人間と同じくペットも食べ物の味に大きな関心を持っています。お皿にペットフードを与える時をイメージしてみて下さい。犬がヨダレを垂らしてお皿の前でお座りしてまだかまだかと待っていたり、猫が缶を開ける音に反応して駈け寄ってきたり彼らも同じなのです。

私たち人間は、ペットの健康な生活を支えるために必要な栄養を与えるだけでなく、ペットが食事を楽しめるようサポートしなければなりません。

ほとんどの人がどれほど健康に良くても毎朝小麦胚芽の食事を取りたくないように、ペットも健康だけど味の悪いフードを毎日食べたくありません。

ペットの食欲を促進するのは、ペットフードにおけるパラタントが重要な鍵となります。本記事では、パラタントについて、そしてペットフードを製造する上での重要性について解説します。

パラタントとは?

パラタントは、ペットフード、トリーツ、サプリメントをより美味しくするために特別に設計された成分のことで、ペットが必要な栄養素を摂取できるように嗜好性を高めてくれます。

仮に栄養価の高いペットフードを与えてみても、ペットが(嗜好性が低く)食べるのを拒否したり、継続して食べてくれなければ、そのペットフードの栄養価を提供することはできません。

言い換えれば、パラタントはペットが食事を楽しむための重要な役割を果たし、健康的な食習慣を促し、必要な栄養素を摂取する手助けをしてくれます。

そして、ペットは人間と同様に、味と匂いに大きく依存して食べ物の嗜好性を判断することから、以下の点においてパラタントはペットフードの嗜好性を高めてくれます。

パラタントの効果

  • 味の向上
    パラタントは、ペットフードの味(甘味、塩味、うま味)を向上させることができます。また、ペットにとって魅力的で特別な風味を追加することが出来ます。
     
  • 香りの向上
    特に嗅覚が非常に鋭い犬にとって香りは非常に重要です。パラタントはペットフードの香りを大幅に改善し、最初の一口を食べる前から嗜好性を高めてくれます。
     
  • タンパク質含有量の増加
    動物性タンパク質由来のパラタントにはアミノ酸が含まれており、甘味やうま味が向上します。さらに、パラタントは、ペットが最適な健康を維持するために必要なタンパク質をもたらします。

元々、ペットフードのパラタントは「ダイジェスト」と呼ばれていました。ダイジェストは酵素分解されたタンパク質をドライフードに加え、肉の嗜好性をもたらしてくれます。

しかし、現在はダイジェストだけでなく様々な成分(脂肪成分など)も含め嗜好性を高める成分をパラタントと言います。(※日本では、パラタントはダイジェスト、または〇〇エキスと呼ばれていることが多いです。)

フード販売会社の利点

パラタントはペットフードの嗜好性や栄養素を向上させるだけでなく、ペットフードを販売する企業には以下のようなメリットをもたらしてくれます。

製品の差別化

競争の激しいペットフード市場では、パラタントは消費者のニーズに合わせた独自の味や配合を提供することで、メーカーが製品を差別化するための重要な要素となります。

さらに、パラタントは必須栄養素や健康補助成分を追加することで、製品の品質と効果をさらに向上させることができます。これにより、消費者はペットの健康とウェルネス(幸福)に貢献できるブランド製品であると認知する為、ブランドロイヤルティーを高めてくれます。

市場の中で競争を勝ち抜くためには、単に製品の価格だけでなく、品質や特性においても差別化が不可欠です。パラタントの特徴を生かすことで、メーカーは競争優位性を築くことが出来ます。

顧客満足度UP

ペットが喜んで食べるペットフードを提供することで、ペットフードメーカーはより大きな顧客満足度とロイヤリティーを得ることができ、結果的にリピート購入へと繋がります。

ペットの食事はペットの健康とウェルネス(幸福)に直結しており、飼い主はその点において非常に切実です。そのため、ペットが美味しく食べてくれるペットフードは、メーカーにとっても非常に重要です。例えば、パラタントを使用することでフードの味や香りを向上させ、ペットが食事を楽しんでくれるようになります。

これにより、ペットにとって食事の時間が楽しいものとなり、食欲不振や偏食の問題を改善できる可能性が高まります。また、栄養バランスの取れたフードを提供することで、ペットの健康を維持することができます。

さらに、メーカーがペットの嗜好に適した製品を製造することで、飼い主は自身のペットに最適なフードを与えることができるので自然と満足度が高まります。その結果、ブランドへの信頼が深まり、リピート購入が促進されるのです。

パラタントの種類

パラタントの種類
引用先:Applying Pet Food Palatants by AFB

パラタントの種類は、ペットフードメーカーの特定のニーズに合わせてグレインフリー、成分限定食、GMOフリー(非遺伝子組み換え)、オーガニック、低脂肪などさまざまなものがあります。

そして、パラタントは液体と粉末タイプとして利用可能で、嗜好性を最大限に高める為にも液体と粉末の両成分を使用するフォーミュラが一般的です。

液体パラタント

ペットフードのドライ&ウェットフード両方の嗜好性を改善することが出来るので、液体パラタントは汎用性と利便性に優れていると言えます。液体パラタントは、チキンベースやフィッシュベースなど様々なタンパク源から製造されています。

粉末パラタント

液体パラタントは単独で使用できますが、粉末パラタントは粘着剤として機能する脂肪、または液体パラタントと併用することが推奨されています。この組み合わせにより、最高の嗜好性が得られ、パラタントが脂肪の酸化を防いでくれます。

パラタントの原材料

パラタントの原材料

パラタントは動物性タンパク質、または植物性タンパク質をベースに製造することができ、以下のような要件を満たせるように設計されています。

  • グレインフリー
  • 成分限定食
  • GMOフリー(非遺伝子組み換え)
  • オーガニック
  • 低脂肪など

パラタントの成分には、タンパク質、酵母、リン酸塩、抗酸化物質、その他の成分が含まれます。特に重要なタンパク質源は、ペットフードの品質(性能)目標、コスト要件、メーカーのブランドコンセプトに応じて異なってきます。

動物性タンパク質

一般的な動物由来のタンパク質には、家禽、豚、魚があります。一方、ある地域では新奇タンパク質(例えばオーストラリアのカンガルー)を使ったパラタントもあります。

動物性タンパク質は異なる動物種から得れるだけでなく、動物の異なる部位からも得ることができます。例えば、皮膚や筋肉組織からくることもあれば、内臓からくることもあります。特に内臓は、香りで引き付けるパラタントを作るのに適しています。

  • 肉ベース
    ビーフ、ラムなどの高品質な肉源から抽出される肉ベースのパラタントは、ペットが好む肉本来のうま味を提供してくれます。これらのパラタントはタンパク質とアミノ酸が豊富であり、ペットフードの栄養源としても優れています。
     
  • 鳥肉ベース
    チキンやターキーなどの鳥肉ベースのパラタントは、その安定的な嗜好性と栄養価の高さから、多くのペットフード製造メーカーに使用されています。これらのパラタントは、犬や猫にとって馴染みのある「味と香り」を提供してくれます。
     
  • 魚ベース
    サーモン、マグロ、白身魚などから抽出される魚ベースのパラタントは、多くのペットを魅了する嗜好性をもたらします。さらに、オメガ3脂肪酸とタンパク質が豊富であり、魚ベースのパラタントは健康と栄養面でも利点があります。

植物性タンパク質

植物由来のタンパク質は、トウモロコシ、大豆、ジャガイモ、特定の穀物など、さまざまなタンパク質源から得られます。植物性タンパク質を使ったパラタントは、顧客からのニーズ(グレインフリー、成分限定食、GMOフリー、オーガニック、低脂肪)にあわせて利用されることが多いです。

パラタントの添加方法

パラタントの添加方法
引用先:Applying Pet Food Palatants by AFB

パラタントはエコノミーからプレミアムグレードまで様々で、価格帯は通常、品質に比例します。パラタントの添加率は、液体パラタントでは通常1.0-3.0%、粉末パラタントでは0.5-2.0%の範囲です。このパラタントの添加率がドライドッグフードの製造コストに大きく影響してきます。

ペットフード製造メーカーでは、パラタントは通常、キブルに液体と粉末両方の組み合わせでコーティングされます。一般的に、液体および粉末パラタントはドラムコーターや真空蒸着機で塗布されます。

液体およびドライパラタントの両方が使用される場合、プロセスでは通常、油または脂肪の表面コーティング、続いて液体パラタント、続いて粉末ラタントのコーティングが実施されます。

缶製品などの場合、パラタントは缶が封印される直前に食品の上に添加されるか、またはパテ、グレービー、またはムースなどと一緒に混合されることがあります。

パラタントの安全性について

パラタントの一つである加水分解タンパク質は、ネットで「発がん性物質が含まれている」とか「危険な食材」といった情報を目にすることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?

危険なのは「酸分解」

「発がん性物質が含まれている」とか「危険な食材」という話は、すべての加水分解タンパク質に当てはまるわけではありません。この誤解は、加水分解タンパク質の生成方法の違いに由来します。加水分解タンパク質の生成方法は大きく分けて、以下の3つがあります。

  1. 熱分解
  2. 酸分解
  3. 酵素分解

この中で、問題となるのは2. の酸分解です。酸分解を行うと、微量の発がん性物質(クロロプロパノール類)が発生する可能性があります。そのため、一部の人々は「加水分解タンパク質は発がん性物質が含まれている。」と誤解してしまうのです。

多くは安全な酵素分解である

しかし、ドライフードに含まれるほとんどの加水分解タンパク質は「3. 酵素分解」を用いて生成されています。酵素分解は、体内に存在する消化酵素と同じプロテアーゼを使用してタンパク質を分解する方法です。このため、発がん性物質の発生や混入の心配はなく、非常に安全です。

さらに、パラタントである加水分解タンパク質は分子レベルまで分解されアミノ酸に近い状態で体内に取り込まれるため、アレルギー抗体がこれをタンパク質として認識することはほとんどありません。

したがって、アレルゲンとなるリスクは極めて低いのです。そのため、重度の食物アレルギーを持つペット用の療法食の主要成分として使用されることが多いのです。

このように、酵素分解による加水分解タンパク質は安全であり、ペットの健康に役立つ優れた栄養源となります。

代表的なパラタント企業

ペットフード市場において、ペットの嗜好性を高めるパラタントは非常に重要です。パラタントはフードの風味や香りを強化し、ペットが喜んで食べてもらえるようにする役割を果たします。以下では、世界的に有名なパラタント企業をご紹介します。

  • SPF(フランス)
    SPFは動物由来のタンパク質と脂肪を使用したパラタントの製造メーカーです。最新の製造技術を駆使して高品質なパラタントを生産しており、グローバル規模で非常に有名な企業です。
     
  • AFB(アメリカ)
    AFBはペットフード用パラタントの研究開発に特化した製造メーカーです。科学的アプローチと研究に基づいた製品開発を行っており、アメリカ市場で強力なブランド力を持つと同時に、充実した研究施設を備えています。
     
  • BHJ(デンマーク)
    BHJは動物性タンパク質を利用したパラタントおよびタンパク質製品の製造メーカーです。サステナブルな製品開発と厳格な品質管理に注力しており、ヨーロッパ市場で高い評価を受けています。
     
  • LEIBER(ドイツ)
    LEIBERは酵母ベースのパラタントと栄養補助食品の製造メーカーです。専門的な発酵技術と酵母抽出技術を用いて、高品質な製品を提供しています。ドイツおよびヨーロッパでの信頼性と品質重視の製品に定評があります。

※タイでのOEM製造でも、上記メーカーのパラタントを使用することができます。

お問い合わせや相談について

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