近年、日本のペットフードメーカーが海外のOEM工場を活用して高付加価値な製品を開発する動きが注目されています。とりわけペット先進国と呼ばれるドイツには、ドライフードを中心に高品質なペットフードを製造するOEM工場が多数存在します。

ドイツは欧州でも有数のペットフード市場を持ち、その市場規模は2023年にペットフードだけで約45億ユーロ(約4,850億円)に達しました。

本記事では、ドイツにあるペットフードOEM工場の特徴や強み、そして日本企業が利用する際の懸念点について、品質・価格・認証・製造ノウハウの観点から事実に基づいて解説します。欧州の信頼性の高い情報源や企業事例を引用しつつ、日本メーカーにとってのメリットと課題を整理します。

ドイツのペットフードOEM工場の特徴と強み

厳格な品質基準と「ヒューマングレード」

ドイツを含むEUではペットフードの原材料に厳しい規則があり、使用される原材料はすべて人間の食用に適合したものでなければなりません。EU規則(1774/2002および1069/2009)により、使用可能な部位や加熱処理方法まで細かく定められており、基準を満たすものだけが原材料として認められています。

つまり、ヒューマングレード(人間の食品と同等)での製造が徹底されており、例えば、ホルモン剤・抗生物質不使用の家畜から調達した肉のみを使うなど、素材の安全性に妥協がありません。

欧州全体でも、食品と同じ一般食品法(規則178/2002/EC)の下でペットフードの安全管理が行われており、高い品質基準が保証されています。その結果、ドイツ製ペットフードは不要な添加物を含まず厳選素材を使った高品質な商品が多いと評価されています。

欧州基準の認証取得と品質管理

ドイツのOEM工場は国際的な食品安全認証の取得にも積極的です。例えば、多くの工場がISOやHACCPはもちろん、国際食品規格のIFSやBRC、さらにFSSC 22000(食品安全管理)などの認証を保持しています。これらの認証取得により、製造工程の安全性・品質管理が厳しく担保され、グローバル市場で信頼されるパートナーとして認められています。

実際、ドイツにはIFS認証やHACCP認証を取得した工場が多数あり、ペットフードメーカーT社はHACCPコーデックスとIFSフードの認証を取得し、ドイツの有機認証(DE-ÖKO-006)の下で高品質オーガニックペットフードを製造しています。

またM社のように「食品用の基準で100%生産」し、IFSやBRC認証を取得している例もあります。認証に裏付けられた品質管理体制は、日本企業にとって安心材料であり、欧州基準の施設で生産されたフードは安全性や品質の面でアピールしやすいメリットがあります。

高度な製造ノウハウと最新設備

ドイツのペットフード製造業者は数十年にわたる経験を持ち、栄養学や製造技術の蓄積があります。例えば、C社は創業からの長年の経験と広範な専門知識を活かし、顧客の要望に合わせたレシピ開発から高品質原材料の調達・加工まで手掛ける総合力を有します。同社はドライペットフードではドイツ有数の大手メーカーであり、製造量は年間数万トン規模に及ぶとされています。

M社も3世代にわたりペットフード製造を続けており、ドイツ国内の最新鋭設備を備えた工場で年間6万トン以上のプレミアムフードを生産し、世界40ヶ国以上に輸出しています。さらにドイツでは製造設備の近代化にも余念がなく、FEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)の基準に沿った最先端の衛生設備で製造が行われています。

これらの高度な生産技術により、安定した品質と生産効率が実現しており、日本企業が求める高品質な製品を大量生産できる体制が整っています。技術力の高さは、新しい処方開発や難易度の高い製品(例:粒の形状工夫、栄養強化)にも対応できる懐の深さとして強みになります。

ナチュラル志向・高機能食への対応力

ドイツのOEM工場は自然派原料や機能性フードの製造にも強みを持ちます。元々ドイツはオーガニック先進国であり、有機素材や無添加にこだわるブランドが多く存在します。そのためOEM工場側も有機JASに相当するEUオーガニック認証を取得し、オーガニックペットフードを製造できる体制があります。

また、グレインフリー(穀物不使用)や高タンパク志向のフードも得意分野です。例えば、ドイツ発の高級ドッグフードW社は獣医師と共同開発されたグレインフリー・高肉含有レシピで、肉や魚を豊富に使い、ハーブなどのスーパーフードも配合されたプレミアムフードです。同社は欧州最新設備でFEDIAF基準に沿って製造されており、そのような高タンパク・機能性重視の処方を実現する製造ノウハウがドイツにはあります。

さらに、近年のトレンドである代替原料(昆虫由来タンパク質など)やビーガンペットフード、サステナブル素材にも欧州勢は積極的で、ドイツの工場でもこれら新分野の製造経験を持つところがあります。総じて、日本では難しいナチュラル志向・高機能ペットフードを欧州基準で作れる点は大きな魅力と言えます。

欧州ならではの認証と付加価値

ドイツのOEM工場は品質以外にも欧州発の付加価値を提供できます。例えば動物福祉や持続可能性への配慮もその一つです。C社では、ペットフード製造においてMSC認証(海洋管理協議会)やASC認証(水産養殖管理協議会)、ITW(動物福祉協会イニシアチブ)などを取得し、サステナブルな原料調達や動物福祉基準を重視しています。

こうした認証は欧州ならではの厳格な基準であり、日本企業にとって製品の差別化につながるポイントです。また、「Made in Germany」のブランド力も無視できません。ドイツはペットに関する法規や文化水準が非常に高く、「ペット先進国」として信頼されています。事実、ドイツは欧州でも最高水準の動物愛護国家であり、ペットフードも人の食品と同等の扱いを受けています。

そのためドイツ製であること自体が品質と安全のイメージにつながり、エンドユーザーにアピールする際の強みとなります。欧州の各種認証マークや「ドイツ産」の表示は、日本の消費者にとって安心感やプレミアム感を与える要素となるでしょう。
 

ポイント


ドイツのペットフードOEM工場は品質の高さ(人間食品レベルの安全基準)、豊富な認証取得(ISO/HACCPから国際食品規格、オーガニック認証まで)、卓越した技術力と経験、そして自然志向・プレミアム製品への対応力など、数多くの強みを備えています。日本企業にとっては、これら強みを活かすことで自社ブランドの信頼性向上や製品差別化を図れるというメリットがあります。

日本企業にとっての懸念点

一方で、ドイツのOEM工場を活用する際には考慮すべき課題や懸念点も存在します。高品質と引き換えに発生しうるコストやリードタイム、コミュニケーション上のギャップなど、具体的なポイントを挙げます。

製造コスト・価格の高さ

最大の懸念はコスト面です。ドイツは人件費やエネルギー費が高いため、製造単価も相対的に高くなります。実際、日本や欧米でOEM生産を行うと人件費の高さにより製造コストが増加し、最終製品価格に直接影響することが指摘されています。

欧州工場では高度な品質管理の維持にもコストがかかるほか、原材料もヒューマングレードや有機素材など高品質なものを使うため、材料費も上昇しがちです。そのため、日本国内やアジアでの生産に比べると製品価格がプレミアム帯になる傾向があります。

日本市場でその価格が受け入れられるか、適正な利益を確保できるかは事前に検討が必要です。また、為替レートの変動(円安・ユーロ高など)も輸入コストに影響する点に留意が必要です。

輸送コストとリードタイムの長さ

ドイツから日本への輸送には時間と費用がかかります。一般的に完成品のペットフードはコンテナ船で輸送され、欧州からのリードタイムは約45日以上と見込まれます。スエズ運河経由の航路に依存するため、情勢によっては遅延も発生しやすく、実務上は2か月程度のリードタイムを計画に入れる必要があります。

さらに近年は地政学リスクや海運市況の変動で輸送費が高騰するケースもあり、運賃が平常時の2〜3倍に跳ね上がることも報告されています。輸送に時間がかかるということは、その分早めの発注計画と在庫確保が求められ、発注から納品までのサプライチェーン管理が難しくなる要因です。

リードタイムの長期化による欠品リスクや機会損失も指摘されており、日本国内で安定供給するには安全在庫を多めに持つなどの対応が必要です。輸送中の品質保持(湿度管理や害虫対策など)にも注意が必要で、製品の賞味期限管理も含め物流面でクリアすべきハードルがあります。以上より、輸送コスト増と長いリードタイムはドイツOEM利用時に避けられない課題と言えます。

最低発注量(ロット)の大きさ

欧州の大規模工場では生産効率のために最小発注ロットが大きめに設定される傾向があります。小規模な国内OEMと異なり、1ロットあたり数十トン単位の発注が必要になるケースもあります。実際、海外(日本・欧米)のOEM工場では20トン程度のMOQ(最小発注量)を求められることがあります。

これは大量生産ラインの最適化のためですが、販売規模が限られる新興ブランドや中小企業にとっては資金負担や在庫負担となるでしょう。必要以上の在庫を抱えるリスクや、賞味期限内に売り切れるかといった販売計画上の不安も出てきます。

また、生産ラインの割り当て状況によっては柔軟な小ロット生産や頻繁な発注サイクルに対応しづらく、製造計画の融通が利きにくい可能性もあります。日本の市場動向に合わせて細かく商品を改良したりSKUを増やしたりする際にも、大ロット前提だと機動力が落ちる点はデメリットです。

したがって、ドイツOEMを利用する場合、自社の商品ボリュームに見合った発注ロットを確保できるかを事前に確認し、場合によっては在庫消化のためのマーケティング投資も織り込む必要があります。

異文化によるコミュニケーション課題

海外企業との取引には言語やビジネス文化の違いによる摩擦も考えられます。ドイツのOEM工場とのやり取りは基本的に英語で行われますが、技術的な配合の打ち合わせや品質仕様の細部に至るまで意思疎通を図るには高度なコミュニケーション力が求められます。

専門用語の誤解や伝達ミスがあると、意図しない製品になってしまうリスクもあります。また、日本とドイツではビジネス習慣も異なり、例えば合意事項の捉え方や品質に対する細かな要求の伝え方に違いがあるかもしれません。日本企業特有のきめ細かい要求や変更にも、ドイツ側のスタイルでは「決まった仕様どおりに製造する」ことが重視され、途中の仕様変更には柔軟に対応しないケースも考えられます(契約内容次第では追加費用やリードタイム延長となる可能性もあります)。

さらにタイムゾーンの差から、生産トラブル時のリアルタイム対応が難しい、メールでのやり取りに時間がかかる、といった運用上のストレスも生じます。言語の壁に関しては、通訳やバイリンガルスタッフを介すれば解決できますが、その分コストや手間が増えます。文化の違いによる誤解を防ぐには、お互いのビジネス慣習への理解と信頼関係構築が重要です。

契約書の取り交わしや品質基準の取り決めも、法制度の違いを踏まえて綿密に行う必要があります。これらコミュニケーション面の課題は見落とされがちですが、日本企業が海外OEMを利用する際には事前によく認識しておくべきポイントです。

その他の実務的な注意点

上記以外にも細かな懸念事項があります。例えば、輸入時の法規制対応です。日本のペットフード安全法に基づき、輸入業者の届け出や製造所ごとの書類手続き、場合によっては輸出国政府発行の検査証明書の取得などが必要になります。ドイツの工場が日本の規格(成分表示や添加物基準など)に精通しているとは限らないため、ラベル表示の作成や分析保証値の確認などは日本側で責任を持って行う必要があります。

さらに製造ロットごとの検品やサンプル取り寄せ、動物検疫所での検査対応など、輸入に伴う追加の手間とコストも発生します。また、支払い条件や為替リスク管理(ユーロ建て取引になることが多い)も考慮が必要です。

加えて、ドイツの工場は夏季休暇やクリスマス休暇など長期休業期間が存在する場合があり、日本のビジネスカレンダーとの違いから納期計画にズレが生じる可能性もあります。総じて、海外OEMを利用する際には国内製造にはない各種リスク管理が求められる点を念頭に置くべきです。
 

ポイント


コスト高・長い納期・大ロット要求・コミュニケーションの難しさ・各種手続きなど、ドイツOEM活用にはいくつかの懸念点があります。しかし、これらは事前の準備やパートナー企業との調整によって軽減可能な場合も多いです。

例えば、長期契約による価格交渉や共同在庫の持ち方を工夫する、専門の貿易代行やコンサルタントを活用して円滑なコミュニケーションを図る、といった対策も考えられます。懸念点を正しく認識し対応策を講じることで、ドイツOEMのメリットを最大限引き出すことが可能になるでしょう。

総括:優れた品質管理と豊富な経験・技術力

ドイツのペットフードOEM工場は、その卓越した品質管理と豊富な経験・技術力によって、日本のペットフードメーカーにとって魅力的な選択肢となり得ます。ヒューマングレード基準の安心安全な製品づくり、ISOやHACCPをはじめとする欧州基準の認証取得、オーガニックや高タンパク製品といった先進的な分野への対応力など、数々の強みが日本企業にもたらすメリットは大きいです。

とくにプレミアムフード市場を狙う場合、「Made in Germany」の信頼性や欧州由来の付加価値は差別化要因となるでしょう。一方で、コスト面のハードルや物流・コミュニケーション上の課題も無視できません。輸送リードタイムの長さや大ロット生産の要件、文化と言語の違いによる摩擦など、乗り越えるべきポイントも存在します。

しかし、これらは事前の十分な計画とパートナー選定、そして双方の緊密な協力によって対処可能です。総合的に見て、ドイツのOEM工場を活用することは、日本企業にとって「高品質と信頼性を得る」ための大きなメリットをもたらしますが、同時に「コストと時間を要する」決断でもあります。

品質・価格・認証・ノウハウのバランスを見極めつつ、メリットと懸念点を正しく理解して戦略的に活用することが重要です。これまで述べてきた企業例が示す通り、ドイツのペットフードOEMは世界最高水準の品質を提供し得る存在です。