卵は、理想的なタンパク源として広く知られています。優れたアミノ酸バランスを持ち、消化しやすく、ドッグフードの栄養価を高める貴重な食材です。さらに、消費者にも馴染みがあり、信頼されやすい原料であることから、ペットフードにおいて独自の価値をもたらします。
ところで、鶏母が卵を温めるだけで、なぜ卵は孵化することができるのでしょうか?その理由は、卵が生命に必要なすべての栄養素を備えているからです。高品質なタンパク質、良質な脂肪、そして抗菌活性・免疫賦活・抗ガン作用などを持つ生理活性物質が豊富に含まれています。
こうした栄養価の高さを凝縮したのが乾燥卵です。高品質なドッグフードの開発において、乾燥卵は理想的な原材料となります。消化吸収が良く、機能性成分も豊富な乾燥卵を上手に活用することで、健康を支えるドッグフードの設計が可能になります。
卵の殻の中身
卵の構造はよく知られていますが、その必須成分についてはあまり知られていないかもしれません。
- 卵白:
卵の重量の約60%を占めており、主に水分とタンパク質で構成されています。
- 卵黄:
卵黄は膜に包まれており、卵の重量の約30%を占めています。
卵の脂質の大部分を含み、ビタミンA、D、Eなどの脂溶性ビタミンの供給源となります。
- 卵殻:
卵の殻の内側にある薄い膜は「卵殻膜」と呼ばれ、タンパク質を主成分としています。
卵殻は卵全体の重量の約10%を占めています。その主成分はカルシウムです。
栄養の凝縮体、乾燥卵
乾燥卵とは、新鮮な卵を単に乾燥させたものです。新鮮な卵のすべての栄養価を凝縮しています。乾燥卵は、スプレードライ(噴霧乾燥)を使用して製造されます。このスプレードライ製法では、液卵を高圧ノズルから微細な霧状にし、140〜180℃の熱風中に噴霧することで、粉末状に乾燥させます。
このプロセスにより、新鮮な卵に含まれるすべての栄養成分がそのまま保持されます。また、卵のどの部分を乾燥させるかによって、さまざまな乾燥卵原料を得ることができます。タンパク質含有量が80%以上、脂肪含有量が50%以上に達することもある乾燥卵は、配合を開発・調整するための便利な原材料となります。
理想的なタンパク質
乾燥卵が栄養の宝石とされる主な理由は、その優れたタンパク質の質にあります。卵のタンパク質は、ペットが必要とする全ての必須アミノ酸の必要量を満たすアミノ酸プロファイルを持っています。
(ただし、卵にはタウリンが少量しか含まれていません。タウリンは、FEDIAFおよびAAFCOの栄養基準により、キャットフードに必要とされています。)
乾燥卵は、メチオニンやシステインなどの硫黄を含む含硫アミノ酸を豊富に含んでいます。これらの成分は犬や猫にとって必須ですが、他の一般的なタンパク質源では不足しがちです。
卵のタンパク質は非常に消化しやすく、ペットフードで使用される多くの従来の原材料よりも優れた効果を発揮します。乾燥卵タンパク質に含まれる貴重なアミノ酸は、犬や猫にも消化・吸収しやすい理想的なタンパク質です。
優れた脂肪源
優れたタンパク質とともに、卵はすべての脂質を卵黄に含んでいます。卵脂質の60%以上は不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸で構成されており、オメガ3およびオメガ6の必須脂肪酸(リノール酸、α-リノレン酸、DHA)を含んでいます。乾燥卵や卵黄由来の製品は、犬や猫にとって必須の脂質を供給する優れた栄養源となります。
様々な生理活性物質
優れた栄養プロファイルに加え、乾燥卵には犬や猫の健康をサポートする多くの生理活性物質が含まれています。
- リゾチームおよびオボトランスフェリンなどの酵素を含み、強力な抗菌作用を発揮します。
- 免疫サポート効果があり、特に子犬や子猫の病気予防に役立つ抗体を含んでいます。
- ルテインおよびゼアキサンチンを高濃度に含み、これらのカロテノイドは天然の抗酸化物質として細胞の機能維持を助けます。
- リン脂質を含み、細胞膜の構成や修復に重要な役割を果たします。さらに、抗炎症作用があり、高齢犬の神経系にも有益と考えられています。
- コレステロールを豊富に含み、細胞膜の重要な構成要素であり、幼犬の成長やホルモンの形成に関与します。
製造時における的利点
ドライフードに配合しやすい
乾燥卵はペットフードの配合に最適な原料です。
- 豊富なタンパク質プロファイルにより、他のタンパク質における栄養組成のバラつきを補正し、ペットフードの補助タンパク源として機能します。
- 必須アミノ酸の含有量が高いため、添加率も少なくて済みます。
- 灰分含有量が低い(6%未満)ため、ペットフードのカルシウムやリンの制限値を超えることなく配合できます。
- 消化に敏感なペット向けのフード開発にも対応できる、汎用性の高い原材料です。
製造工場にて取り扱いやすい
乾燥卵は粉末・顆粒・ペレットなどの形態で供給されており、特別な設備なしで他の乾燥原料とともにペットフードに簡単に配合できます。さらに、適切な保管を行えば、最長24か月の長期保存が可能であり、製造工場での保管にも適しています。
販売時における利点
サステナブルな原材料調達
ペットフード向けの乾燥卵は、人間の食品製造で発生する副産物を有効活用して作られています。食品廃棄物をペットフード用の高品質原材料へと変換することで、循環型で持続可能な食品システムを構築し、タンパク質不足の課題に対応すると同時に、人間用食品との競合を回避することが出来ます。
広告表示にも適している
ペットフードの原料に対する品質や産地への関心は、飼い主の栄養知識や環境意識の向上とともに高まっています。伝統的なタンパク源(鶏肉ミールなど)の代替候補の中でも、乾燥卵は最も認識され、消費者に受け入れられやすい原材料です。
北米およびヨーロッパで行われた調査では、犬や猫の飼い主の8割以上が、植物性や昆虫由来のタンパク質よりも卵タンパク質をペットに与えることに好意的であると回答したことが分かっています。
*参考先:Symrise Explorer Global Survey, July 2022 – 1776 cat owners | April 2023 – 1427 dog owners
まとめ
- 乾燥卵は新鮮な卵の栄養価を凝縮し、優れた栄養特性を持つ。
- 高品質なタンパク質を持ち、豊富なアミノ酸でペットフードの栄養バランスを向上させる。
- 必須脂肪酸やコレステロール、リン脂質などの重要な脂質を供給する。
- 免疫サポート・抗菌・抗酸化・抗炎症などの生理活性効果を持つ。
- 人間用食品から出る副産物を活用し、持続可能であり、飼い主にも広く受け入れられている。