ペットフード開発において短鎖脂肪酸(Short-chain Fatty Acids, SCFAs)の役割が注目されています。SCFAには酢酸、プロピオン酸、酪酸などが含まれ、いずれも炭素数が2~4程度の脂肪酸です。これらは主に腸内細菌が食物繊維などを発酵分解することで産生され、犬や猫の消化管で様々な生理作用を発揮します。

本記事では、ペットフード開発責任者の方向けに、短鎖脂肪酸の基礎知識から腸内フローラや免疫への影響、消化吸収への効果、嗜好性、安全性、さらに欧米での応用事例と市場動向まで包括的に解説します。

短鎖脂肪酸の種類と基本的な生理作用

短鎖脂肪酸には主に以下の種類があり、それぞれ特徴的な生理作用を持ちます。

  • 腸内で最も多量に産生される主要な短鎖脂肪酸
  • 血流に乗り全身へ運ばれ、筋肉等のエネルギー源や脂質合成の前駆体となる
  • 腸内pHを低下させ、有害菌の増殖を抑制する基礎的な環境を作る

【主な役割】全身エネルギー供給 / 抗菌

  • 吸収後に肝臓へ送られ、糖新生によりグルコースに変換される
  • グラム陰性・陽性菌双方への抗菌作用を持ち、病原菌の増殖を抑制
  • 樹状細胞等に作用し、腸管免疫を穏やかに調節する抗炎症効果

【主な役割】代謝調整(糖新生) / 免疫調整

  • 結腸上皮細胞の主要エネルギー源(エネルギー需要の90%以上)
  • 上皮の接着構造を強化し、腸管バリア機能を維持・回復させる
  • Gタンパク質共役受容体等を介して強力な抗炎症作用を発揮し、腸の恒常性を保つ

【主な役割】腸管組織修復 / バリア機能

なお、これら直鎖のSCFA以外に、腸内細菌がタンパク質を発酵することで生じる分枝鎖脂肪酸(イソ酪酸やイソ吉草酸など)もあります。しかし分枝鎖脂肪酸は過剰だと悪臭や腸内環境の悪化に繋がるため、ペットフード開発では主に酢酸・プロピオン酸・酪酸といった有益なSCFA産生を促すことが重視されています。

腸内フローラへの影響

短鎖脂肪酸は腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランス維持と密接に関わっています。犬や猫の大腸では、食物繊維や難消化性成分が腸内細菌により発酵され、酢酸・プロピオン酸・酪酸などが産生されます。

このとき産生されたSCFAは腸内容物のpHを酸性側に傾けるため、病原性菌の増殖を抑え、有用菌が優勢な環境を作ります。例えば、有機酸を添加した飼料ではクロストリジウム(ウェルシュ菌など)といった有害菌の定着が抑制され、アンモニアなどの有害代謝産物の産生も減少します。

さらに、プレバイオティクス(難消化性の発酵性繊維)の給与によって腸内細菌叢が善玉菌優位に変化し、SCFA産生が増えることが多くの研究で示されています。実際、食物繊維源を工夫したフード設計によって糞便中のSCFA濃度が上昇し、腸内細菌の多様性も高まることが報告されています。

ある試験では、食物繊維としてリンゴ由来繊維(リンゴの搾りかす)を9%含む食事を与えた犬で、糞便中の酪酸濃度と腸内微生物多様性の有意な増加が確認されました。このようにSCFA産生の増強は腸内フローラの健全化に寄与し、ひいては消化管疾患の予防や管理につながります。

犬と猫では腸内発酵能に差あり

一方で、犬と猫では腸内発酵能に差がある点にも注意が必要です。一般的に肉食の比率が高い動物ほど消化管は短く、食物繊維の発酵によるSCFA産生量は少ない傾向があります。実際、食物繊維の摂取が少ない純肉食に近い食事では、腸内で生成される酪酸などの量は限定的です。

猫は犬より腸が短く繊維発酵の能力も低いため、通常のキャットフードでは糞便中の総SCFA濃度は犬より低い傾向があります。しかし適量の発酵性繊維を加えることで、猫でも酪酸産生菌など善玉菌の増殖を促し、腸内環境を改善できる可能性があります。実際、慢性腸炎の猫では酪酸産生菌の変化に伴い酪酸濃度が増減する報告もあり、猫においても酪酸が腸の状態を反映する重要な指標となり得ると考えられています。

総じて、短鎖脂肪酸は腸内フローラの健全性を維持する潤滑油のような存在です。適切なプレバイオティクスの活用により腸内でのSCFA産生を促進することは、犬猫の消化器の健康維持策として有望です。

免疫系への作用と抗炎症効果

短鎖脂肪酸、とりわけ酪酸には強力な免疫調節効果と抗炎症作用が認められています。酪酸は腸管上皮細胞のエネルギー源となって上皮バリアを強化するだけでなく、免疫細胞や炎症反応にも直接作用します。

酪酸はNF-κB経路の抑制を介してマクロファージや上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生を低減し、一酸化窒素(NO)など炎症メディエーターの生成も減少させます。

その結果、酪酸は腸粘膜局所の炎症反応を穏やかに鎮め、炎症性腸疾患の症状緩和に寄与します。また酪酸は腸管神経系のコリン作動性抗炎症経路を活性化し、全身性の免疫反応を調整することも報告されています。

腸管免疫の抗炎症制御

さらに、酪酸やその誘導体は制御性T細胞の誘導や上皮の免疫寛容の維持にも関与すると考えられています(ヒトやマウスでの知見)。加えて、短鎖脂肪酸は腸管上皮細胞上のGPCR(例えばGPR41/43)に結合し、このシグナルを通じて腸管免疫系全体に抗炎症シグナルを伝達します。プロピオン酸も同様に抗炎症効果を示し、例えば、樹状細胞のサイトカイン産生を調節して炎症を抑える作用が示唆されています。

腸疾患の予防・改善

短鎖脂肪酸の免疫系への好影響は腸疾患の予防・改善にも繋がります。犬や猫の慢性腸炎(炎症性腸疾患など)では糞便中の酢酸・プロピオン酸が健常時より低下し、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)と炎症が進行する傾向があります。酪酸やプロピオン酸による抗炎症効果は、このような慢性腸炎の症状緩和に役立つ可能性があります。

実際、酪酸塩の経口補給によって腸炎や大腸炎の発症を抑制できたとの報告もあり(動物モデル実験)、ペットの大腸炎・過敏性腸症候群の予防に応用できる可能性が示唆されています。加えて、酪酸には抗腫瘍効果(がん細胞などのアポトーシス誘導)や抗酸化作用も報告されており、結腸直腸癌リスク低減への寄与も研究されています。

全身代謝や免疫にも影響

なお、酪酸の一部は吸収され全身を巡ることで全身代謝や免疫にも影響します。酪酸が門脈から肝臓経由で全身循環に入ると、脂肪や筋肉などでのインスリン感受性を高める効果が報告されています。これは酪酸が全身の炎症状態を改善し、インスリンシグナル伝達を良好に保つ働きによると考えられます。したがってSCFAの十分な産生は、腸局所のみならず全身の免疫・代謝バランスにも貢献しうるのです。

消化吸収および栄養利用性への影響

短鎖脂肪酸は犬猫の消化吸収機能や栄養の利用効率にも多方面から影響を与えます。

エネルギー供給源

まず、エネルギー供給源としての役割があります。前述の通り、犬では酢酸・プロピオン酸・酪酸といったSCFA由来で総エネルギーの約5~7%をまかなっているとされます。発酵産物であるSCFAは腸管で吸収された後、犬では肝臓や筋肉で代謝されエネルギーになります。

猫は犬ほど発酵によるエネルギー寄与は大きくないものの、それでも高齢猫の腎臓病用ダイエットなどでは発酵性繊維を利用してタンパク質からの発熱量を軽減し、SCFAからエネルギーを得る戦略が取られています。

例えば、ある研究では低タンパク質食にグアーガムやビートパルプといった発酵性繊維を添加することで、発酵由来のプロピオン酸などの代謝物が増加し、それがクエン酸回路でエネルギー源として利用されることで、タンパク質の過剰分解(窒素老廃物の蓄積)を防いだと報告されています。

このようにSCFA産生を高めることは、腎臓病や肝疾患のように高タンパク質食が制限される場面でタンパク質の節約効果をもたらし得るのです。

消化管の機能改善

次に、短鎖脂肪酸は消化管の機能改善にも寄与します。酢酸や酪酸は大腸の蠕動(ぜんどう)運動を適度に刺激し、内容物の輸送調節に関与するとともに、大腸上皮でのナトリウム・水分吸収を促進する作用があります。

その結果、便の水分が適度に吸収され、下痢の軽減や便の性状改善につながります。実際、下痢傾向の動物で酪酸補給により糞便の水分が減り状態が改善した例も報告されています。

また、SCFA産生により結腸内容物のpHが下がると、カルシウムやマグネシウムといったミネラルの溶解度が上がり吸収率が向上する可能性が指摘されています。これは人を含む他種で知られる現象ですが、ペットでも発酵性繊維の添加が一部ミネラルの利用性を高める可能性があります。

胃での消化促進効果

さらに、胃での消化促進効果も見逃せません。ペットフードに有機酸(例えば、乳酸やプロピオン酸)を添加すると、胃内容物のpH低下を通じてペプシン(タンパク質分解酵素)の活性化が促進され、タンパク質の初期消化が改善します。

加えて、有機酸には胃内での微生物制御効果もあり、未消化のタンパク質が大腸まで届いて腐敗発酵するのを防ぐため、結果的に糞便中のアンモニアや腐敗産物を減少させることができます。上述のプロピオン酸を添加した試験でも、糞便中のアンモニア濃度が有意に低下しており、消化管内のタンパク質代謝が健全化したことを示唆しています。

消化率低下の可能性

一方で留意すべき点として、過剰な発酵性繊維の添加は他の栄養素の利用性を低下させる可能性があります。例えば、イヌリンやフラクトオリゴ糖(FOS)を高用量添加すると、糞便中に未消化タンパク質が増加しタンパク質の消化率低下が報告されています。

これは発酵が盛んに起こりすぎることで腸内がややアルカリ寄りになったり、あるいは腸内容物の滞留時間が変化することによると考えられます。したがって、ペットフードにおける機能性繊維の配合量は適切な範囲で設定し、栄養バランスを損なわない最適量を見極めることが重要です。

嗜好性への影響

ペットフード開発者にとって嗜好性(パラタビリティ)の維持は常に大きな課題です。短鎖脂肪酸およびそれを生み出す発酵性繊維の添加は、この嗜好性に様々な影響を及ぼします。

課題・リスク要因

一般的に高繊維食は嗜好性を低下させる傾向があります。繊維質の添加によりキブル(粒)の風味や食感が変わり、犬猫にとって魅力が減る場合があるからです。実際、カンザス州立大学の研究では、市販フードにサトウキビ繊維や小麦ふすまを追加すると、対照食と比べて風味が苦くなり嗜好性が有意に低下したと報告されています。

高繊維食では「渋味」や「土臭さ」といった風味が出やすく、場合によっては金属的な後味を感じることも指摘されています。したがって、機能性を狙って繊維を過剰に添加すると食いつきが悪くなるリスクがある点に注意が必要です。

解決策・ソリューション

しかし一方で、工夫次第で繊維を含めても嗜好性を維持・向上できるケースもあります。例えば、リンゴ由来の繊維(アップルポマス)は適度な甘みや香りを伴うため、高用量(9%配合)でも猫では対照より摂食量が増え、犬でも嗜好性が損なわれなかったという興味深いデータがあります。

リンゴのように残渣にポリフェノールや糖質を含む繊維源は、ペットに好まれる風味を付与できる可能性があります。また、昨今では繊維のマイクロカプセル化(超微細な繊維のコーティング)技術も研究されており、これにより高含量の繊維を配合しつつネガティブな食感を緩和する試みもなされています。

例えば、二重被膜のマイクロカプセルでイヌリンを包み、プロバイオティクスと共に混練することで、繊維の持つザラつきを感じさせずに腸まで届ける技術などが報告されています。

短鎖脂肪酸そのものの嗜好性

短鎖脂肪酸そのものの嗜好性への影響についても考える必要があります。酪酸は「腐ったバター」のような刺激的な悪臭を持つ液体であり、純粋な形でフードに加えると強い匂いが製品に付いてしまいます。

このため、酪酸を直接添加することは困難ですが、近年ではマイクロカプセル化やグリセリンエステル(トリブチリン)の形にすることで匂いを抑えつつ酪酸を供給する技術が開発されています。

またプロピオン酸も酸味の強い匂いがありますが、カルシウム塩(カルシウムプロピオン酸)にすることで安定性と扱いやすさが向上し、ペットフード保存料として広く用いられています。プロピオン酸は防カビ剤として0.1~0.3%程度添加されることが多いですが、この程度であれば犬猫の嗜好を大きく阻害しないことが分かっています。

むしろ前述の研究では、高湿度フードにプロピオン酸を0.065~0.13%添加したところ、未添加より自発的な摂餌量や初期選好性が向上したとの結果が得られました。研究者らは、適量の有機酸添加がフードの酸化劣化を防ぎ風味を安定させた可能性や、犬が程よい酸味を好んだ可能性を指摘しています。

以上のように、短鎖脂肪酸や繊維の嗜好性への影響は一概にマイナスとは言えず、添加量と素材選択、製造技術によってコントロール可能です。ペットフード開発では機能性と嗜好性のバランスをとることが肝要であり、必要に応じて新技術も活用しながら両立を目指すことが求められます。

安全性評価と適切な使用量

短鎖脂肪酸は本来、動物の腸内で自然に作られる成分であるため、適切な範囲で用いる限り安全性は高いと考えられます。欧州における飼料添加物の評価でも、例えば、プロピオン酸は「家禽では1kgの飼料あたり10g(1%)、養豚では30g(3%)まで安全」といった基準が示されています。

実際のペットフードで保存料として用いられる濃度(0.1~0.3%程度)はこの上限を大きく下回っており、動物への悪影響は報告されていません。酪酸についても、ナトリウムやカルシウム塩として0.05~0.2%程度を添加する例が他畜種では見られ、犬猫でも同程度であれば安全に利用できると考えられます。

重要なのは、「より多ければより良い」というものではなく、適量を守ることです。酪酸の場合、腸内での必要量が不足すると上皮バリア機能低下や炎症誘発に繋がりますが、一方で過剰な濃度では上皮細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導しバリアを破壊することが動物実験で示されています。

例えば、新生児ラットを用いた研究では、酪酸150 mmol/L以上の濃度で大腸粘膜に損傷が生じたと報告されています。幸い、通常の食餌から産生される酪酸がこのような高濃度に達することはほとんどありませんが、サプリメントなどで酪酸製剤を与える際は適切な投与量の範囲内であることを確認する必要があります。

ペットフード中の繊維についても同様で、過剰な繊維は栄養素の吸収阻害や軟便・下痢の原因となるため、総繊維量がおおむね数%台後半までに収まるよう処方設計されるのが一般的です。例えば、総繊維量が12%を超えるような高繊維食では一部栄養素の消化率低下が報告されているため、治療目的以外では極端な高繊維化は避けるのが賢明です。

安全性の観点からは、長期使用による弊害がないかも気になりますが、現在までの研究ではFOSやイヌリンといったプレバイオティクスの長期給与による有害事象は特に報告されていません。プロバイオティクス(乳酸菌製剤等)と比べても、プレバイオティクスやSCFA製剤は耐容性が高く、長期にわたり安定して効果を発揮できる点が利点と言えます。

総じて、短鎖脂肪酸を活用する際は適量を守り、段階的に効果を検証しながら用いることが重要です。過剰投与さえ避ければ高い安全域を持つ成分ですので、科学的知見に基づいた適切な使用量でペットフードに組み込むことが望まれます。

欧米における応用事例と市場動向

「腸の健康」の一般化

近年、欧米のペットフード業界では「腸内環境」「マイクロバイオーム」といったキーワードがトレンドとなっており、その文脈で短鎖脂肪酸への注目も高まっています。多くの大手ペットフードメーカーがフード中にプレバイオティクス(発酵性食物繊維)を配合し、「善玉菌を増やし腸の健康をサポートする」といったマーケティングを行っています。

実際、フラクトオリゴ糖(FOS)やチコリ由来のイヌリン、ビートパルプなどは欧米のプレミアムフードでは一般的な配合原料となっており、これらが腸内で発酵されることで酪酸や酢酸が産生され、ペットの健康増進に役立つことが科学的にも裏付けられています。ペットフードの処方ガイドラインや公式基準(AAFCOなど)でも食物繊維の重要性が言及され始めており、単なる「フィラー(かさ増し)」ではなく機能性成分としての繊維の位置づけが確立しつつあります。

パーソナライズド栄養への進化

また、人間の栄養学の分野でホットトピックであるパーソナライズド栄養(個々の腸内細菌叢に合わせた栄養管理)の流れが、ペットフードにも波及しています。近年の研究では、異なる種類の食物繊維源が犬の腸内でそれぞれ特有のSCFAプロファイルを生み出し、個々の犬の腸内細菌組成によってその応答が変わる可能性が示唆されました。

これはまさにヒトの栄養学で言われる「ある人には有用な食物も別の人にはそうでもない」現象のペット版と言え、欧米では犬種ごとや個体ごとに最適な繊維ブレンドを探る試みも始まっています。将来的には腸内細菌検査キットなどを用いて個々のペットに合わせたプレバイオティクス処方を提案するサービスも現れるかもしれません。

一方で、短鎖脂肪酸そのものを添加する製品も欧米市場で登場し始めています。特に酪酸の有用性に注目したサプリメントや処方食が増えており、例としてマイクロカプセル化したトリブチリン(酪酸グリセリド)を配合した犬猫向けの腸ケア補助食品「Butyric Acid Supplement」等が市販されています。

スペインのELiE社が開発したButyPets®はその一例で、酪酸トリグリセリドを特殊コーティングし、匂いを改善して犬猫が摂取しやすくした補完食です。この製品は臨床栄養の分野で培われたヒト用酪酸製剤の技術を応用したもので、欧州を中心に慢性の腸トラブル(食物不耐性や炎症性腸疾患など)を抱えるペットの腸内環境改善に役立てられ始めています。

有機酸の再評価と活用

さらに、ペットフードへの有機酸添加も改めて見直されています。プロピオン酸や酢酸は前述のように保存料として古くから使われてきましたが、それ以外にも腸内細菌の抑制による衛生改善や消化率向上などのメリットがあるため、ナチュラル志向の台頭で一時敬遠されていた酸も再評価されつつあります。

特にグレインフリーダイエットなど高タンパク・高脂肪の流行で便臭や軟便に悩むケースが増えたことから、欧米の一部メーカーでは適量の有機酸ブレンドを添加して糞便臭の軽減や腸内フローラ調整を図る試みも行われています。

このように、欧米における短鎖脂肪酸の活用は(1)伝統的なプレバイオティクス戦略(繊維の活用)と(2)新しいポストバイオティクス戦略(発酵産物そのものの添加)の二方向で発展しています。

市場動向としては、腸の健康を掲げたペットフードやサプリメントが次々登場しており、「Gut Health(腸の健康)」はもはやヒトだけでなくペットフード業界でも重要なキーワードとなっています。ペットフード開発責任者としては、この流れを踏まえ、短鎖脂肪酸の科学的エビデンスを適切に活用した製品設計や付加価値の提案を行っていくことが求められるでしょう。