、そしてOEM現場での配合設計実務までを、一次資料に基づいて整理します。

この記事で分かること

  • EPAとDHAの分子・代謝経路の違いと、それぞれが得意な生理機能。
  • 犬猫における皮膚・関節・認知・腎機能などのエビデンスの現在地。
  • 魚油/藻類油/クリルオイル/亜麻仁油・エゴマ油の比較と使い分け。
  • AAFCO・FEDIAF・NRC・ペットフード公正取引協議会の基準動向。
  • OEM配合設計における酸化安定性・添加形態・保存管理の実務ポイント。
  • グローバル調達ネットワーク視点での原料選定の考え方。

EPAとDHAは「同じオメガ3」ではない

結論: EPAとDHAは炭素鎖長および二重結合数が異なる別個の脂肪酸であり、生体内での機能も異なります。配合設計では「合計mg」ではなく「内訳と比率」で評価することが基本です。

分子レベルの違い

EPAとDHAはどちらも長鎖n-3系脂肪酸ですが、構造が異なります。EPAは炭素数20・二重結合5個、DHAは炭素数22・二重結合6個を持つ脂肪酸です。

体内では、ALA(α-リノレン酸)からEPAやDHAを合成する経路があります。しかし犬では、DPAからDHAへ変換する最終段階が進みにくく、ALAを多く与えてもDHAが十分に蓄積しにくいことが知られています。猫ではさらに、ALAをEPA/DHAへ変換する酵素活性が低いため、変換効率は犬よりも限定的です。

そのため、犬猫の配合設計では「ALAを増やせばEPA/DHAも補える」と考えるのは適切ではありません。EPAやDHAの機能を訴求する場合は、ALAではなく、EPA/DHAそのものの配合量や比率を確認する必要があります。

なお、ALAにはEPA/DHAの前駆体としてだけでなく、独自の免疫調節作用を持つ可能性も示されています。ただし、この点はまだ研究段階であり、製品訴求では慎重に扱うべきです。

機能特性の違い

EPAは細胞膜から遊離後、シクロオキシゲナーゼ/リポキシゲナーゼ経路などを介して、3系プロスタグランジンや5系ロイコトリエン、レゾルビンE系などの脂質メディエーターの前駆体となります。これらはアラキドン酸由来メディエーターとは異なる炎症調節作用を示し、特にレゾルビンE系は炎症消退に関与します。

一方、DHAは神経細胞・網膜の細胞膜リン脂質の主要構成成分であり、シナプス機能、視覚伝達、子犬・子猫の脳発達に関わる重要な脂肪酸として知られています。これらの知見は、NRC(2006)やBauer(2011)でも整理されており、EPA/DHAを分けて機能訴求する際の出発点となります。

ポイント

レシピ設計でEPA:DHA比を意識的に設計すると、「関節サポート=EPA寄り」「子犬向け脳発達/シニア認知サポート=DHA寄り」のように、訴求ポジショニングを精緻化できます。比率を曖昧にした「オメガ3xxxmg」表示は、競合との横並びを生みやすい設計です。

犬猫における機能エビデンスの整理

結論: EPA/DHAの機能エビデンスは領域ごとに成熟度が大きく異なります。犬の関節領域では比較的強い臨床エビデンスがあり、皮膚・被毛では一定の介入試験とレビューがあります。認知・腎機能については、犬猫差・ライフステージ・疾患ステージを踏まえた慎重な訴求設計が必要です。

関節(変形性関節症 / OA)

犬の変形性関節症(OA)では、EPA/DHAの補給によって関節の状態や歩行に良い変化が見られた研究があります。

例えば、Roush et al.(2010)のランダム化二重盲検のプラセボ対照試験では、跛行、関節の状態、体重のかけ方などに改善が報告されています。また、Mehler et al.(2016)では、赤血球膜中の脂肪酸バランスが変化し、臨床症状の改善も示されています。

さらに2021年の系統的レビューでは、犬や猫を対象とした複数のランダム化試験が整理され、犬のアレルギー性皮膚炎、被毛トラブル、乾性角結膜炎、弁膜症、犬猫のOAなどでEPA/DHAの有用性が示唆されています。

皮膚・被毛

EPA/DHAは、犬の皮膚や被毛の健康維持にも関わる成分として研究されています。ただし、効果の出方は、使用する原料の種類、配合量、犬種、試験期間によって異なるため、結果の解釈には注意が必要です。

最近の犬試験では、雄ビーグル犬にクリルオイルを配合したスナックを8週間与えたところ、被毛状態、フケ、抗酸化指標、炎症関連マーカーに良い変化が見られました。

  • 被毛の理想毛比率:50% → 72.22%(対照群では55.56% → 50%に低下)
  • フケ指標:Day 56で対照群との有意差(p < 0.01)
  • 血清中の抗酸化酵素群(SOD、CAT、GPx):いずれも有意上昇(p < 0.01)
  • 炎症に関わる指標:TNF-α 50.86%減、IL-1β 18.45%減、IL-8 33.55%減

ただし、この試験は雄ビーグル犬を対象とした短期試験であるため、すべての犬種やすべてのEPA/DHA製品に同じ結果が当てはまるとは限りません。

認知・脳発達

DHAは、子犬・子猫の脳や網膜の発達に重要な脂肪酸です。母犬・母猫の妊娠期や授乳期にEPA/DHAを補給したり、離乳後にDHAを強化した食事を与えたりすることで、視覚、記憶、学習能力をサポートする可能性が示されています。

一方、シニア犬の認知機能低下症候群(CDS)に対するDHA補給については、まだ研究が進められている段階です。そのため、訴求では「認知機能の改善」と断定せず、加齢に伴う認知機能の健康維持をサポートするという表現が適切です。

心血管

犬の心疾患の栄養管理では、EPA/DHAが補助的に使われることがあります。ただし、効果の出方は犬種や病態によって異なるため、一律に「心臓に良い」と訴求するのは避けるべきです。

また、ヒトで報告されている心血管分野の研究結果を、そのまま犬に当てはめることには限界があります。そのため、製品設計では、疾病の改善・治療を想起させる表現は避け、心血管の健康維持を栄養面からサポートするという表現に留めるのが適切です。

腎機能(慢性腎臓病 / CKD)

猫の早期CKD(慢性腎臓病)を対象とした小規模な予備研究では、DHAを多く含む魚油を28日間与えることで、血中の脂肪酸バランスや腎機能関連マーカーに改善が見られたと報告されています。具体的には、アラキドン酸(AA)の低下、DHA濃度やDHA:AA比の上昇、SDMA・UPC・尿中NAG指数の改善などです。

ただし、この研究は多発性嚢胞腎(PKD)由来の早期CKD猫を対象としたpilot studyであり、対象数や条件が限られています。そのため、すべてのCKD猫に同じ効果が期待できるとまでは言えません。

一方、犬のCKDではEPA/DHAに関する研究蓄積が比較的多く、腎臓への負担軽減や腎機能維持に役立つ可能性が示唆されています。

ポイント

機能訴求は「論文があるから書ける」ではなく、「効能断定にならない範囲で読み手に正確に伝わる」表現設計が要です。企画段階で、訴求文・パッケージ表記・セールストークまでを束で監修する設計を推奨します。

原材料別の特徴比較

結論: 原材料ごとにEPA/DHA含有率・分子形態・酸化安定性・サステナビリティ評価が異なります。価格だけで比較すると、機能訴求とサプライ安定性の両方を取り逃します。

原料ソース主成分分子形態含有率の目安強み留意点
魚油EPA + DHAトリグリセリド(TG)EPA 18%/DHA 12%前後
(標準的精製魚油の参考値)
実績豊富、
コスト効率、
エビデンス蓄積◎
酸化感受性高、
海洋資源持続性、
重金属管理が必要
藻類油DHA中心(製品によりEPA含有も)TG/FFADHA 35%以上を
規格とする製品も流通
海洋資源依存なし、ベジタリアン訴求可、重金属混入リスク低EPA含有が限定的な製品が多い、
コスト高、
安全性根拠は個別サプライヤー規格・各国制度を要確認
クリルオイルEPA + DHAリン脂質(PL)結合型+アスタキサンチン含有EPA 約20〜26%/
DHA 約12〜15%
(製品差大)
PL型の吸収経路と抗酸化色素同伴が特徴価格高、
南極海依存、
アレルギー懸念
亜麻仁油α-LNA(C18:3n-3)TGALA 50%以上コスト安、植物由来犬でDHA変換律速、
猫で変換効率低、
EPA/DHAソースとして不適
エゴマ油α-LNATGALA 60%前後国内供給、植物由来同上、
酸化感受性極めて高

魚油

最も流通量が多く、エビデンス蓄積も最大です。アンチョビ・サーディン由来の小型魚油は重金属蓄積リスクが相対的に低く、サーモン由来は色調・嗜好性で評価される一方、自然由来の場合は脂肪酸組成のバラツキをロット単位で確認する設計が推奨されます。

精製品(ethyl ester型またはTG型の再エステル化品)は遊離脂肪酸型より安定しますが、工程コストが上乗せされます。OEMでは精製グレードと要求品質・コストのトレードオフを明示して原料スペックを決定するのが実務的です。

藻類油

Schizochytrium sp.は、DHAを多く含む油を生産できる微細藻類です。魚を原料としないため、海洋資源への負荷を抑えられるサステナブルなDHA源として注目されています。DSM-firmenich、Veramaris、Corbionなどの大手サプライヤーも、藻類油の活用による天然魚資源の保護効果を訴求しています。

ただし、規制面では注意が必要です。EUでは、Schizochytrium sp. 由来油の一部について、人用食品のNovel Foodとして使用範囲が拡大されています。しかし、これはあくまで人用食品での扱いであり、ペットフードや飼料原料として使えるかどうかは別問題です。実際に採用する場合は、EUの飼料関連規制、販売国ごとの制度、サプライヤーの規格書を確認する必要があります。

米国でも、Schizochytrium sp. 由来DHA藻類油に関するFDA GRAS Noticeがありますが、その一部はFDAによる評価が途中で終了しています。そのため、「FDAが安全性を確認した」とは言えません。安全性や規制適合性を確認する際は、各サプライヤーの資料や、販売国の食品・飼料規制、公的評価資料を別途確認する必要があります。

また、Schizochytrium sp. 由来油はDHAを多く含む一方で、EPA含有量が低い製品が多いです。そのため、関節サポートなどEPAを重視する設計では、魚油などEPA源との併用が現実的です。

クリルオイル

クリルオイルは南極オキアミ由来の油で、EPA/DHAがリン脂質に結合した形で含まれている点が特徴です。犬の試験では、EPA/DHAを含むクリルオイル配合スナックを8週間与えることで、被毛状態、皮膚の状態、炎症関連マーカーに良い変化が見られたと報告されています。

ヒトでは、リン脂質型EPA/DHAの方が体内に取り込まれやすいという報告があります。一方で、近年は「分子形態よりも、最終的にどれだけEPA/DHAを摂取したかの方が重要」とする見方もあります。そのため、ヒトの研究結果をそのまま犬猫に当てはめることには注意が必要です。

実用面では、クリルオイルはリン脂質型であることに加え、アスタキサンチンを含む点も特徴です。アスタキサンチンは脂質の酸化を抑える働きが期待されるため、原料の差別化ポイントとして活用できます。

亜麻仁油・エゴマ油

亜麻仁油などの植物油には、ALA(α-リノレン酸/α-LNA)が多く含まれます。ALAはオメガ3脂肪酸の一種ですが、犬猫ではALAからEPA/DHAへの変換効率が高くありません。特に犬ではDHAへの最終変換が進みにくく、猫では変換に関わる酵素活性が低いため、ALAを多く含む植物油を使っても、EPA/DHAを十分に補う設計にはなりにくいです。

そのため、植物油は「植物由来オメガ3」素材としては有用ですが、EPA/DHAの機能を訴求する場合は、魚油・クリルオイル・藻類油などのEPA/DHA源とは分けて考える必要があります。

なお、ALA自体にも独自の免疫調節作用がある可能性は示されていますが、現時点では研究段階です。

各規制・基準の現在地

結論: EPA + DHAは成長期・繁殖期で必須栄養素として位置付けられ、成犬・成猫維持期は「未確定」のままです。維持期の表示設計は、機能訴求と科学的整合性を両立させる工夫が必要です。

AAFCO

項目AAFCOでの扱い
犬:成長期・繁殖期EPA + DHA合計 0.05% DM
(10 mg/100 kcal)以上
猫:成長期・繁殖期EPA + DHA合計 0.012% DM
(3 mg/100 kcal)以上
成犬・成猫維持期未確定(必須性は認識されているが定量基準未確立)
犬:n-6:n-3比上限30:1。(主要n-3脂肪酸ALA・EPA・DHA等の合計を分母に。ライフステージごとの適用はAAFCO原典参照)

AAFCOの犬猫用栄養基準では、成長期・繁殖期のフードについて、EPA+DHAの基準値が示されています。代表的には、犬で0.05% DM、猫で0.012% DMが参照されます。

ただし、実際に製品表示や処方設計に使う場合は、必ず最新のAAFCO Official Publicationや、販売国・地域の基準を確認する必要があります。

FEDIAF(2025年版)

FEDIAFの栄養ガイドラインは、欧州のペットフード業界で広く参照される栄養基準です。2026年4月時点では、2025年版が公開されています。

EPA/DHAについては、AAFCOと同じく、主に成長期・繁殖期の犬猫向けに推奨量が示されています。一方、成犬・成猫の維持期では、EPA/DHAそのものよりも、まず必須脂肪酸であるリノール酸(LA)や、猫ではアラキドン酸(AA)などのn-6系脂肪酸が基本になります。

そのうえで、EPA/DHAはライフステージ、エネルギー密度、脂肪酸バランスを踏まえて、目的に応じて設計する必要があります。

NRC(2006年版)

NRC 2006(Nutrient Requirements of Dogs and Cats)は、EPA + DHAについて以下のように示しています。

  • 犬(成長期・成犬・繁殖期):EPA + DHAの安全上限 2.8 g/1,000 kcal
  • 猫:EPA/DHAの安全上限は設定されていない

犬では、EPA/DHAの高配合設計を検討する際に、2.8g/1,000kcal という値が参考にされます。研究設計や、製品化前の安全性確認で使いやすい目安です。

一方、猫ではEPA/DHAの明確な安全上限が設定されていません。そのため、高配合フードやサプリメントを併用する場合は、EPA/DHAの総摂取量だけでなく、ビタミンE量、血液凝固への影響、既存疾患の有無なども含めて慎重に確認する必要があります。

ペットフード公正取引協議会

日本では、ペットフード安全法や公正競争規約により、商品名、対象動物種、原材料名、賞味期限、原産国名、事業者情報などの表示ルールが定められています。

一方で、EPAやDHAの具体的な含有量を表示することは、現時点では義務ではありません。

ただし、B2B資料やプレミアム価格帯の商品、機能性を訴求する製品では、総オメガ3量だけでなく、EPA量・DHA量を分けて示すと、処方意図が伝わりやすくなります。たとえば「mg/100kcal」や「1日給与量あたり」で表示すると、消費者が製品を評価しやすくなります。

ただし、このような表示方法が業界全体の標準になっているとまでは言えません。そのため、「業界スタンダード」と断定するのではなく、差別化のための表示設計として有効と表現するのが安全です。

ポイント

製品ラベルで「総オメガ3量」と「EPA量」「DHA量」を分離表示する設計は、専門家読者・大手バイヤー・顧客の信頼を獲得しやすい構造になります。

OEM配合設計の実務

結論: EPA/DHAは栄養設計上の重要性が高い一方で、非常に酸化しやすい成分です。そのため、配合量だけでなく、製造工程や保存期間を通じた酸化管理が、製品価値と機能訴求の信頼性を左右します。

酸化指標は3つセットで見る

EPA/DHAを多く含む海洋油では、酸化状態を確認するために、PV、p-AV、TOTOXの3つの指標がよく使われます。

  • PV(過酸化価)は、酸化の初期段階を見る指標です。
  • p-AV(p-アニシジン価)は、酸化が進んだ後にできる成分を見る指標です。
  • TOTOXは、PVとp-AVを組み合わせて、酸化の進み具合を総合的に見る指標です。

GOEDの基準では、海洋油の出荷時規格として、以下がセットで示されています。

  • 過酸化価(PV):≦ 5 meq/kg(初期酸化・一次酸化生成物の指標)
  • p-アニシジン価(p-AV):≦ 20(進行酸化・二次酸化生成物の指標)
  • TOTOX(= 2 × PV + p-AV):≦ 26(一次・二次酸化の総合指標)

一方で、最終製品では製造工程や保存期間中に酸化が進む可能性があります。そのため、OEM現場ではPV<10 meq/kg程度を実務上の許容範囲とするケースも見られます。ただし、PVが5を超える場合は酸化が進み始めている可能性があるため、p-AVやTOTOXとあわせて総合的に判断することが重要です。

また、同じEPA/DHAでも、カプセル、シロップ、粉末、キブル配合など製剤・製品形態によって酸化の進み方は異なります。したがって、EPA/DHA配合製品では、原料受け入れ時だけでなく、製造後から賞味期限までの間もPV・p-AV・TOTOXを継続的に管理する設計が必要です。

酸化対策の実務ポイント

  1. 抗酸化剤併用設計: 天然系(混合トコフェロール、ローズマリー抽出物、アスコルビン酸パルミテート)と合成系(BHA、BHTは規制地域に注意)を、ペット種・販売地域・クリーンラベル要件に応じて組み合わせます。
  2. 包装による酸素遮断: 多層フィルム(EVOH層)、窒素置換、酸素吸収剤の併用が有効です。
  3. 製造ロット設計: 開封後劣化を見越した小袋化、温湿度管理されたロット保存の設計。

OEM現場での落とし穴

ドライフードでは、押出加工後にEPA/DHAをコーティングで加えることで、加熱によるダメージを抑えやすくなります。ただし、噴霧後の乾燥時間や冷却条件によっては酸化が進むため、後添加でも酸化管理は必要です。

ジャーキーやトリーツでは、EPA/DHAを生地に直接練り込むことで嗜好性を高められる可能性があります。一方で、水分活性(aw)が高い製品では、酸化だけでなく微生物リスクも管理する必要があります。

また、「天然トコフェロール添加」と表示されていても、それだけで酸化安定性が十分とは限りません。実際には、添加量、添加タイミング、他の抗酸化剤との組み合わせまで含めて設計することが重要です。

訴求設計の落とし穴と差別化ポイント

結論: 「オメガ3配合」訴求はもはや差別化要因にならず、EPA・DHA別表示/原材料明示/規格根拠の併記が次世代の競争条件に近づきつつあります。

代表的な落とし穴

  • EPA + DHA合計のみ表示 → 専門家層から「機能ターゲットが不明」と判断される。
  • 「DHAたっぷり」だが配合量・原料未開示 → 比較不能、検索の引用候補から外れやすい。
  • 植物由来オメガ3 = EPA/DHA同等 という誤認を誘発する表現 → コンプライアンス・消費者誤認リスク。

差別化ポイント

  • 原材料の明示(例:「アンチョビ由来精製魚油」「藻類由来DHA」)
  • mg/100 kcalまたは1日給与量あたりのmg表記
  • AAFCO/FEDIAF/NRC基準との関係の明示(例:「成長期推奨量の○倍」)
  • 酸化安定性のロット試験PV/p-AV/TOTOXデータの開示(B2B資料レベル)

調達ネットワーク視点での原料選定

結論: EPA/DHA原料は、供給元が限られるため、調達リスクが高い素材です。そのため、特定の国・地域・原料に依存せず、魚油、クリルオイル、藻類油など複数の選択肢を組み合わせておくことが重要です。

EPA/DHA原料は供給元が限られるため、特定地域や特定原料に依存しない設計が重要です。魚油、クリルオイル、藻類油などの選択肢を、製品コンセプトや価格帯に応じて検討する必要があります。

当社は、EPA/DHAオイルを直接調達する立場ではありませんが、ニュージーランド/カナダ/オーストラリア/タイ/欧州などのOEMメーカーとのネットワークを活用し、各メーカーが対応可能な原料・製造形態・品質基準を踏まえたOEM先選定を支援しています。

たとえば、魚油を活用したドライフード、クリルオイル配合のトリーツ、藻類由来DHAを使ったサステナブル訴求製品など、製品コンセプトに応じて適したOEMメーカーを検討できます。

OEMでの原料選定は、機能訴求 × 価格帯 × サステナビリティ訴求 × サプライ安定性の4軸で考えることが重要です。単一ソースに依存すると、海洋資源価格の変動、地政学リスク、規格変更などにより、供給リスクが高まります。そのため、初期設計の段階から、主原料に加えて代替可能な原料やOEM先を検討しておくことが実務的です。

FAQ

Q1. EPA + DHA合計と、EPAとDHAそれぞれの数値、どちらでラベル表示するのが良いですか?

A. 日本での義務表示としてはいずれでも問題はありませんが、EPAとDHAの内訳を分けて表示するのが機能訴求の精度向上につながります。

総オメガ3量だけの表示は、競合差別化と機能エビデンスの伝達の両面で不利に働く可能性があります。

Q2. 藻類油はDHAが豊富ですが、EPAが少ないので関節サポート訴求には不向きですか?

A. 現在流通している藻類油製品の多くはDHA主体でEPA含有が低いため、関節サポートを主訴求にする場合は魚油との併用または高EPA系藻類株の採用が現実的です。

完全植物由来訴求が必須でない場合は、魚油主体+藻類油でEPA/DHA比を最適化する設計が選択肢になります。

Q3. 亜麻仁油配合だけで「DHA源」と表示できますか?

A. 基本的には不適切です。亜麻仁油に多く含まれるのは、DHAではなくALA(α-リノレン酸)です。ALAはEPA/DHAの前駆体ですが、犬猫ではEPAやDHAへの変換効率が高くありません。

特に犬ではDHAへの変換が進みにくく、猫では変換に関わる酵素活性が低いため、亜麻仁油をEPA/DHA源として扱うのは適切ではありません。

そのため、表示・訴求では「DHA源」ではなく、「植物由来オメガ3(ALA/α-LNA)」として表現し、EPA/DHAの訴求とは分けて考える必要があります。

Q4. クリルオイルのリン脂質型は本当に吸収率が高いのですか?

A. ヒトの一部研究では、リン脂質型のEPA/DHAは体内に取り込まれやすい可能性が報告されています。ただし近年は、吸収率の違いよりも、最終的にどれだけEPA/DHAを摂取したかの方が重要だとする見方もあります。また、ヒトの結果をそのまま犬猫に当てはめることはできません。

そのため、クリルオイルは「吸収率が高い」と断定するより、リン脂質型EPA/DHAに加え、アスタキサンチンを含む差別化原料として整理するのが安全です。

Q5. 日本市場でEPA・DHA量は表示した方がよいですか?

A. 義務表示ではありませんが、B2B商談・専門家向け訴求・プレミアム帯では、EPA/DHAを分けて開示する方が処方意図を伝えやすくなります。表示する場合は分析値・設計値・単位(mg/100 kcalまたは1日給与量あたりmg)・給与量との関係を整理し、誤認を招かない表現設計が必要です。

まとめ

EPAとDHAは「同じオメガ3」ではなく、炭素鎖長・代謝経路・標的組織・原材料適性が異なる長鎖n-3系脂肪酸です。レシピ設計では、総オメガ3量だけでなく、EPA/DHA内訳・原材料・酸化安定性・n-6:n-3バランス・ビタミンE設計を合わせて評価する必要があります。

以下に本記事の要点を整理します。

  1. EPAとDHAは分けて考える
    EPAとDHAは同じオメガ3脂肪酸ですが、体内での役割は異なります。EPAは主に炎症調節に関わる成分、DHAは脳や網膜の構造を支える成分です。そのため、「EPA+DHAの合計量」だけでなく、それぞれの内訳や比率を見て設計することが重要です。
  2. 犬猫ではALAからEPA/DHAを十分に作れない
    亜麻仁油やエゴマ油に含まれるALAは、EPA/DHAの前駆体です。しかし、犬ではDHAへの変換が進みにくく、猫では変換に関わる酵素活性が低いため、ALAだけでEPA/DHAを十分に補うことはできません。植物油は「植物由来オメガ3」としては有用ですが、「EPA/DHA源」とは分けて考える必要があります。
  3. 原料ごとの特徴を理解して選ぶ
    魚油はエビデンスが多く、コスト面でも使いやすいEPA/DHA源です。藻類油はDHAを多く含み、サステナビリティ訴求に向いています。クリルオイルはリン脂質型EPA/DHAとアスタキサンチンを含む点が特徴です。植物油はALAが中心で、EPA/DHAとは役割が異なります。製品設計では、機能訴求、価格帯、サステナビリティを組み合わせて原料を選ぶことが重要です。
  4. 規制基準はライフステージで異なる
    AAFCOやFEDIAFでは、主に成長期・繁殖期の犬猫向けにEPA/DHAの基準が示されています。一方、成犬・成猫の維持期では明確な定量基準がない場合もあります。また、NRC 2006では犬にEPA/DHAの安全上限が示されていますが、猫では同様の上限は設定されていません。
  5. EPA/DHAは酸化管理まで含めて設計する
    EPA/DHAは酸化しやすい脂肪酸です。PV、p-AV、TOTOXをセットで確認し、抗酸化剤、包装設計などを組み合わせることで、賞味期限まで品質を維持する必要があります。EPA/DHA製品では、配合量だけでなく、酸化管理まで含めた品質設計が機能訴求の信頼性を左右します。

当社は、ニュージーランド・カナダ・オーストラリア・タイ・欧州などのOEMメーカーとのネットワークを活かし、製品コンセプト、機能訴求、コスト、サステナビリティ、サプライ安定性を踏まえたOEM先選定をご支援します。

EPA/DHAを活用したペットフード開発、配合設計の方向性、対応可能なOEMメーカーの選定、酸化安定性を考慮した製品設計をご検討のメーカー様は、以下よりご相談内容をお寄せください。

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