この記事を読まれているあなたは、ペットフードの開発を検討しているとします。市場で求められるのは、犬や猫が喜んで食べ、健康を維持できるバランスの取れたフードです。栄養価が高く、長寿にも貢献する製品を目指し、原材料選びに慎重を期すでしょう。
しかし、市場調査のために店頭でペットフードを手に取り、原材料リストを確認すると、穀物が含まれている商品が多いことに気づきます。もしかすると「なぜペットフードに穀物が使われているのか?」という疑問が浮かぶかもしれません。
穀物はフィラーなのか?
犬や猫のフードにトウモロコシや穀物が含まれているのは不思議に思えるかもしれません。一般的なメディア論では、これらの原材料はフィラー(かさ増し)と批判されたり、タンパク質の廉価品として使用されるものだと誤解されたりすることがよくあります。
一方、栄養学的な観点から見ると、穀物はペットの健康を支えるための多くの必須栄養素を提供します。したがって、ほとんど、又は全く栄養価のない原材料のことを指すフィラーとは別物であると理解しなければなりません。
穀物がもたらすメリット
(人間を含む)動物にとって重要なのは、食材そのものではなく、いかに必要な栄養素を摂取できるかどうかです。必須栄養素に関しては、体内で合成できないため食事から摂取しなければなりません。したがって、ペットフードの原材料名だけに注目するのではなく、穀物が提供する栄養素に目を向けることが大切です。
- 穀物は犬や猫にとって消化しやすい炭水化物(エネルギー源)を提供します。
- トウモロコシは、皮膚や被毛の健康に不可欠なオメガ6脂肪酸(リノール酸)が豊富な供給源の1つです。
- 小麦、オーツ麦、米、トウモロコシ、大麦などの穀物は、タンパク質、食物繊維、必須ビタミンやミネラルを供給します。
穀物はアレルギーの原因になるか?
食物アレルギーは、動物の免疫システムが特定のタンパク質を「異物」と誤認識し、免疫反応を引き起こすことで発生します。その結果、皮膚のかゆみやひっかき傷、慢性的な耳の感染症などの皮膚疾患や、嘔吐や下痢などの消化器疾患が発生します。
犬や猫において、最も一般的な食物アレルギーの原因は、牛肉、乳製品、鶏肉、魚(猫の場合)などの動物性タンパク質です。
特定の穀物に対する過敏反応が起こる可能性もありますが、それは動物性タンパク質によるアレルギーよりもはるかにまれです。
そのため、穀物を完全に避けること(グレインフリーの食事を与えること)は、ペットの食物アレルギーを管理するための最適な方法とは言い切れません。
穀物を含む食事を与えるべきか?
トウモロコシや穀物は、長年にわたり市販のペットフードに使用されてきました。これは現在のペットフードのトレンドではありません。
そして、これらの原材料はペットにとって栄養価の低いものとして誤解されることが多いです。しかし、近年の穀物を避ける傾向やグレインフリーダイエットの推奨は、科学的根拠に基づくものではなく、主にマーケティングの影響によるものです。
しかし、重要なのは犬や猫には原材料が何かではなく、必要な栄養素は何かというアプローチです。その点で言えば、穀物は、犬や猫にとって必要な栄養素が豊富に含まれた原材料と言えます。
実際、ペットフードに穀物を含めることには多くの健康上のメリットがあり、総合的にバランスの取れた栄養供給に貢献します。