猫は非常に気難しい生き物であることは周知の事実で、キャットフードを販売するメーカーは猫の嗜好性に関する悩みが尽きません。

一方、「美味しい」「魅力的な」「風味豊かな」「食欲をそそる」…と喧伝されるキャットフードは多く市場に出回っていますが、大切なのは「猫が食べるかどうか」です。

ですから、キャットフードメーカーは、猫が喜んで食べるキャットフードを作るために、製造プロセスだけでなく、原材料、成分、栄養価、キブル、味、テクスチャなど多くの要素を考量する必要があります。

最も最適なキャットフードを製造する勝利の方程式は存在しませんが、猫が愛するキャットフードを設計するためのポイントや方法がいくつか存在するのも事実です。

重要ポイント

  • ドライキャットフードにおけるレシピのいくつかの要素は、猫の嗜好性を改善します。
  • 粉末パラタントは、嗜好性(味)の高いキャットフードを作るために不可欠です。
  • 液体パラタントは、猫がフードを楽しむ明確なキッカケを作り、飼い主からも高く評価されます。
  • 猫は低い水分量で高タンパク質のキブルを好みます。
  • 原材料の品質と種類は、嗜好性を確保するために重要です。

※ これらの調査結果は、Symrise Pet Foodが専門家によって一般家庭の猫を対象に実施され、500以上の嗜好性テストから得られたものです。

パラタントを使用する

パラタントは、キャットフードの嗜好性を高める上で最も重要な要素の一つです。パラタントを使用せずに猫が満足してドライキャットフードを食べてくれることは難しいでしょう。

実際、パラタントを使用していないキブルよりも、パラタントがコーティングされたキブルのほうが、ほぼ100%の確率で猫が好んで食べます。

そして、ドライキャットフードの嗜好性を高めるためには、しっかりとパラタントの種類と特徴を把握する必要があります。

粉末パラタント

粉末タイプは、キャットフードの嗜好性を向上させる最も効果的なパラタントです。猫の嗜好性は主に味に依存する為、旨味が凝縮された粉末パラタントは、猫の味覚を強く刺激するのに非常に効果的であると言われています。

例えば、粉末パラタントの添加量を1%から2%に増やすことで、90%のケースでキャットフードの嗜好性が大幅に向上されたことが、ある実験で分かっています。

液体パラタント

液体パラタントを使用すると、目に見えて猫の食欲が改善されるのが分かります。粉末タイプに加えて液体パラタントを含んだキャットフードには、猫がフードボウルに全速力で駆け寄ってくるからです。

というのも、液体パラタントはキャットフードの香りを大幅に改善するため、フードを食べる前に猫の食欲をそそり、キャットフードの魅力を向上させます。その結果、飼い主にも好意的なドライキャットフードとして認識されるようになります。

注意:
最適なパラタントを選ぶことも重要ですが、正しく使用することも同じく重要です。
パラタントが均一にコーティングされることで、パラタントの効果を最大限に発揮することが出来ます。

キブルを乾燥させる

キブルの水分含量(モイスチャー)は、キャットフードの嗜好性を決定する大切なポイントです。スーパープレミアムキャットフードのキブル水分含有率は通常5.5%から6.5%の範囲ですが、プレミアムキャットフードのキブル水分含有率は約7.5%です。

もしキャットフードを選べるのであれば、猫は常に水分量の少ないキブルを好みます。猫は水分含有率0.5%の差でさえも感知し、水分含有率が2.0%減ると嗜好性が大幅に増加すると言われています。ですから、水分含有量に関しては、低ければ低いほど良いとされています。

タンパク質レベルを増やす

もちろんキブルのタンパク質含有量は栄養価の観点からも非常に重要ですが、もし可能であれば、増やせる分だけ増やしたほうが良いとされています。

例えば、キブルのタンパク質含有率を25%から45%の範囲で10%増やすだけでも、70%のケースで嗜好性が改善されるとされています。よって、タンパク質含有量に関しては、高ければ高いほど良いです。

原材料を厳選する

原材料を厳選する

基本的に先述したガイドラインに従ってレシピを設計した場合、高い嗜好性を持ったドライキャットフードを作ることが出来ます。ただし、最後にもう一つ知っておくべきことがあります。それは、原材料の厳選です。

原材料の品質

ミートミール、脂肪、デンプンなどの原材料をレシピに加える際、それらの品質を確保する必要があります。品質の良くない原材料は、猫を喜ばせる為のすべての努力を台無しにしてしまう可能性があります。

もちろんレシピに含まれる全ての原材料はできるだけ新鮮のほうが良いです。というのも、酸化したり、腐敗したりした原材料は健康へのリスクを引き起こすだけでなく、食品の物性を変質させる可能性もあります。

さらに、原材料と成分の一貫性も猫の嗜好性にとって重要です。製造ロット別でも品質特性にバラツキのない安定した原材料に加えて、原材料の供給先(サプライヤー)も一貫しているべきです。

同じタンパク質、灰分、脂肪含量を持つ2つのチキンミールでも、使用される鶏の部位や製造温度によって、嗜好性が大きく異なることもあります。

タンパク質の種類

ペットフードのタンパク質源は、栄養価およびアレルギーの観点から多くの議論がなされていますが、嗜好性の観点から言えば、猫は一般的に大豆ミールなどの植物性タンパク質よりも動物性タンパク質を好みます。

ただし、エンドウ豆のタンパク質などのいくつかの植物性タンパク質は、動物性タンパク質と同等の嗜好性を持つとされています。ヴィーガンフードを開発する際に、植物性タンパク質を主要タンパク質として使用されることがあります。

生肉の使用

生肉(フレッシュミート)を使ったドライキャットフードは単に流行っているわけでなく、嗜好性の向上にも寄与すると言われています。

というのも、生肉はミートミール(肉粉末)製造で必要な高温調理を必要としないからです。生肉は最小限の加工で、一度だけ調理されるため、栄養素が保持され、猫に最適な栄養価が提供されます。

加えて、加工が少ないため、消化が容易で胃腸が敏感な猫に最適であるだけでなく、猫の嗜好性を高めてくれます。ただし、生肉の嗜好性は、肉の品質、配合、および加工方法によって異なってきます。

デンプンの種類

デンプンも猫の嗜好性に影響を与えますが、タンパク質ほどではありません。一般的に、トウモロコシや米は小麦よりも好まれます。一番重要なのは、レシピにバランスの取れた穀物を配合することです。

脂肪の使用

パラタントと同じく脂肪は、ドライキャットフードの嗜好性向上にとって重要ですが、その種類についてはそこまで重要ではありません。牛、豚、鶏のいずれも効果的です。

重要なのは、脂肪の品質であり、それが的確に処理され、使用されているかです。